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「紅顔」(井上祐美子/中公文庫)を購入

  • 2008/09/22(月) 23:59:38

17世紀中期から後半。
明末清初の中国を舞台に、「売国奴」と呼ばれた武将・呉三桂、その側室で「傾国の美女」と呼ばれる陳円円、そして時代そのものを描く中国歴史小説。
中国の歴史に興味があり、明末清初にも興味があり、この井上祐美子の中国歴史小説もしっかりした時代考証と品のある人物の描写が好きなので、本書を購入した。

本作の作者・井上祐美子による明末清初を舞台とした小説としては「摂政王ドルゴン」や明の女性武将・秦良玉を描いた「女将軍伝」などが挙げられる。

だが、呉三桂を主人公とした作品は、他の作家の作品でもあまり見かけたことが無く、この呉三桂の視点から明末清初を三藩の乱まで描いた作品も珍しい気がする。
本作はどのような呉三桂を、どのような明末清初を見せててくれるのか、これがまず楽しみである。

さらに、陳円円を意思を持った人物として描いた作品は、より珍しい気がする。この作者は女性を活き活きと描くことに巧みなので、どのような陳円円を見せてくれるのか、楽しみである。



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李世民(小前亮/講談社文庫)

  • 2008/09/17(水) 23:59:15

李世民すなわち唐の第二代皇帝・太宗は、7世紀前半に活躍した人物である。
李世民は、まず乱世の統一に活躍、さらに統一後は唐王朝の基礎を固め、その業績から中国史上有数の名君と呼ばれ、大変興味深い人物である。
本書は、この李世民の戦いと生き様を描く中国歴史長編小説である。

【感想概略】
李世民が登場する小説はたまに見かけるが、李世民を主人公として真正面から描く長編小説はあまり見かけないので、本作はそれだけでも貴重な一冊である。

本作「李世民」の舞台は、隋末唐初の乱世である。
まず本作では、この隋末唐初の群雄割拠する乱世を、エネルギッシュな英傑たちの活躍した世界と描き、英雄豪傑はどこかユーモラスなところのある魅力的な人物たちと描かれている。
そして主人公・李世民は、控えめで一見涼やかだが熱いところを持ち、人を惹きつける強いカリスマ性を持つ魅力的な人物と描かれている。

本作は、実在の史上の人物を、活き活きとした魅力ある人びとと描き、そして隋末唐初という時代を追体験でき、この時代ならではの雰囲気が楽しませてくれた、おもしろい中国歴史小説であった。


【乱世の英雄・李世民】
この李世民、生まれながらの皇帝ではなく、もともとは隋帝国の有力貴族の出身である。
李世民が10代後半の頃。
隋帝国は各地で反乱が頻発、群雄割拠する乱世に突入した。

この時、父・李淵は諸将を率いて挙兵する。
そして李世民は、諸将とともに父・李淵を助け、武将として活躍。
割拠する群雄たちに立ち向かうのである。

李世民には、まず乱世の英雄のおもしろさがある。
群雄割拠し、時代は煮えたぎり、情勢は混沌として流動的な中、まさに自身の力で時代を切り開いていく、ここが乱世を駆け抜ける英雄の爽快さであり、おもしろさなのである。

【煮えたぎる時代の英雄豪傑たち】
李世民と戦う群雄たち、その配下の英雄豪傑たちも、それぞれに生き様があり、どこか愛嬌があり、憎めない人びとと描かれている。

物語のおもしろさは、人物の魅力がかなり大きな部分を占めるが、本作の人物たちは、悪人も忠臣もみなそれぞれに魅力的である。
だからこそ物語が盛り上がるのであり、群雄たちと李世民との戦いとなれば、さらに盛り上がるのである。

【漢が惚れる李世民】
李世民は戦いの中で、英雄豪傑や智謀の士をどんどん招いて人材を充実させていく。
これが、次の勝利に繋がっていくのである。
ここら辺には、まず、頼もしい仲間がどんどん増えていくおもしろさがある。
そして李世民の元に集まる人々は、李世民と出会うとその人間的魅力に男惚れするのであるが、これも本作の大きなおもしろさであり、李世民はまさに「漢が惚れる男」として描かれているのである。


本作の作者の他の作品も、いずれ文庫で刊行されることを期待したい。



今日の買い物

  • 2008/06/27(金) 23:59:32

「三国志傑物伝」(三好徹/光文社文庫)

中国の三国時代は、個性豊かな人物が数多く活躍した時代である。
まず三国の創業の皇帝たちと有名な重臣たちは、どの人物も人間的な長所と短所と独特の魅力をもっていて興味深い。
だが三国時代は、これら時代の主役的な扱いを受ける人びとだけによって成り立ち得るものではない。「三国志」では脇役扱いされることの多い傑物たちが、強烈なインパクトを放つさまざまな烈士・謀臣・忠臣・知将たちが、各勢力を支え、時代を支えてきたのである。

本書は、それぞれの役割を果たし、時代を支えた傑物たちの生き様を描く短編集である。
おもしろそうなので購入。

柳絮(井上祐美子)

  • 2007/09/18(火) 23:56:59

中国の南北朝時代、4世紀中頃~5世紀初の東晋後期の激動の時代を生きた名門貴族の女性・謝道ウンの婚礼の日から晩年に至るまでの年月を描いた物語。

【感想概略】
中国史を題材とした小説に、東晋時代を描いた作品はあまりなく、それだけでも貴重な作品である。
本作は、このあまりなじみのない時代をしっかりとした時代考証に基づき、魅力的な人々を取り上げて活き活きと描いており、おもしろかった。

【貴族の才女】
物語の面白さの大きな要素は、登場人物の魅力である。
歴史を題材とした作品では、人物描写が無味乾燥になる恐れがあるが、本作の主人公・謝道ウンは、少女の頃から晩年まで、活力を失わない魅力的な人物に描かれている。
物語は晩年を迎えた主人公の一人称で語られるのだが、利発で勝気な少女が人生を重ねる間に、人間として深みを増していくようすには好感がもてた。
この作者の作品では、女性の方が活き活きとしている気がする。

主人公以外の登場人物たちも魅力的に描かれている。
小説に登場することの少なかった桓温・謝安・劉裕といった東晋時代の人物たちが、体温をもった生身の人間として、活き活きと描かれているのである。

【激動の東晋時代】
歴史小説の面白さの一つは、その時代独自の雰囲気がかんじられること、あたかも時代の只中にいるような追体験が出来ることである。

本作の主人公・謝道ウンの生きた時代は、激動の時代である。
東晋王朝の統治のもと、一見社会は安定しているが、有力貴族同士の対立、社会不安の増大、対外的には五胡十六国の諸王国の脅威、などなど、国内国外情勢は常に緊迫しており、当事者にとっては大変だが、読者にとっては波乱に飛んで面白い時代であった。

本作では、朝廷の実力者・桓温の簒奪未遂、ヒ水の戦い、桓玄の簒奪、孫恩の乱、劉裕の登場、などなど東晋時代の数々の事件を、貴族の一女性である主人公の目を通し、自らの人生の行方と直結した緊迫感をもつ事態として描かれており、主人公の視点から東晋時代の激動を追体験でき、この時代独特の社会の雰囲気がかんじられた。

また陶淵明など、日本でも有名な東晋時代の有名人がちらりと出てくると、思わずうれしくなった



海東青 摂政王ドルゴン(井上祐美子/中公文庫)

  • 2007/07/24(火) 23:38:31

17世紀前半、中国最後の王朝・清帝国の初代皇帝ヌルハチの第9王子ドルゴンの生涯を描いた小説。

【感想】
本作の主人公ドルゴンは、父帝ヌルハチの死後、帝位継承権を持つが故に一歩間違えれば粛清されかねない立場だったが、兄帝ホンタイジの片腕として政戦両面で非凡さを発揮、創業間もない清帝国の基礎固めに活躍した。

そして兄帝ホンタイジ亡き後は、幼帝の摂政として実質的な最高権力者となり、遂には中国全土を征服し、清を中華の主とした。

つまりドルゴンは、清帝国の大功労者なのだが、その知名度はあまり高くない。
また、ドルゴンの活躍した明末清初を舞台とした小説は数が少なく、ドルゴンを主人公とする作品はなおさらである。
だから、このなじみの薄い時代・人物をどのように描くのか楽しみながら読んだ。

まず、本作を読んで明末清初へのイメージが、多少変わった。

明末の明帝国は内部腐敗し、明軍は一部の例外を除きどうしようもなく弱く、一方の清軍は滅茶苦茶強く、内部対立も大してないようなイメージがあった。
強者が勝つのは当然であり、清の中国征服にはあまり面白みがかんじられないような気がしていた。

しかし作中では、明や周辺諸国に対し決して絶対的優位ではない、清の内情の苦しさが描かれていた。

清は少数民族・女真族の国であり、兵は精強だがその兵数は多くはなく、軍事的に絶対優位とは言えなかった。

そして清内部にも、様々な対立があった。
それは帝位を巡る女真皇族どうしの対立であり、草原の略奪者的な気分の抜けない武人貴族と、安定した国を築こうとし無益な殺生を戒めるドルゴンを中心とする勢力との対立である。

明もまた、腐敗したりといえども気骨ある士はまだまだ居り、容易に倒れぬ底力があり、易々と戦を進められる敵手ではなかった。

決して一枚岩ではない清内部の人間模様、清を率いる兄帝ホンタイジと皇弟ドルゴンがこの苦しい国内事情と対外関係をやりくりしながら勢力圏を広げ、同時に国内を整備していくようすはおもしろかった。

そして単純な武人タイプの多い女真人の中で、ドルゴンは珍しく内省的なタイプであり、家奴・曹振彦や兄帝ホンタイジとの交流、武断的な女真貴族たちとの対立、ドルゴン自身の自問、などを通しての内面の描写には共感がもてた。




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