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「山本菅助」の実在を示す信玄書状、新たに発見されるとの記事

  • 2009/05/02(土) 22:01:52

山梨日日新聞WEB版によると、「山本菅助」の実在を示す信玄書状が群馬県県安中市で発見されたとのことである。
記事の見出し及びリンクは以下の通り。

「山本菅助」への信玄書状を発見
群馬県安中市の民家
褒美与える内容など2通

http://www.sannichi.co.jp/local/news/2009/05/01/2.html

これはすごい発見だと思う。
山本勘助についての研究がさらに深められることが楽しみである。

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風林火山 第46回「関東出兵」

  • 2007/11/19(月) 23:58:45

長尾景虎、関東管領・上杉憲政を奉じ関東へ出兵!
景虎の元へ関東諸将10万が集結!
打倒北条氏康のため小田原城へ進軍!
強大な兵力に驕る景虎!

【感想概略】
今回は、景虎陣営中心のお話である。
ついに関東管領・上杉憲政長年の夢、景虎の関東出兵が実現した。
だが、義将・景虎であっても心に驕りが生じるあたりには、人間臭さがかんじられ、おもしろかった。
また、景虎の傲慢な発言にハラハラする長尾家重臣たちには、共感をおぼえた。

武田陣営では、信玄の意を受け、勘助が景虎との決戦に備え、川中島に海津城の築城を指示。
いよいよ第四次川中島合戦に向けて盛り上がり、期待が高まるというものである。

また、香坂虎綱など武田家の軍師新世代が育っているあたりは、武田家の人材の厚みがかんじられ、例え勘助死しても武田家の知者は尽きず、という描写もおもしろかった。

【信玄、勘助と軍略を語る】
信玄居館の持仏堂。

勘助と信玄は二人きりで、東国の軍事情勢について語り合っていた。
主な話題は、長尾景虎の脅威である。

景虎は先頃室町幕府より関東管領を存分に助けよとの許しを得た。
景虎が関東に勢力を拡大して強大化する前に、決戦せねばならぬという一点で、勘助と信玄の意見は一致。

そして信玄は、景虎との戦いのため、川中島に新たな城を築くことを命ずるのだった。

【四郎元服】
同じ頃、由布姫と信玄の子・四郎が元服。諏訪家を継いだ。
元服の儀の執り行われる座敷の廊下には、由布姫の侍女・志摩も控えている。
勘助は感慨深げである。

【勘助と、新世代軍師・香坂虎綱】
勘助は、香坂虎綱を訪ねる。
そして川中島の軍事上の要地に城を築き、城代を香坂に委ねるという信玄の意向を伝えた。

香坂は勘助に指摘する。
次に予想される景虎との戦を四郎の初陣と考えているのではと。

勘助は考えを読まれたことに驚くが、香坂の聡明さを喜んでいるようである。
そして勘助は香坂に、作戦について熱く語る。
四郎が敵の側面を突き、武田軍の勝利を確実とするのだと。

だが香坂は言う。
四郎は討って出てはならない。
今度の景虎との戦いは激戦が予想され、武田の家系を絶やさぬためだと。

さらに香坂は言う。
これまでの武田の勝利は策略によるもの。
もし景虎が領土的野心を持っていれば、川中島地域などはとっくの昔に景虎の武勇により奪われているだろう。
武田が川中島に勢力圏を保っているのは、景虎に領土的野心が無いことを利用した勘助の策によってなのだと。

「武田が負けるというのか?」という勘助の問いに、香坂は厳しい表情のまま無言である。
香坂としては、景虎には策略は一切通用せず、純粋な武力と武力のぶつかり合う激戦が予測されるといいたいのだろうか。

香坂の厳しい分析に、唸る勘助である。

【景虎、関東出兵】
長尾景虎は、軍勢を率い、関東管領・上杉憲政を奉じて関東へ出兵した。
北条を討ち、関東に旧来の秩序を取り戻すためである。

破竹の勢いで進撃する景虎の元へ、関東諸将が続々と集結。
その兵力は10万に達した。

上野国厩橋城に本陣を置く景虎の元には、次々と関東諸将が参陣。
その中には、上杉憲政の家臣、長野業政の姿もあった。
再会を喜ぶ憲政と業政。
互いをいたわりあう、美しい主従の姿であった。

ところが、景虎の様子がどうもおかしい。
景虎は業政に、「本日よりそなたの主はこのワシである」と言い放つ。
これには憲政、思わず白けた表情を見せ、業政はちょっと困った様子である。

さらに景虎、「北条氏康は無理な戦はしない」と聞くと、「その無理な戦をしない武将に敗れたのか」と発言。
この瞬間、業政、憲政、そして関東諸将はムッとした表情をのぞかせる。
一方、長尾家重臣の直江、宇佐美、柿崎などは、景虎の無神経発言にハラハラした表情を隠せない。
険悪な雰囲気の漂う中、何とか場を和ませようとする業政は、何て人間が出来ているのだろうと思った。

憲政は気を取り直し、「これで竜若丸の仇を討てる」と業政へ語りかけた。
すると景虎は「此度の戦は仇討ちにあらず」と、脇から訂正を入れるのである。
憲政はますます不愉快そうな表情を見せる。
そして業政と関東諸将は、景虎をはかりかねてしまう様子である。

だが景虎は、正義の怒りに燃え、北条氏康を「外道の極み」と呼び、関東諸将の気持ちに全く気付かないのである。


景虎はこれまでも、義を重んずるあまり的外れなことを口走り、家臣のプライドを知らずに傷つけてしまうことがあったが、それでも家臣たちの自尊心への配慮というものがあった。
ところが今回は、自分の正義を全面的に信じるあまり、自分の考えは絶対正しいと思い込み、他者のプライドへの配慮というものが、どこかへ吹き飛んでしまっているように見える。
このため、関東諸将の反感を買いまくっているようである。

いつもなら、直江実綱あたりが、「殿~、困りまするぞ~」などと突っ込みを入れて家臣の反感のガス抜きをするところだが、今回は長尾家家臣だけでなく、関東諸将が居並んでいる。
さすがの直江も、他家の武将たちの前で景虎に突っ込みを入れる訳にはいかないのだろう。

【北条氏康、対景虎戦の方針決定】
一方、越後勢の侵攻を受けた北条氏康は、軍議を開く。
無理な戦いはしないという氏康は、対景虎戦の方針を篭城と決定。
配下の諸将に篭城を指示、自身は小田原城へ入城して守りを固めた。

【宇佐美、景虎の驕りを案ずる】
景虎は厩橋城にとどまり新年を迎えた。
景虎陣営の新年の宴の雰囲気は、あまり良くない。

宴を抜け出した宇佐美は、廊下に控えていた平蔵に、景虎はどう見えるか尋ねた。
すると平蔵は言う。
「軍神の化身のように見えます、そうでなければこれほどの軍勢が集まるとは思えません」

だが、宇佐美は言う。
それは周りがそう思いたがっているだけのこと。
景虎さまは神ではなく人間に過ぎず、力が強大となれば心に驕りを生ずることもある。
それは危ういことだと

そう言えば、信玄も暴君と化していた時期があったことが思い出される。
かつて信玄が暴走したのは、家臣が従うのは自分が強いからだと思い込み、虚勢を張っていたという、いわば自信の無さの裏返しだった。
一方、景虎の驕りは、「正義は我にあり、神仏の加護も我にあり」という自信過剰が暴走し、謙虚さと他者への思いやりを吹き飛ばしてしまい、自分に厳しく他人にも厳しい面が突出してしまったように見える。
同じ暴君化であっても、信玄と景虎は対照的で興味深い。

【景虎、忍城主・成田長泰の妻・伊勢を人質とする】
3月、景虎は進撃を開始した。
そして、進撃路にある武蔵国の忍城城主・成田長泰の帰順を受け入れた。
この成田氏は、古くから続く武家の名門である。

すると直江は景虎に進言する。
忍城は軍事上の要地であり、長泰から人質を取るべきと。

間もなく景虎は、直江、柿崎たち重臣を引き連れ、忍城の成田長泰を訪ねた。
この時、長泰は上座に座していたが、渋々下座についた。
そして、代わって景虎が上座につくのである。

ここで景虎は長泰に言う。
名家であることに敬意を表し、自ら参ったのだと。
景虎としては、相手に敬意を払っているつもりなのである。

長泰は帰順の席で酒宴を催した。
ここで長泰は景虎に、妻・伊勢を紹介した。

直江は、伊勢を見て驚いた。
伊勢は景虎の母・虎御前に瓜二つだったからである。

一方、景虎は、上機嫌で伊勢の身の上話を聞いていた。
富士山をじっくり見たことがないという伊勢の言葉を聞くと、「これからゆるりと見てはいかがじゃ」といい、伊勢を軍勢に同道すると言い出す。
渋々従う長泰である。
景虎は直江の人質作戦を採用し、この伊勢を人質としたのである。

だが、7歳という幼さで母から引き離され、寺に入れられた景虎は、母を慕う心が強いようである。
作戦のためだけでなく、伊勢に母の面影を求めたのだろうか。

【景虎、神仏の加護を誇示】
間もなく、景虎は大軍勢を率いて小田原城を包囲した。
伊勢には三日で攻め落とすと豪語していた景虎だが、何日たっても城はびくともしない。
それどころか、北条方の周辺諸城は景虎勢の輜重部隊を度々襲撃。
攻囲する側の景虎勢を、逆に兵糧攻めとするのである。

【北条氏康、軍議を開く】
小田原城の守りを最大限に活用した手堅い戦を見せる氏康は、軍議を開く。
まず、同盟国の動向である。
重臣・清水は報告する。
武田は援軍を派遣するが、今川氏真は織田に寝返った松平元康討伐のため、援軍を出せないだろうと。

これに氏康、武田は長尾をけん制すればよい、武田はまともな戦いはしないだろうという。
例え同盟国であっても、過大な期待をしない、リアリスト氏康である。

【武田、北条の援軍として出兵】
一方、武田は北条の援軍として出兵、軍議を開く。
ここで真田幸隆は、景虎の動きをけん制するため、信濃の武田長尾勢力境界の城を策略により攻め落とす作戦を進言。
すでに城には、間者を忍び込ませているという。
信玄は、幸隆の策を採用した。

この城には伝兵衛と葉月が潜入していた。
葉月は伝兵衛に、城主が寝返る、城主の寝所に忍び込むという。
すると伝兵衛は葉月を引き止めた。
そして何と、葉月に結婚を申し込むのである。
これに葉月は、城が落ちたら伝兵衛の手柄じゃと言う。

次回、この城が寝返るのだろうか。
楽しみである。

【景虎、神仏の加護を誇示】
景虎は伊勢の元を訪れた。
伊勢は景虎の武力行使、さらには戦争そのものに反対らしく、やんわりと景虎を批判する。

まず伊勢は、兵糧が日に日に少なくなっていくこと、三日経っても小田原城は陥落しないことを指摘する。
だが景虎は、神仏の加護は我にあると、あくまで強気である。

すると伊勢は、そのようなものがここにあるとは思えないと言う。
もはや景虎に反対する姿勢を隠さない。

この言葉に景虎は、「神仏が、ワシが信じられぬか?」と凄い発言である。
が、伊勢も負けておらず、戦をする神仏は信じられないという。

すると景虎、「ならばその証、見せてやろう」と不敵な笑みを見せる。

間もなく景虎は、供も連れず一人で悠々と小田原城の城門間近に現れ、どっかと腰をおろした。
これに慌てたのが、直江たち長尾家重臣である。
宇佐美は諦め気味に、「おのが力を信じておられるのだろう」という。

小田原方は、景虎に矢の雨を降らせる。
が、景虎には掠りもしない。

続いて小田原方は、銃弾の嵐を浴びせる。
一発が景虎の手甲に当たるが、火花を散らして跳ね返ってしまう。
鎧が防いだとはいえ、命中弾を浴びたというのに景虎は涼しい顔である。

この異様さに、北条氏康も重臣・清水も唖然。
ついに小田原方は、兵を繰り出すことは無かった。

【景虎改め政虎、ブチ切れる】
対北条戦が続く中。
景虎は、鎌倉の鶴ヶ岡八幡宮を訪れ、ここで古式に則り上杉家の家督と関東管領を継いだ。
そして、上杉憲政から「政」の字を与えられ、「上杉政虎」と名乗るのである。

憲政は、関東出兵では、景虎改め政虎の傲慢発言に不愉快な顔をすることの多かった。
だがこの時は「おのが子を再び得たようじゃ」と、素直に喜ぶのである。

そして儀式を終えた政虎の行列が、鎌倉の通りを進む。
関東諸将は膝をつき、沿道に居並んで迎えた。
すると政虎の目に、一人だけ馬上から自分を見下ろす武士が目に入った。
忍城城主・成田長泰である。

政虎はこれにブチ切れた。
輿を止めさせると、長泰に向かって歩きはじめた。
「まずい」という宇佐美だが、後の祭りである。

政虎は馬上の長泰を掴むと、叩きつけるように地面に引きずりおろした。
そして長泰の無礼を叱責、乗馬用鞭を長泰に叩き込み、滅茶苦茶に殴りまくった。

【次回予告】
次回も関東出兵の続きである。
景虎改め政虎は、驕りを克服できるのか?
楽しみである。

風林火山 44話「信玄暗殺」

  • 2007/11/07(水) 23:58:28

宇佐美定満、信玄の暗殺を画策!
平蔵、宇佐美の命により寿恵尼と接触!
諏訪頼重の遺児・長笈、寿恵尼の謀略により復讐鬼と化す!

【感想概略】
今回は、すっかり忘れられていた諏訪頼重と禰々の遺児・寅王丸の真っ直ぐな心根の故に謀略に翻弄される悲劇、大義の実現のためには暗殺も辞さぬ宇佐美、武田への恨み・武士となってからつきまとう下降への恐怖・上昇への欲と良心との間で葛藤する平蔵、すっかり名君の信玄、そして乱世を自国が生き残るためにはまさに非情に徹する寿恵尼の凄みが描かれ、おもしろかった。

【宇佐美の陰謀】
さて今回は、宇佐美定満と寿恵尼の信玄暗殺の陰謀の物語である。
景虎の上洛により国主不在の越後では、留守を預かる重臣・宇佐美定満が信玄暗殺を画策していた。

宇佐美が刺客として目をつけたのは、諏訪頼重の遺児・寅王丸、今は出家し長笈と名乗っていた。
そして寅王丸を復讐鬼に仕立てる手先として目をつけたのは、何と平蔵である。

「風林火山」開始当初は葛笠村の百姓の少年であった平蔵は、武田家先代当主・信虎に好きな女性・ミツを殺され、以来武田への恨みをはらす事を原動力に諸国を流浪、数々の合戦に雑兵として参加、やがて矢崎十吾郎に見出され、今では武士となっていた。
もっとも武士といっても、亡命武将・村上義清の家臣という、没落武士であった。

平蔵は宇佐美に声をかけられ、信玄暗殺の謀にのった。
宇佐美は平蔵に、内々に今川家の協力を得る策をはじめとする信玄暗殺の策を授けた。
これはかなり細かな指示であり、宇佐美に言われた通りに実行するだけでも大変であり、これを考えると平蔵は弓の腕が立つだけでなく、なかなかの人材と言えるのかも知れない。

そして、ヒサに止められ、例え仇を討ったとしても寅王丸は死ぬのではないかという言葉に罪悪感をかんじつつも、平蔵は出立した。

ヒサのいうとおり、例え寅王丸が信玄を暗殺しても寅王丸自身は殺されることは明白である。今回の平蔵の原動力は、武田への復讐心よりは、自分自身の出世欲のように思える。

さて駿河にたどり着いた平蔵は、今川家要人に面会を求めた。

【女戦国大名・寿恵尼】
その頃、甲斐では信玄の嫡男・義信と正室・綾姫との間に女子が生まれていた。
義信は狂喜、信玄も三条夫人も祝福。

そして綾姫の父・今川義元もこの知らせを受け、目を細めて純粋に喜んでいた。
いつもキザで陰険な義元だが、家族愛は強いようである。

だが、義元の母・寿恵尼はそう単純ではなかった。
武田は今川によって骨抜きにされたも同然、雪斎の申した通りであったと、あくまで政略上今川家にとって有益である点を祝福するクールな寿恵尼である。

寿恵尼は、孫である綾姫を可愛いとは思っているのだろうが、それ以上に公人としての意識が強いのだろう。

【平蔵、寿恵尼と対面】
さて、平蔵は寿恵尼と対面、旧主・諏訪頼重の仇を討つ為に奔走している諏訪家旧臣を名乗った。
これを聞くと寿恵尼、寅王丸に会いたいのか尋ねる。
平蔵は寅王丸に忠節を尽くすと訴えるが、寿恵尼はこれを、平蔵を捨て駒とした宇佐美による信玄暗殺の策とあっさり見抜く。

が、武田に脅威をかんじる寿恵尼は、信玄が討たれれば義信が家督を継ぐこととなり、これは今川家の利益と考えてこの策にのった。
そして平蔵に寅王丸との対面を許し、自らも同席する。

【平蔵、寅王丸と対面】
寅王丸は出家し、長笈と名乗っていた。
平蔵は長笈に武田の非道を訴えるが、御仏に仕える長笈の心は容易に動かない。

すると、寿恵尼は長笈の姉・由布姫は武田に殺されたも同然、長笈の実父・諏訪頼重は騙されて切腹したと吹き込んだ。
しかもこれらの言葉は、必ずしも嘘ではなかったりする。

平蔵の訴えには心を動かさなかった長笈だが、寿恵尼の言葉に武田への怒りと恨みを燃え上がらせ、信玄暗殺を決意する。

今川家のためなら人の心を弄ぶことも厭わぬ寿恵尼には、まさに女戦国大名の凄みがあった。
寿恵尼と比べると、謀略家になり切れない平蔵は可愛く見えた。

【寅王丸、出奔】
善得寺を出奔した長笈は、平蔵とともに甲斐へ向かう。
だが、平蔵に妻子のいることを知ると、ここから先は一人で行くという長笈。

長笈は言う。
平蔵が死ねば父の無い子をまた増やすことになり、それではこの仇討ちの義が立たぬ、と。
平蔵に心からの感謝の意を表して別れを告げる寅王丸。
そして非情になりきれず、野心と良心の間で苦悩する平蔵である。

【寅王丸、復讐の機会を窺う】
甲斐に到着した寅王丸は、信玄の側室・於琴姫の住む積翠寺に通ってその信任を得、信玄と近づく機会をうかがった。
寅王丸は積翠寺の女性たちに好評で、リツは面白くて人気者の若い僧がいると勘助に聞かせるのであった。

さて、寅王丸と別れた平蔵だが、密かに甲斐に潜入。
積翠時を伺う平蔵だが、いきなり声をかけられた。
太吉と伝兵衛であった。
平蔵を見ると涙を流して再会を喜ぶ太吉と伝兵衛。
この三人が会うのは、村上義清が信玄と互角以上に戦っていた頃以来だろうか。

そして勘助も平蔵と再会。
手放しで喜ぶ勘助である。
こんなに嬉しそうな勘助は珍しい気がする。
以前勘助は、この世で大事なのは信玄、由布姫、四郎だけと言っていたが、太吉・伝兵衛・平蔵のこともかなり大事に思っているように見えた。
何せ太吉の息子・茂吉には山本家を継がせようとすら思っていたのである。

が、勘助は平蔵の様子から刺客の存在に気付く。
平蔵は、寅王丸さまを止めてくれと勘助に訴えた
やはり平蔵は、非情な謀略家には向かないようである。
勘助は積翠寺に走った。

【信玄暗殺未遂】
一方、積翠寺では、寅王丸は信玄暗殺を図るのだが、信玄に正体を見抜かれ、その上で頭を下げられ、謝罪の言葉を告げられた。
この信玄に接し、寅王丸は自分の描いていた父の仇とは異なる人間性をかんじたのか、信玄を暗殺する気が失せたようである。

血相を変えて駆け込んできた勘助に、信玄はいう。
寅王丸が、立派な僧となって会いに来てくれた、と。
すっかり名君の信玄である。

信玄は、寅王丸を自邸の持仏堂に招いた。
勘助も同席するのは、信玄が心配だからだろうか。

この不動明王を祀った持仏堂は、幼い寅王丸を可愛がってくれた亡き大井夫人最後の場所だった。
ワシを武田家を確かめて欲しいという信玄。
寅王丸は、恨みを捨てようとしていた。

【義信乱入】
ところが、義信が怒り狂って乱入してきた。
三条夫人と萩乃も登場である。

この空気を読まない若殿様・義信は、父・信玄を殺されそうになったことに激昂したのだろうが、せっかく復讐心を捨てようとしている寅王丸を、これでもかと罵倒。
逆恨みだの、もう終わったことだのと強者の理屈を振りかざし、由布姫のことも悪し様に罵った。義信にしてみれば、父の側室・由布姫は、母・三条夫人を悲しませる悪者に思えるのだろう。
だが寅王丸にしてみれば、自分のことだけならまだしも、父と姉を侮辱されては激怒するのも止むを得ない気がする。

寅王丸の表情は一見平静だが、これは怒りが極限に達して、激情が研ぎ澄まされた殺意と化し、「殺す」という一点にのみ精神が集中したたからであろうか。
抵抗する意志が無いことを示すため、寅王丸は両手を広げて義信に近づく。
が、寅王丸は義信が腰に挿す脇差を一瞬で奪い、渾身の突きを叩き込んだ。
出家の身とはいえさすがは武家の男子、大した早業である。

その時、咄嗟に萩乃が間に割って入った。
深々と刺され、萩乃は倒れた。
三条夫人の腕の中で、姫さんにお仕え出来て幸せでしたと言い残し、萩乃は死んだ。

信玄は、寅王丸を寺に閉じ込めることを命ずる。
勘助は屋敷に駆け戻るが、平蔵は太吉と伝兵衛が逃がした後だった。
平蔵には妻子がいると聞いたからという太吉と伝兵衛だが、多分そうでなくても逃がしたのではないか。
が、平蔵の残した言葉から、勘助は信玄暗殺の陰謀の黒幕が寿恵尼であることを知り、「寿恵尼め~」と叫んで怒り狂った。

【予告】
次回は桶狭間の合戦の背後で勘助が暗躍していたというお話のようである。
歴史ドラマでは何度も描かれている桶狭間の合戦を、変わった切り口から描かれるようであり、楽しみである。

風林火山 第43回「信玄誕生」

  • 2007/10/30(火) 23:59:27

長尾家重臣・大熊朝秀、武田に臣従!
景虎、信濃へ侵攻し第三次川中島合戦勃発!
晴信出家し、信玄と名乗る!勘助、真田幸隆、原虎胤も出家!
上杉憲政、景虎に上杉の名跡と関東管領職の委譲を打診!
宇佐美定満、信玄暗殺を計画!

【リツ、勘助一家に参加】
前回ラストで、リツが養女として山本家に加わった。
そして今回、リツはすっかり山本家になじんでいた。
日頃から勘助屋敷に出入りしていた成果である。

早朝、早く起きて勘助の寝顔を覗き込むリツ。
目を醒ました瞬間、びっくりする勘助である。

「勘助どの」と呼ぶリツを、精一杯重々しく「父じゃ」とたしなめる勘助。

が、まだ朝も早いのにリツがすっかり身支度を整えていることに感心した勘助は、早起きを誉めると「早きこと、風の如きでございます!」と切り返すリツ。

勘助は、その言葉はそのように言うものではないとたしなめるが、ではどのように?と真顔で尋ねられ、ちょっと考えてから、もっと、心を込めて、といい、直後、テーマ曲の孫子朗読に突入した。
この辺り、コントのようでおもしろかった。

そして引き続き、摩利支天像を磨き、勘助の世話をするリツ。
娘になっても依然として熱烈なリツにやりづらそうな勘助である。

【長尾家重臣・大熊朝秀、晴信に臣従】
前回、長尾景虎に謀反を起こした長尾家重臣・大熊朝秀が、晴信と対面した。
長尾家臣団内部で孤立した大熊は、武田の調略を受けて寝返ったのである。

晴信は、信濃の長尾家勢力圏への経略について、大熊に質問するが、同席している真田幸隆は既に調略を進めていると報告する。

【真田はあてにせず】
真田幸隆の屋敷を訪れた勘助。
嫁との暮らしはどうじゃ?!と勘助に尋ねる真田。
娘です!と言い返されると、嫁にしてしまえ!とハレンチなことをけしかける真田である。
リツを養女にしても、結婚しろという圧力をかけられる勘助。

さらに真田、次男三男は山本家にはやらんぞ!と断言。
真田はあてにしません、という勘助。
どんなあてがあるのか全く言わないが、よもや茂吉を婿に考えているとは予想外である。

山本家に跡取がいないなら、真田が武田家の軍師になるという幸隆。
ここら辺、幸隆の数々の調略も軍師的であったり、後の真田昌幸や幸村の活躍を暗示しているようでおもしろい。

【第三次川中島合戦】
信濃における、長尾家の勢力圏への調略に対し、景虎が自ら軍勢を率いて出陣した。
第三次川中島合戦の開幕である。
だが、武田軍は正面衝突を避け、あくまで守りに徹し、戦線は膠着した。
このため、決戦を望む長尾軍は、ひとまず撤退した。

すっかりタカ派の馬場信春は、正面衝突を避ける晴信の戦ぶりに不満そうであった。

ここら辺、合戦がほとんど描かれないのは残念であったが、軍兵の行軍や鎧武者が集結しての軍陣の描写が楽しめた。

【晴信、信濃守護に就任】
晴信は、長尾軍撤退後、室町幕府将軍・足利義輝の仲介による景虎との和睦を受け入れる。
その際、引き換えに信濃守護職を幕府に望み、許された。

当初、タカ派・馬場信春は、この長尾家との和睦にも不満を露骨に示していた。

が、勘助はこれで越後と堂々と戦えると主張する。
晴信の信濃守護叙任により、武田家は、幕府により信濃支配を正式に認められ、大義名分を得た。
これにより、晴信に逆らう信濃衆は、正統な統治者である信濃守護に逆らう反逆者なのだ。
そして、信濃に攻め入る長尾軍は、信濃への侵略者としてその本拠地越後まで攻め入り成敗することも、大義名分の上では許されるようになったのである。

刃を交えての戦いだけが戦ではないという謀略のおもしろさがあった。

【景虎、関東管領へ】
一方、長尾景虎は、晴信の信濃守護叙任により、信濃出兵の大義名分を失ってしまう。
だが、北条に敗れ長尾の庇護を受けている関東管領・上杉憲政は、景虎に上杉の名跡と関東管領職を譲りたいと打診。
関東管領は、信濃守護より遥かに上位であり、信濃出兵の大義名分を得ることができるのである。
この時、憲政が示した条件は、関東管領として上州に残留した憲政の家臣領民たちを救うこと、北条を倒すことであった。
普段は遊女たちを呼んで遊んでばかりいる憲政だが、今回は結構存在感のある武将として描かれており、興味深い。

ここで景虎は、まずは上洛し、将軍から関東管領就任の承諾を得てからと発言。
だがそれは単なる就任手続きのためではなく、幕府の実権を握り将軍を圧迫する三好長慶、松永久秀たちを駆逐するためであり、そもそも今回の武田との和睦を将軍が仲介したのも、このためだというのである。

【景虎、浪に無神経発言】
上杉憲政との対面の後、景虎は宇佐美に相談する。
関東管領となり、関東の秩序を守るため戦うことになると、信濃の武田にばかりはかまっていられなくなる。武田の動きを封ずる策はないか、と。

このとき、飲み物を供する浪に、景虎は上洛するのでまたみやげを持ち帰ろう、何がよい?と尋ねる。
何もいりませぬ、ご無事でお戻りをという浪。
景虎は宇佐美に尋ねる。浪に良い嫁ぎ先はないものか、このままワシの身の回りの世話をしているのでは不憫じゃ。

義に生きる義将・景虎に恋愛の二文字はない。
そして、浪の思慕に全く気付かず、浪に良かれと思って、浪を傷つけるような発言を連発する。
相手は景虎であり、浪の想いが実らないは仕方ないのだろうが、それにしても浪が気の毒に見えた。

【リツ絶叫「茂吉はイヤじゃ!」】
リツを良き若者と結婚させるという勘助だが、婿と考えていたのは、何と太吉とおくまの息子・茂吉である。
てっきり重臣の次男三男を婿養子に貰い受けるつもりなのかと思っていたが、茂吉は、勘助が見込むだけの優れたものを持つ若者ということなのだろうか。
それとも、勘助の発想が安直なのか?

茂吉を婿にと聞き、難色を示すリツ。
一方、勘助は茂吉の何がいけないのか、心底分からない様子である。

なら伝兵衛なら良いのかと、脅すようにいう勘助。
瞬時に断るリツ。
いつの間にか結婚したくない男の代名詞にされている気の毒な伝兵衛である。

するとおくまが怒鳴り込み、茂吉を山本家の跡取とすることに猛然と抗議した。
自分たちの跡取がいなくなるのは武家の妻として耐えられないというおくまだが、他の息子たちは養子にやってしまい、娘たちはみな嫁に行き、せめて茂吉は手元に置きたいというのが、本心なのかもしれない。
茂吉はリツとの結婚にまんざらでない様子だが、リツは「茂吉はイヤじゃ!」と絶叫。
きっと茂吉は傷ついただろう。

が、「誰でもイヤなのじゃ…」というリツ。
これがリツの本心なのだろう。
これからリツはどうなるのだろうか。
気になるところである。

【晴信出家、「信玄」誕生】
晴信は出家を宣言、その理由を自ら勘助に語る。

どうも由布姫を存分に慈しめなかったこと、そして由布姫の死も出家のきっかけらしい。
信濃守護となったのは、由布姫のために堂々と信濃を治め、守るためなのだという。
守護として正しく領国を治めねばならん、国の基は人、さらに正しく己が身を修め、家臣領民を慈しむため、出家して己を律していく、という晴信。
これを聞き、家臣領民は晴信をさらに崇め奉りましょうという勘助である。

戦国時代を描いた作品で、出家する武将が描かれることはあるが、出家の理由を本人が語る描写はかなり珍しく、興味深かった。

そして晴信は出家し、「信玄」と号した。
これにならい、勘助も出家して「道鬼」と号した。
さらに原虎胤、真田幸隆も出家。それぞれ「清岩」「一徳斎」と号した。

だが全員人相が凶悪なため、僧侶というよりデンジャラスなスキンヘッド集団にしか見えなかった。

【勘助出家の理由は?】
坊主頭の勘助は、出家したからには女人を断つとリツに言うのだが、随分前から断っていることを指摘され、ぐうの音も出ない。

私のために出家など、というリツに、自分のためじゃ!という勘助。
由布姫一筋の勘助は、他の女性との結婚など考えられないのか、妻候補のリツを養女として結婚を逃れたが、出家したのは結婚させられる可能性を徹底的に排除したかったからだろうか。
リツはそう思っているようである。

【平蔵とヒサ】
久々に平蔵とヒサが登場。
村上義清の配下として越後に逃れた二人だが、兄・十吾郎、妹・ミツという二人の子供に恵まれている。それぞれヒサの父、そして平蔵がかつて好きだった少女の名である。

ヒサは相変わらず平蔵を呼び捨てなところがおもしろい。

平蔵は、村上義清は越後に領地を与えられてからはすっかり越後の地侍となってしまったと不満をもらす。そして、また百姓に戻るのはイヤじゃ、勘助は40歳を過ぎて武田に仕官し、軍師となった、ワシも遅いことはない、と口にする。

ヒサは、平蔵と十吾郎とミツが一番大事だ、というのだが、家族が元気に暮らせれば充分という考えに、平蔵は必ずしも満足できない様子である。

武田への恨みに凝り固まっていた平蔵だが、どうも今はそれだけではなく、自らの功名心、勘助への憧れや対抗意識なども抱いているようである。

もともと平蔵は、葛笠村の百姓の少年であり、諸国を放浪し、各地で雑兵として戦ってきたが、やがて矢崎十吾郎、村上義清に見出され、義清の家臣となるという、いわば「風林火山」における下層からの出世頭なのである。そんな平蔵にしてみれば、自分の出世はこれで終わりではない、という欲が生まれてきたのかもしれない。

【景虎上洛】
景虎は、兵5000を率いて上洛する。
関東管領就任の承諾を得るため、そして三好長慶、松永久秀に圧迫されている将軍・義輝を助けるためである。この兵5000という数だが、京から天下の大名たちに号令するには少ない。道々の大名たちが景虎の軍勢の通行を認めたのも、この兵数なら上洛と見せかけ自分たちを攻撃したりすまいと思ったからだろう。
それでもかなりの大軍勢であり、三好、松永らを威圧するには充分な兵数である。

一方、上洛で景虎不在の越後では、浪が出家した。

【宇佐美定満、平蔵と対面】
景虎の上洛中、留守を預かる宇佐美定満は、居城・琵琶島城に平蔵を招いた。
甲斐の地理に明るく、勘助と旧知の仲とのことなので平蔵を招いたという宇佐美。

ここで平蔵は宇佐美に、軍学を授けて欲しい、勘助のような軍師になりたいと頭を下げる。
宇佐美は、平蔵の願いを聞き入れることをにおわせつつ、駿河へ行き、信玄を討つべき者と会い、いざなってみよ、と語りかける。
この信玄を討つべき者とは、諏訪頼重と晴信の妹・禰々の忘れ形見・寅王丸であり、今は出家して長笈と名乗っていた。

次回は、平蔵が駿河に潜入し、寅王丸を刺客に仕立て上げ、信玄の命を狙う話のようであり、楽しみである。

風林火山 第42回「軍師と軍神」

  • 2007/10/22(月) 23:58:33

勘助、由布姫の死から立ち直れず!
景虎、家臣たちの争いの板挟みとなり疲労困憊!
それぞれ仏に救いを求める二人だが?!

【感想概略】
今回は、勘助VS景虎という、まさに夢の対決が繰り広げられ、それぞれの心の回復も違和感無く描かれ、おもしろかった。

長尾家の内紛は、どちらかというとストイックで普段はあまり自己主張しない長尾家重臣たちが、今回ばかりは本音をぶつけ合っていて、興味深く、おもしろかった。

また、勘助と景虎は、大喧嘩して叱られ、一緒に朝食を食べ、一緒に講義を受けたりするのだが、二人一緒に行儀良くしている姿は、何やら可愛らしかった。

【晴信、由布姫の死を勘助に伝える】
冒頭、勘助は信濃の戦場から甲斐へ帰還、そこで晴信の口から由布姫の死を聞く。
そして、由布姫と勘助との約束を聞いたと言う晴信。
だが勘助は、約束とはお屋形様に天下を取っていただくこと、木曽は既に下した、長尾景虎の首級をあげれば上洛だ、などと涙声で発言し、強引にごまかそうとする。この言葉からは、天下統一事業への前向き姿勢ではなく、死に場所を求める自暴自棄すらかんじられた。

勘助は、約束実行の延期を求める。
由布姫が死んだばかりなのに、他の女性と結婚する気になどとてもなれない、純情な勘助である。

【三条夫人、四郎と勘助を案ずる】
晴信は、由布姫から託された笛を三条夫人に見せ、由布姫の遺言なので受け取ってほしいという。
それはかつて、三条夫人が由布姫にプレゼントしたものだった。
だが三条夫人は、お前様が持つべきという。晴信は承知した。

晴信は由布姫を家臣の反対を押し切って側室としながら、その後何年も飼い殺すなどかなり酷いこともしている。
由布姫の形見は晴信が持つべきというのは、死んだからといって忘れることは由布姫が不憫であり、忘れることなど許さないということなのだろうか。

三条夫人は、由布姫の遺児・四郎のこと、そして勘助の様子を尋ねる。
萩野は、侍女・志摩の行く末を尋ねた。
志摩のことを心配する萩野だが、志摩と由布姫に、自分と三条夫人を重ね合わせているのかもしれない。

晴信はこたえる。
四郎はしかるべき城に預け、諏訪家の跡取として立派な武将に育てる。
身寄りのない志摩は勘助が預かると言っている。
そして勘助は、まだしばらく立ち直れないだろう。

【勘助、由布姫の墓前で誓うが…】
由布姫の墓前で、勘助はかつての由布姫との日々を思い出し、涙ぐんでいた。
勘助は由布姫の墓に語りかける。
四郎が初陣では必ず武勲を上げられるように導き、由布姫の気高さと晴信の思慮深さ、そして勘助の知略と命を受け継いだ立派な武将にする。
その頃には、自分の命も尽きるだろうから、また姫様の元へ参ります、と。

なかなか立ち直れず、死ぬことばかり考える勘助である。

【志摩、由布姫との約束実行を勘助に求める】
勘助は、諏訪高島城を訪れ、高遠城代・秋山信友に預けられることになった四郎と対面した。
晴信の言う、四郎をしかるべき城に預けての武将教育のためなのだろう。
四郎との別れを惜しむ勘助。
四郎もまた、勘助との別れが辛いようである。

対面後、勘助と志摩が残った。
勘助は志摩に自分のところへ来るようにいうが、志摩は四郎様に仕えるという。
そういわれては、勘助も無理強いはできない。

志摩は勘助に、姫様との約束をお守りくださいという。
約束とは即ち、「山本家の跡取を作れ」というものであった。
辛そうな表情の勘助である。

この辺り、武将や姫だけでなく、侍女も一個の人間としてその行く末を丁寧に描くところに好感を抱いた。

【越後長尾家の派閥争い】
一方、越後の春日山城、評定の間。

下座では、長尾家譜代家臣の直江実綱・柿崎景家・本庄実仍と、上杉家旧臣・大熊朝秀が、鋭くにらみ合っていた。
上杉旧臣・宇佐美定満は中立。
そして上座の長尾景虎は、家臣たちの板ばさみとなり、とんでもなく辛そうである。


越後を統一したばかりの長尾家内部には、派閥の対立があった。
それは長尾家譜代家臣と、かつての越後の主・上杉旧臣の対立である。

譜代家臣も上杉旧臣も、お互いに、相手は自分たちをバカにしていると思っていた。


長尾家は今でこそ越後の主だが、少し前までは上杉旧臣の同輩であった。
つまり、上杉旧臣は、以前は長尾家家臣より格上であった。
だから直江・本庄・柿崎といった長尾譜代家臣は、自分たちは上杉旧臣に見下されていると思い、反感を抱いた。

本庄が、「上杉家など、もう無い」と言ったのは、上杉旧臣は、いつまでも旧越後国主の直臣ということを鼻にかけるな!という気持ちがあったのだろう。

普段は口数の少ない柿崎景家が、「大熊どののお父上は景虎さまの味方をしたが、大熊どのはお父上の世渡りを恥じているのか?!」と挑発じみたことを言ったのも、何かと「上杉への忠節」を口にしてその出身を誇るような上杉旧臣への反感があったのだろう。


一方、大熊などの上杉旧臣は、自分たちは主・上杉家を裏切って長尾家に味方した卑怯者と見下されているのではと思い、やはり反感を抱いていた。
大熊が「上杉への忠節」を口にするのは、主を長尾家に乗り換えたことへの後ろめたさもあるのだろう。
大熊は景虎に対しても、本心では長尾家譜代家臣の味方なのではないか?上杉旧臣は主を乗り換えた裏切り者と軽蔑しているのではないか?と疑う気持ちもあるようである。

こうした感情の行き違いに加え、それぞれが後ろ盾をしている領主同士が土地争いなどをはじめると、ますますこじれるのも、無理はない気がする。
大熊が、「上杉の領地を失っては面目が立たない」というのも、こうした感情の行き違いが背景にあるので、争っている土地の大小にもはやあまり意味はないということのようである。
そして宇佐美が景虎に、「大熊どのの無念もお察し下され」と言ったのは、自身も上杉旧臣である宇佐美には、長尾家に仕える上杉旧臣の複雑な感情と孤立感がよく分かるからなのだろう。


義将・景虎には、どうもこの家臣同士の感情の行き違いが、いまいち理解できないようである。
「そんなに土地が欲しければ、この城もやろう。ワシには義が残る、それで十分じゃ」という景虎の言葉に、大熊は高潔さをかんじはするのだが、長尾家中での孤立感、無念は深まるばかりなのだろう。


なお、直江の「ワシにこだわりはないぞ」という言葉だが、実はストレートに本心を言っていると思われる。
直江の理屈は、「大熊もみんなも、一緒に景虎を支持した仲間同士ではないか」というものである。
ともに景虎を盛り立て、戦国大名として勢力圏を拡大すれば良いではないか、これに比べれば長尾譜代も上杉旧臣も小さなこと、こだわる事はないではないか、という考えのようだ。
直江にも上杉旧臣への反感はあるが、まあ勢力圏拡大というより大きな利益のため、お互いに小さなこだわりは水に流そうではないか、というところなのだろう。
名より実を取れば良い、という、いかにも戦国武人・直江らしい発想で、いっそ清々しい。

【景虎、落ち込む】
結論の出ぬまま散会した後。
城の廊下に景虎は腰をおろし、遠い目で庭を眺めていた。
戦場ではつねに勇ましく迷いのない景虎だが、家臣の対立の調整などは心底苦手らしい。
落ち込んだ景虎は、ちょっと可愛らしい。

なぜ皆おろかなことでいがみ合うのかと浪にポツリと洩らす景虎。
みなお屋形様のように強くはないのですと言う浪。
だが景虎は納得できないようである。

景虎はいう。
自分は7歳で寺に入る時、母に言われた。
真に強ければ、力に頼らず生きられる、力をふるわずとも己を見出せる、と。

間もなく、景虎は春日山城を出奔。
師に手紙を出すが行き先を告げずに高野山へ向かってしまった。

宇佐美定満は景虎の出奔を知ると、さっそく直江実綱に伝えた。
二人は、まずは長尾一門の長尾政景を訪ねる。

【勘助、傷心の旅立ち】
一方、甲斐の勘助の屋敷。
リツは、太吉とおくま夫婦に、由布姫死後の勘助の様子を尋ねる。
ちょっと考えた後、口を揃えて思い悩んでいたという太吉とおくま。
殉死を心配するリツだが、太吉とおくまはリツの心配を笑い飛ばした。

間もなく、勘助は仏に救いを求め、置き手紙一つを残して高野山へ旅立った。
あの勘助が仏の救いを求めるとは、と複雑な表情の晴信である。

【長尾家重臣たち、景虎出奔の対策を講ずる】
宇佐美と直江は、長尾政景の屋敷を訪れた。
政景は長尾一門であり、景虎の姉・桃の嫁ぎ先である。

景虎出奔を伝え、対策を講ずるためである。
景虎の姉・桃も同席する。

直江は、これは景虎の策ではないかと桃の意見を求める。
景虎が出奔すれば、家臣たちは頭を下げ、改めて忠誠を誓い、景虎に帰還を頼むしかない。
これを狙っているのではないかというのである。
戦国武人・直江らしい、謀略じみた解釈が好きだ。

桃は、弟が信じるのは母だけかもしれず、その信心深いのも母の影響を強く受けていることを指摘する。
宇佐美はこの出奔は本物と断じ、政景に家臣たちの意を景虎に伝えて欲しいと頼む。
そして、景虎の行き先は高野山と推測、的中するのである。

なお、直江にしてみれば、例えこの出奔が本物であっても、これを利用して長尾家の結束を高めれば良いと思っているのではないか。

【高野山の勘助と景虎】
高野山の無量光院。
勘助は、僧侶・清胤とは旧知であった。

自分に関わった者はみな不幸になると、清胤に悩みを打ち明ける勘助。
死んだ者は生きた者に必ず何かを残す、それを見つけて生きるしかないという清胤。

勘助は、必ずしも納得のいく答えにたどり着けたわけではないが、悩みを聞いてもらい、少しは気が楽になった様子である。

そして勘助と入れ替わりに清胤を訪ねる人物を見て、勘助は仰天する。
それは何と、宿敵・長尾景虎!

清胤に、仏道修行に励みたいと言う景虎も、ちょっとリラックスした様子である。

元々景虎は、家督を継ぐつもりはなく、僧侶になるつもりだったのである。
家臣同士の争いの板ばさみから解放され、寺院に身を置くと、つくづく欲にまみれた俗世より仏門にこそ安らぎをかんじるというところだろうか。

勘助は物陰から、景虎を伺い続けた。
ここら辺、「家政婦は見た」を思い出してしまった。

【夢の対決、激闘!勘助VS景虎!】
夜。
境内の森で、景虎は真言を唱えていた。
そんな景虎にそっと近づき、ストーキングする勘助。

景虎は気配に気付き、杖で殴りかかった。
勘助を見て景虎は激怒、刺客と思ったようである。

景虎は杖の柄を握り、すらりと抜いた。
仕込み杖であった。

そして景虎、猛然と勘助に斬撃を叩き込みまくった。

当初は刺客ではありませんと弁解する勘助。
だが、あまりの猛攻に、思わず自分も仕込み杖の鞘を抜いてしまう。
これを見た景虎、刺客でないなどと油断させ、騙し討ちにするつもりだったのかとますます怒り狂う。

こうなっては、二人の戦いは止められない。
弘法大師・空海の開山たる神聖な霊場そっちのけで、勘助と景虎は雄叫びをあげ、激しく撃ち合った。

が、清胤が現れ、やめんか!と一喝。
怒られた二人は刀を収めた。

ここら辺、怒られてケンカをやめる景虎と勘助はちょっと可愛かった。

恐らく、静かな霊場で大声を上げながら刀を大音声でぶつけ合う勘助と景虎の轟かせる騒音は、全山に鳴り響き、それで清胤も気付いたのではないか。

【清胤の仏法講座】
清胤は、勘助と景虎に曼荼羅を見せ、大日如来を中心に多くの仏のいることを説明した。
そして、己の中にあることを悟りととのえることが修行なのだと説く。

勘助は曼荼羅を見て、真面目な顔で、主君と家臣のようだという感想を洩らす。
が、その言葉を聞いた景虎、いかにもこやつらしい発想だと馬鹿にするような笑みを浮かべる。

ここら辺、勘助と景虎は互いに認め合いつつも、バカにしあっているあたりがおもしろい。

【勘助と景虎の朝食】
朝。
勘助と景虎は、一緒に朝食を食べていた。
神聖な霊場内で刀を振り回す問題児たちを隔離しているのだろうか。

景虎は、何故来たと勘助に尋ねる。
由布姫が死んだからとこたえる勘助。
そなたの主に殺された姫のためかという景虎に、勘助は晴信をバカにされたようでムッとしたらしく、お手前に主の心は分かりますまいと反論する。

だが、分かるぞという景虎。
勘助が甲斐へ帰り、景虎不在を知らせば、晴信は越後に攻めて来るだろうと、その行動傾向をかなり正確に推測する景虎。
義将・景虎は、晴信の欲心など納得などできないが、晴信の侵略的戦争指導者としての軍事行動は、軍事的見地からかなり正確に予測できるようである。

だが、自分を殺せば出家したとは言えますまいという勘助。
実はそれで勘助を殺せず困っているという景虎である。

ここら辺、コミカルでおもしろかった。

【直江実綱と長尾政景、景虎を説得】
夜。
境内の森で座禅を組む景虎の元を、編み笠の武士たちが訪れる。
何と、長尾政景と直江実綱を筆頭とする、長尾家重臣たちであった。

政景は、景虎が出奔したままでは、内外の敵を恐れて逃げたと思われるかもしれず、長尾家の武名のため戻って欲しいと訴える。
そして直江は、大熊朝秀謀反を明かし、現在は宇佐美定満が対陣中であり、大熊謀反は武田晴信の調略によるものと報告する。

政景は重臣一同の忠誠を誓う起請文を差し出す。
直江は、我らはお屋形様を信じております、お屋形様も我らを信じてくだされ、と訴えた。

そして居並ぶ重臣たちは、野太い声で、お戻り下され!と景虎に頭を下げた。

晴信の謀略の手がついに越後にまで伸びてきたと聞いては、景虎も黙ってはいられない。

景虎は仕込み杖を投げると、刀身は大木に深々と刺さった。
その陰には、聞き耳を立てる勘助がいた。

景虎は勘助に、外なる敵と認めたと晴信に伝えよ言い残し、直江たちとともに越後への帰路についた。

そして勘助もまた、甲斐への帰路へつく。

【勘助、リツを養女に迎える】
甲斐へ帰還した勘助。
晴信に跡取の件について、回答を求められる。
リツの父、原虎胤も同席である。

勘助はリツを娘として養女とし、いずれ立派な婿と娶わせ、山本家を継いでほしいと原に訴えた。
リツを大事にしてくれるのだなと念を押し、原は承諾した。
晴信は、そうきたかというと、由布、許してやれといい、養女を迎えることを了承した。

【勘助、リツに摩利支天を託す】
そして勘助の屋敷。
太吉、伝兵衛、オクマは、リツの山本家参加をワシらのリツ姫さまじゃ、と歓迎する。
そして勘助は、リツに白木の小箱を差し出す。
中には高野山から持ち帰った摩利支天の小像が収まっていた。
勘助は、山本家の守護神をリツに託した。

リツは嬉しそうである。
だが、勘助の妻となることを望んでいたリツは、養女に求められたことをどう思っているのだろうか。
勘助にとって由布姫の存在が大きすぎる以上、妻となることは無理なのだろうが、養女に求められたのは勘助に認められたからこそであり、リツにとっては最大の幸福ということなのであろうか。

【予告】
次回、晴信は頭をまるめて信玄と名乗るようである。
勘助をはじめ、多くの重臣も頭を丸めるようであり、楽しみである。

風林火山 第41回「姫の死」

  • 2007/10/14(日) 23:57:39

勘助、由布姫と最期の別れ!
晴信、木曽を攻める!
長尾景虎、再び川中島へ出陣!
雪斎死す!

【感想概略】
今回は、由布姫の死を中心としたお話だが、戦国時代におかれた人間の心を考察した上で、史実とフィクションを大胆に融合させた内容であり、おもしろかった。

大河ドラマ「風林火山」では「由布姫」と呼ばれる武田晴信の側室・諏訪御料人。
彼女について史実で分かっていることは、父は諏訪頼重であること、武田勝頼の生母であること、だけである。
名前も生没年も不明、人柄を伝えるエピソードは、何一つ伝わっていない。

また山本勘助も、そのエピソードのほとんどは、江戸時代初期に編纂された「甲陽軍艦」かこれ以後に記された書物に見られるのみ、戦国時代の史料では僅かにその名が確認される程度である。
実のところ、山本勘助について分かっているのは、「山本菅助」という名の、少なくとも使者を勤められるレベルの武士が武田家にいたことだけである。
どんな活躍をしたのか、あるいは人柄などは一切不明である。

が、分からないということは、作劇上のメリットでもある。
エピソードも人柄も分からないからこそ、勘助と由布姫のエピソードは自由に描けるのだが、決して現代人の感覚で好き勝手に描いているのではない。
乱世に翻弄され、過酷な運命を強いられ、思うように生きることの出来ない人間の内面を、十分考察した上で描いているのである。
だからこそおもしろのだと思う。

【晴信、由布姫の病を勘助に伝える】
晴信は、由布姫が血を吐いたことを勘助に伝え、これが初めてではないと言う。
前回、晴信と三条夫人の娘・梅が他国へと嫁がされる時は平然としていた勘助であるが、由布姫の一大事と聞き、大ショックである。
前回雪斎に言ったとおり、勘助の眼中には晴信・由布姫・四郎しかいないようだが、他人がどうでも良い分、この三人への愛情の濃度は尋常ではないらしい。

【勘助、由布姫と対面】
勘助は、諏訪の由布姫に対面。由布姫はさばさばした表情で、嘆いてはいないという。

由布姫にしてみれば、少女の頃から乱世に翻弄され続け、父を自害に追い込まれ、敵将の側室とされ、何年も飼い殺されるなど、苦痛ばかりの人生だったのである。
死によって、ようやくあらゆる苦痛から解放されるような気持ち、ほっとするような気分もあるのだろう。

が、勘助は本気で由布姫に死んでほしくないらしく、涙ぐみ、滅茶苦茶辛そうであった。

由布姫は、生まれ変わったら、どうせ乱世なのだから男に生まれ、戦い、政をしたい、例え勘助や晴信と戦うことになっても、という。そしていたずらっぽく笑って、勘助、私に勝てますかと尋ねた。
さらに、やはり男でも女でもなく水鳥に生まれ、この世のしがらみとは無縁に自由に飛んでいきたいという。

ここら辺、戦国時代は女性にとってあまりに選択肢の少ない時代であり、これに明確に不満を抱く人物として由布姫が描かれており、興味深かった。

【由布姫の木曽攻略作戦】
由布姫は晴信と対面、勘助も同席した。

晴信は、軍事上の判断を由布姫に求めた。
現在、武田家は、越後の長尾家と敵対しているが、信濃の木曽家も武田に帰順していない。
長尾と木曽、どちらを先に攻めればよいか、晴信と勘助は幾度も議論したが、結論が出ないという。

由布姫はこたえる。
木曽を先に攻め、降伏させ、木曽義康の嫡男と晴信の娘を縁組させればよい。そうすれば、木曽は武田の家臣となる、と。

どうも、当主に娘を嫁がせても、それは側室であり単なる人質だが、次期当主である嫡男の正室として娘を送り込むことは、縁組であり、人質ではない、ということらしい。

由布姫の政略結婚案に驚く晴信と勘助である。
そして、由布姫の進言どおり、木曽攻めが進められた。

【伝兵衛と葉月】
一方、長尾家との最前線。
信州旭山城は、真田幸隆及び相木市兵衛などが守っていた。
伝兵衛も、この城にいた。

鉄砲を手入れしている伝兵衛に、真田の忍・葉月が話し掛けるのだが、そなた程度の狙撃手はもういくらでもおり、伝兵衛がいなくても武田家は困らないなどと発言。
むっとする伝兵衛だが、そなたの主人が困るだろうなどと、一応は認めているようである。

さらに葉月、伝兵衛はなぜ結婚しないのかしつこく尋ねる。
伝兵衛は、妹・ミツが殺されて以来、勘助はずっと独身であり、自分ひとりが結婚する訳にはいかないという。ミツを大事に思う勘助に律儀な伝兵衛である。

話をそらすように伝兵衛は、どうやって敵から機密を探り出すのか葉月に尋ねる。
すると、閨をともにして聞き出すという方法を紹介。
これにショックを受ける伝兵衛だが、その反応を葉月はおもしろがり、気持ちいいときは得をした気分などと発言。
とうとう葉月の口を塞ぎ、聞きたくねえずら、とつぶやく純情な伝兵衛である。

女性が身体を使ってスパイ活動を行なうことに対し強い抵抗をかんじる、伝兵衛のような人間が描かれることは、作品の救いにもなっている気がした。
また、葉月は本当にこのことを割り切っているのだろうか。

【勘助、由布姫と今生の別れ】
勘助は、木曽出陣の挨拶のため、由布姫を訪ねた。
由布姫の命令には露ほども背きませぬという勘助。
すると由布姫は、勘助に嫁をとり、跡取を残せと命ずる。
こればかりはと難色を示す勘助に、由布姫は、おのが身を大切にせよ!約束なさい!と強く迫った。
苦しそうに承諾する勘助。
対面の後、勘助と由布姫は、それぞれ泣き崩れた。

【武田軍、木曽へ出兵】
武田軍は木曽攻めに出兵。
まずは戦略上の要地・薮原に砦を築いた。
が、長尾軍が川中島に出兵との急報を受け、木曽攻めは一時中断。
武田軍は川中島に出兵、長尾軍と対陣した。

【第二次川中島合戦】
一方、長尾軍は武田方の旭山城にけん制され、動きが取れない。

景虎は軍議を開くが、野戦では無類の強さを誇る長尾家家臣団の、直江実綱も、柿崎景家も、これには頭を抱えてしまう。
ここで、宇佐美定満は、旭山城の近くに砦を築いて背後からけん制し、旭山城を戦術的に無力化する策を進言する。
これには直江も感心である。
景虎は宇佐美の策を了承、直ちに砦が築かれた。

このため武田軍も攻めあぐねてしまう。
こうして武田・長尾両軍の対陣は、200日、7ヶ月近くに及んだ。

勘助もたまりかね、今川家に仲介を依頼し、旭山城の破却を条件とする景虎との和議を晴信に提案。
晴信は、承諾した。

間もなく、今川家から雪斎が長尾軍本陣の景虎を訪ねた。
はじめは景虎は、和議など論外という態度をとる。
が、血を見るのが嫌いという雪斎の言葉を聞くと、景虎は思うところがあるのか穏やかな表情となり、晴信以外は無駄な血という理由で、旭山城の破却を条件に、和議を承諾した。

和議成立の後、武田本陣を訪ねた雪斎を、晴信は酒食でもてなした。

【雪斎の死】
駿河の臨禅寺。
雪斎は、若武者・松平元信の酌で酒を飲んでいた。
この元信という若武者は、6歳の頃から雪斎の英才教育を受けてきた愛弟子である。
雪斎は、今川家による天下平安の実現を、この元信に託すつもりでいる。
元信に、北条は関東しか見ておらず、武田は私欲のみで動き、ともに恐れるに足らずと三国の形勢を語る雪斎。

が、雪斎は倒れ、いびきをかき始めた。
元信は、雪斎の理想の実現を誓う。
この元信は、間もなく元康と名を改める。後の、徳川家康である。

翌年、雪斎は死去した。

なお、これまで家康は、歴史ドラマでは、今川家での人質時代にいじめられていたように描かれることが多かった。
だが実は、今川家は、弱小大名に過ぎない家康を今川一門に準ずる武将として大事に扱っていた。
だからこそ「今川義元」の一字を与えて「元康」と名乗ることを許し、義元の姪である築山殿と娶わせたのだという。
「風林火山」では、この説が採用されているようで興味深い。

【義信、雪斎の死に衝撃を受ける】
元信は、雪斎の死を今川義元に報告。
同席した寿恵尼はショックを受けるが、義元はそれ以上。
義元は、これまで見たことのないほど気落ちし、手から力が抜け扇を取り落とした。

義元にとって雪斎は、義元出家時代の師であり、家督相続時の花倉の乱での大恩人であり、家督相続後は内政・外交・軍事で今川を支え続けた軍師であった。
恐らく義元の尊敬する数少ない人物の一人だったのではないか。

【由布姫の死】
由布姫に、最期の時が迫っていた。
木曽攻めから帰陣した晴信、四郎、侍女・志摩が、由布姫の枕頭に集まっていた。

ここで晴信は、四郎の元服を見ずしてどうすると由布姫を励まし、元服した四郎の名は「勝頼」とする予定と伝える。
「勝頼」の「頼」の字は、諏訪家の流れを組む一字であり、諏訪家と武田家を結ぶ武将と由布姫に語りかける晴信。

由布姫は、志摩の泣き声が聞こえるが、私は死んだのか…?諏訪湖を眼下に見ておらぬ…とつぶやく。
間もなく、由布姫は死去した。

【勘助、姫の死を知る】
勘助は、木曽家の勢力圏の間近、藪中城にいた。

藪中城の指揮官・秋山信友は、木曽家との停戦後も守りを緩めない。
勘助は秋山を讃える。

が、秋山は厳しい表情で、木曽家は武田家に帰順したが、内部では恭順派と抗戦派が対立しており、抗戦派が攻めてくる可能性があると語る。

顔色を変える勘助だが、すぐに木曽家の抗戦派が攻めてきた。
騒然とする陣中で、勘助は由布姫の死を知る。

ショックのあまりふらふらと歩く勘助は、敵軍の小部隊と遭遇。
襲い掛かる敵兵を次々と斬り伏せる。

鎧の隙間を狙う勘助の剣術が、迫力があって好きである。
なお、最期に斬られた足軽の熱演が印象的であった。

【予告】
次回はまさに夢の対決。勘助VS景虎の真剣勝負らしい。
つまり次回は、景虎の出番やセリフがとても多いのであろう。
楽しみである。

風林火山 第40回「三国同盟」

  • 2007/10/08(月) 19:05:44

晴信、重臣たちに武田・北条・今川の三国同盟計画を発表!
武田方の謀略に乗った北条家、今川領へ侵攻!
今川方、武田の謀略に乗り、三国同盟を締結

【感想概略】
今回は、有名な「三国同盟」の締結のお話である。
勘助や雪斎など軍師による謀略のおもしろさ、晴信・今川義元・北条氏康といった、これまで直接会うことのなかった戦国大名たちが、一堂に会する夢の共演のおもしろさがあった。

そして今回最も印象的だったのは、まだ幼さの残る12歳の長女・梅を、政略結婚で嫁がせる三条夫人である。

政略結婚は、戦国時代には、よくあることだったかもしれない。
が、よくあることだから我慢しろ、というのは、あまりに思いやりがないとおもう。

自分自身も政略結婚の犠牲者である三条夫人は、別れ際に梅へ「どうしても耐えられなくなったら死になさい。私も死にます。あなたを一人にはしません。」と言うのだが、ただ我慢を強いるのではなく、一緒に苦しみ、一緒に死ぬ、決して一人にはしないという誓いは、梅の苦痛を理解しているからこそ言えることに思えた。

【晴信、由布姫を久々に訪問】
前回、長尾軍は信濃に攻め込んだ。
だが今回冒頭、長尾軍は撤退、戦闘は一時終結した。

すると晴信は軍勢を率いて諏訪へ帰陣。
そして久々に、由布姫と対面するのである。

ここで晴信は由布姫に、勘助を結婚させる計画について相談した。
晴信は言う。
妻子がいないと、勘助は死に場所を求めるようになる、だから結婚させたい、リツという娘と結婚させるつもりだと。

だが、由布姫はおもしろくなさそうである。

【勘助、原虎胤に抗議】
勘助は、太吉や伝兵衛とともに、甲府の屋敷へ帰還した。
太吉の女房子供たちが勘助を迎えるが、その中には、勘助を熱烈に慕うリツもいた。

夜。
リツは勘助の酌をするが、勘助は困った様子である。
勘助の結婚しないという意志は、相当に固いようである。

とうとう勘助は、リツの熱烈さに手を焼いた挙句、リツの父・原虎胤に抗議した。
ここで、勘助はついに原の本音を聞き出す。

原は、本心ではリツを勘助の嫁になどしたくないのである。
原は、勘助を老いぼれ呼ばわりするのだが、晴信の命令だから仕方がないという。

【勘助、真田幸隆たちに相談】
勘助は、真田幸隆の屋敷を訪れた。
本題は、戦の話である。
だが勘助、ついつい幸隆たちに、結婚しろという圧力をかけられ困っていると、相談してしまう。

しかし、相談する相手が悪かったようである。
真田幸隆も、忍芽も、同席した相木市兵衛も、みんな勘助の気持ちを分かってはくれない。

それどころか全員で「結婚してしまえ」と勘助に迫る始末である。
挙句の果てに、勘助が考えを変えないと、幸隆は「もう言わん」と言い捨て、相木市兵衛にいたっては「そなたの行く末など気にしては、酒が不味くなる」とまで言い捨てるのであった。

誰にも味方をしてもらえない、孤独な勘助である。

【勘助、三国同盟実現を進言】
勘助は、晴信に進言する。
第一次川中島合戦では、長尾軍は信濃の善光寺を拠点とし、信濃武田領の奥深くまで攻め込んだ。
そこで、善光寺を調略したいと。
晴信は了承した。

ここで勘助は、自分を強引に結婚させることはやめてほしいと言おうとする。
が、なかなか言えない恥ずかしがり屋(?)の勘助である。

その時、春日虎綱より報告が入った。
何と、長尾景虎が上洛するというのである。

これに晴信は驚いた。
隣国と軍事的緊張状態にあるこの時期に、国元を留守にするのかと。

すると勘助は晴信に、景虎とはそういう武将だと説明する。
さらに勘助は晴信に進言する。
景虎不在の間に、以前から構想していた武田・今川・北条の三国同盟を結び、後顧の憂いを断ち、全力で越後と戦える態勢をつくってしまおうと。

晴信は、了承した。
なお勘助は、三国同盟に熱中するあまり、自分の結婚についてすっかり忘れてしまうのであった。

【晴信、三国同盟計画を発動】
晴信は、重臣たちを召集し、評定を開いた。
議題は、三国同盟である。
これに重臣たちは、ちょっと驚いた様子である。

飯富虎昌は言う。
仇敵同士の今川と北条が和睦するものだろうかと。
すると晴信、今川に、北条との和睦を得と思わせれば良いと言う。
そして具体的な説明を、勘助に任せた。

ここで勘助は言う。
いま、今川義元は、三河で織田信長と戦っている。
今川の主たる敵は織田なのである。
ここで、北条が今川領へ侵攻したらどうなるか。
今川が、後顧の憂いなく織田と戦いたければ、北条と和睦するしかない。
これを武田が取り持つのだと。

重臣たちも、長尾景虎と後顧の憂いなく戦うための三国同盟なのだと言われれば、反対する理由はなかった。

そして晴信は重臣たちに、今川の味方を装っての出兵を命じ、馬場信春には引き続き信濃を守護することを命じた。
さらに嫡男・義信には、今川の姫である奥方にも、三国同盟は秘密と念を押すのである。

ちょっと驚きながら従う義信である。
既に小さな不和が、晴信と義信の間におこりつつあるようで、興味深い。

【今川義元、怒り狂う】
さて三河の今川本陣では、今川義元が怒り狂っていた。
今川領へ北条軍侵攻との報告を、受けたためである。
織田との戦を邪魔された義元の、ちょっと危ない怒りの表情が好きだ。

一方、雪斎は、なぜ北条がこの時期に出兵したのかと怪しむ。
同じ出来事に対して、義元は怒り、雪斎は分析するという、この対比がおもしろい。

【今川家の最高首脳会議】
義元は急遽、駿河の今川屋形へ帰還した。
まずは義元、留守を守っていた嫡男・氏真を怒鳴りつけた。

すると氏真、北条とは和議があるから武力攻撃をしなかったのだという。
この氏真、よほど人が良いらしい。
なお、この場合の「和議」とは、不可侵条約ではなく、停戦条約にあたるものだろうか。

この氏真の発言に義元は激怒、さらに怒鳴りつけまくる。
すると寿恵尼、やんわりと義元をたしなめた。
そして寿恵尼は、義元に言う。
冷静になって対策を考えようと。
危機にあっても冷静さを失わない寿恵尼は、相変わらず頼もしくて格好良い。

だが、さすがの寿恵尼も、今回の北条の出兵を、武田の謀略とは思わなかった。
そして寿恵尼、武田の力を借りてでも北条と戦うという案を提示するのである。

ここで雪斎は、今回の出来事は、武田の謀略の可能性が高いことを指摘する。
さらに雪斎は義元に言う。
もはやこの謀略を覆すことは不可能であり、むしろ逆に利用した方が得策だと。

だが義元は、武田家に踊らされるのがよほど不愉快なのか、ますます怒り狂う。
すると雪斎は、したたかになりなされと言い、義元をたしなめるのである。

雪斎は言う。
後顧の憂いを断って戦い、天下をとり、義元が将軍となれば、武田も北条も単なる家来だと。

そして寿恵尼の取り成しもあり、氏真と北条氏康の娘との婚儀を、義元はしぶしぶ了承するのである。

ここで氏真、「私にも関係のある話ですか?」と尋ねた。
思わず「あほう!」と叫ぶ寿恵尼が、ちょっと可愛かった。

よく見ると、義元はがっくりと首をうな垂れている。
だが義元は、息子を怒鳴る前に、自分の教育が乱世の次期国主を育成するものとして適切であったか反省すべきかもしれない

【雪斎、三国同盟を取りまとめる】
さっそく雪斎は、北条軍と武田軍が睨み合う駿河の河東地域へ出張した。
そして同盟成立のための外交交渉を開始するのである。

まずは雪斎、武田軍本陣を訪ね、晴信と対面した。
この時の雪斎の顔には「武田の企みは知っているが今回は乗ってやるぞ」と書いてあるようでおもしろい。

続いて雪斎は、北条軍本陣に、氏康を訪ねた。
そして雪斎は、中国古典「荘子」の言葉を引用して、三国の相互不可侵条約の締結を提案するのである。
雪斎も氏康も、難しい例えを用いながら会話するのだが、氏康は三国同盟締結を了承したようである。

【善得寺の会盟】
間もなく、駿河国・富士郡の善得寺に、晴信・義元・氏康が集合した。

義元は相変わらずの毒舌。
晴信は隠れ毒舌。
そしてあまり余計な発言をしない氏康。
三人の対比がおもしろかった。

そして、三国それぞれの間に、相互不可侵及び軍事同盟を締結するのである。

晴信は、我々よりしたたかな者が出てこないことを願うばかりという。
これは後の織田信長の台頭を暗示させておもしろい。

そして同盟の証として、晴信の娘を北条に嫁がせること、氏康の娘を今川に嫁がせることが取り決められた。
だが、あどけない娘を親元から引き離すことに、戦国大名たちは実に淡々としている。

戦国大名たちは、政略の道具にされる娘の不幸を、気の毒とは思うが、まあ仕方ないくらいとしか、思っていないのではないか。
男性である戦国大名には、政略結婚させられる女性の苦痛は、なかなか理解できないのかもしれない。

ここら辺、三条夫人とは大分異なっており、興味深い。

【雪斎、勘助に茶を振舞う】
三国首脳会談の裏では、勘助が雪斎から茶を振舞われていた。
この二人、リラックスして茶を楽しもうなどとは微塵も思わぬらしい。
勘助と雪斎のやりとりは、ほとんど言葉の刃の応酬であった。

まずは雪斎、謙虚にならねばなりませんぞ、などと勘助にお説教っぽいことを言う。
ところが勘助、大人しく雪斎のアドバイスを受け入れる気などないようで、雪斎の方こそ驕りがあるのではないかとやり返すのである。

何のために戦うのか問われた雪斎は、天下平安のため、とこたえる。
これが雪斎の、偽りのない本心であろうか。
そして勘助は、自分が戦うのは、晴信・由布姫・四郎のためだけ、と明かす。

これを聞いた雪斎、無償の慈愛のつもりかもしれないが、御仏に仕えている訳でもなく、身内もいない勘助に、無償の慈愛が分かるとは思えない。それは家来としての妄執ではないのかと指摘する。

勘助は、何も言い返さない。

【萩野、飯富の発言に怒る】
三条夫人は、12歳の長女・梅を、北条へ嫁がせることに心を痛めていた。
この頃の年齢は、生まれた歳を1歳と数える。
現代の年齢では、梅は11歳くらい、まだ幼さの残る年頃であろう。
三条夫人は、大名の娘とは、こんなに可哀想な目にあうものなのかとつぶやき、苦しそうな様子である。

飯富虎昌は、三条夫人を何とか慰めようとして言う。
北条の若君は英明と聞きます、むしろ今川の若君より良かったかもしれません、今川氏真は公家のような武将ですと。

これを聞いた萩野は、公家を馬鹿にするなと飯富を叱り付けるのは、おかしかった。
戦国時代を描いた作品では、公家風の武将が馬鹿にされる描写がたまにあるが、公家の側がこれに不快感を示すという描写は、珍しい気がする。

【梅、北条家へ嫁ぐ】
梅が嫁ぐ日。
北条領へ出発する梅を見送るため、重臣たちが居並び、晴信と三条夫人が列席する。
晴信は神妙、三条夫人は辛そうである。
ちなみに勘助は薄く笑っているように見えたのは気のせいか。

梅は、作法どおり、手をついて頭を下げた。
これが、父母への最後の別れの挨拶なのである。
固く口を結び、一切の感情を押し殺し、暗い目をした梅は、痛々しかった。

本来なら、父母は黙って見送るのが作法なのであろう。
だが三条夫人は、梅を抱きしめた。

三条夫人もまた、少女の頃、政略により、故郷から見知らぬ土地へ、見知らぬ男のもとへ嫁いで来た人間である。
本心では、梅を他国へなど嫁がせたくはないのだろう。
だが三条夫人に、梅を守る力はない。

一方、梅は、抱きしめられても、腕を棒のように伸ばしたままである。
梅が三条夫人に心を閉ざすのは、父も母も、恐らく永遠の別れだというのに、普段とさほど変わらないのは、自分をどうでもよい娘と思っているのではという絶望感を抱き、母をにわかに信じられないためであろうか。

そんな梅に、三条夫人は言う。
母はあなたの苦しみを、誰よりも分かっています。
昨夜は泣いて眠れなかったのでしょう?

晴信は、三条夫人へ、梅から離れるよう命令する。
ついには、「それでも母親か!見苦しいぞ!」と怒鳴りつけた。

国主としては、晴信の態度は当然なのかもしれない。
だが、梅の気持ち、三条夫人の気持ちがいまいち理解できていない様子である。

なおも梅を離そうとしない三条夫人を、重臣たちの中で唯一人、飯富虎昌がかばう。
この時、何度も「お見逃し下さりませ」と晴信に訴える飯富は、誰よりも立派に見えた。

三条夫人は、梅を励まして言う。
どんなことがあっても耐えなさい。
ここにいる者誰一人、あなたの苦労を望んではいません。
それを信じて耐えなさい。

だが、本心ではこんなことを強いたくはないのだろう。

そして、三条夫人は言う。
どうしても耐えられない時は、死になさい。
私も死にます。
決してあなたを一人にはしません。

これが三条夫人の本心なのだろう。

政略結婚させられる女性の苦痛を描くことは、政略結婚を無批判に描写するより、はるかに良心的な描き方に思えた。

なお勘助は、三条夫人を見て、先日の雪斎に指摘された無償の慈愛について改めて思い起こし、ここまで己をさらけ出すことは自分には出来ない、などという感想を抱くのであった。

一方、諏訪で由布姫は、咳き込み、血を吐いていた。

【予告】
今度のお話で、由布姫が退場するようである。
合戦もあるようなので、期待したい。

風林火山 第39回「川中島!龍虎激突」

  • 2007/09/30(日) 23:58:42

長尾軍、信濃へ侵攻!狙うは武田晴信の首一つ!
勘助VS宇佐美の知恵比べ、勝敗は容易につかず!
死を決した諸角虎定、軍令に背き撤退せず!
武田軍、諸角救出のため長尾軍を夜襲!

【感想概略】
今回は、ついに長尾景虎と武田晴信の直接対決である。
全編を費やして第1次川中島合戦を描き、常に合戦か軍議であり、勘助と宇佐美の知恵比べと長尾武田両軍それぞれの武将の硬派さ全開で、おもしろかった。

武田家も長尾家も、武将たちはみな普段より活き活きとしていた。
武田家では、飯富虎昌は最近あまり元気がないが、今回は楽しそうであった。

「風林火山」は武田家を描く物語のためか、今回の長尾軍は降りかかってきた災いに近い扱いであり、主役は「長尾襲来」という災いに襲われた諸角虎定と武田信繁だったような気がするのだが、この二人の絆が美しいお話であった。

【長尾軍、出陣】
長尾軍の信濃出陣の日。
長尾家の居城・春日山城の評定の間には、長尾景虎と重臣たちが鎧兜で完全武装し、集結していた。

ここで景虎は、長尾軍の戦闘の方針、大義名分を朗々と語る。

戦争の天才・景虎の強さは神懸かっている。
いつも評定の時はどこか白けた表情の長尾家重臣たちだが、この時ばかりは、景虎を見る目は尊崇のまなざしである。

武闘派ぞろいの長尾家家臣団。
直江実綱も、柿崎景家も、本庄も、大熊も、戦装束が似合いまくりであった。

【勘助の作戦】
長尾軍は信濃南部へ侵攻、武田方の諸城を次々と攻め落とす。
一方、勘助は、長尾軍を信濃の奥深くに引きずり込んで孤立させ、撃破する作戦を立てた。

勘助は、長尾軍の次の狙いは坂木と予測する。
坂木はかつての村上義清の本拠地である。
破竹の勢いの長尾軍は、勢いをかって坂木を狙うのは当然と思われた。
勘助は、坂木に長尾軍が攻め入ったところを包囲殲滅する作戦を立て、軍勢を配置した。

【宇佐美、勘助の策を見破る】
ところが長尾軍の宇佐美定満は、勘助の作戦を見抜き、坂木への進軍に反対する。

柿崎景家は、今回の戦は村上義清の援軍であり、坂木を奪還せねば意味は無いのでは、と難色を示すが、宇佐美は、負ければもっと意味がないと主張。
柿崎は不愉快そうな顔を見せるが、宇佐美の策に道理を認め、これ以上反対しなかった。

直江は、いっそ信濃を長尾家が切り取ってしまい、村上に知行地を与えてはどうかと進言する。
戦国武人としては、当然の発想である。

が、景虎はこれを退けて言う。
「盗人退治に来て、盗人になれと申すか。天道が許さん。」
またか~という表情の直江である。

宇佐美は、敵軍の待ち構える坂木ではなく、深志へ向けて攻め進む作戦を進言する。
深志は武田の拠点であり、ここを攻められれば晴信自ら軍勢を率いて来ざるを得ない

景虎は宇佐美の策を採用した。

【勘助、策を立て直す】
坂木ではなく深志方面へ進撃する長尾軍の予想外の動きに、勘助はぶ然、晴信は苦笑いである。
晴信は、深志城付近の守りを固めるため、刈谷原城の守備を諸角虎定に命じた。

だが、長尾軍は恐ろしく強く、その進撃スピードは武田方の予想を超えていた。
「何という強さじゃ…」と信繁も思わずつぶやく精強さである。

長尾軍は、諸角の守る刈谷原城に迫ろうとしていた。

勘助は、刈谷原城の兵を深志城に撤退させる策を進言する。
各城に配置した兵が正面衝突で各個撃破されることを回避し、同時に兵力を集中させるためであった。

晴信は、深志城手前の刈谷原城を守る諸角虎定に、撤退を命ずる。

撤退命令発令後、晴信は勘助に言う。
長尾との戦が最後の戦などと思うな、そなたには長生きしてもらわねばならぬ、と。

これは第4次川中島合戦の伏線であろうか。

【伝兵衛の問題発言】
正面衝突を避ける作戦のため、本陣塩田城の太吉や伝兵衛、太吉の息子・茂吉はヒマそうである。

くつろぎモードの茂吉は、伝兵衛に聞く。
長尾景虎に会ったそうだが、景虎はどんな顔をしているのか。
目を輝かせて答えを待つ茂吉。

伝兵衛は景虎を思い出す。
美形の一言の景虎なのだが…。

そして伝兵衛は、最も格好良いつもりの表情で、言った。
「ワシにそっくりじゃ」

驚愕に目がまん丸の茂吉。
周囲の雑兵たちも、思わず伝兵衛を凝視した。
皆、驚きのあまり声もない。

「…それで女子が寄りつかねえだか…」と、何とか声を絞り出す太吉
「そうじゃ」と伝兵衛。

どうやら景虎は、武田家中ではもっぱら「女性に縁が無い」という点が有名らしい。
驚きながらも納得の様子の茂吉と太吉、そして他の雑兵たちである。

縁が無いのではなく、縁を断ち切っているのだ!側室コレクターより遥かに立派だ!と言いたいところである。
ここら辺はコミカルでおもしろかった。

【景虎、刈谷原城へ進軍を命ずる】
長尾景虎の元へ、武田軍が刈谷原城から撤退との報告が入った。
宇佐美は、武田方は、長尾軍の目的を見抜いていると言い、今回は撤退することを景虎へ進言する。

ところが、武田軍が再び刈谷原城へ篭ったとの報告が入る。
これを聞いた景虎、刈谷原城への進軍を命ずるが、とても嬉しそうである。

【諸角虎定、軍令に背き篭城】
諸角虎定は晴信の軍令に背き、刈谷原城に篭城した。

前回、諸角は馬場信春から「生き長らえることのみを忠義と思う武将」などと無礼な言葉をぶつけられていたが、これが篭城の直接の理由であろう。

諸角は、命を惜しまず戦う姿を武田全軍に示すつもりであった。
もっとも、諸角の玉砕戦に付き合わされる配下の将兵たちは、きっと迷惑なことだろう。

諸角篭城の知らせに信繁は動揺、晴信に援軍の派遣を懇願する。
普段は晴信を「お屋形様さま」と呼ぶ信繁だが、この時ばかりは「兄上!」と呼んでいた。諸角を案ずる余り、すっかり動転してしまったというところだろうか。

また、深志城を守る馬場信春は、あのようなことを真に受けて、などと発言していた。
馬場は、諸角が玉砕戦を選ぶとは思わなかったらしい。
このまま諸角が討死でもしたら寝覚めの悪そうな馬場である。

【諸角救出】
晴信は、信繁に援軍を率いて諸角援護に出陣することを命ずる。
ここで勘助は、諸角救出の策を立てる。
それは長尾軍に夜襲を敢行し、武田軍に包囲されつつあると思わせて撤退に追い込む、というものだった。

夜襲を受けた長尾軍では、宇佐美は敵軍に挟撃される前に撤退することを進言。
長尾軍は、撤退を開始した。

【信繁、諸角を庇う】
長尾軍撤退の報告を受けた諸角の陣に、信繁がやってきた。
信繁は、なぜ軍令に背いたと諸角を殴りつけると、晴信の元へ連行した。

晴信が諸角の元を訪れると、信繁も頭を下げて控えていた。
信繁は、晴信に諸角を許すことを請うた。

が、諸角は信繁の助命嘆願を断り、晴信に言う。
自分は、いつの間にか敵と戦い知行を増やしたいとすら思わなくなってしまった。
こうなったら討死するくらいしか、武田家に役立つ方法はない、と。

が、晴信は諸角が役に立つかどうかは自分が決めることだと一喝。
そして信繁も馬場信春も勘助も諸角を案じ、死なせぬために必死だったことを明かし、それが生き恥と申すなら、これからも大いに生きて生き恥をさらせ、それが儂の成敗じゃ、と笑うのであった。

信繁と諸角の美しい絆であった。

【長尾軍、武田軍と対陣】
越後へ撤退する長尾軍であったが、突如軍を取って返す。
晴信は武田軍を率いて進軍。
両軍は犀川をはさんで布陣。
どちらも鉄壁の構えであり、先に攻撃した方が敗北する。

景虎は、単騎川岸へ走り、向こう岸の武田軍を眺めた。
別れの挨拶だという。

そして長尾軍は、越後へ撤退した。

【予告】
次回は、武田、今川、北条が、三国同盟を結ぶお話のようである。
謀将たちの政略劇を期待したい。

あと、北条氏康は、竜若丸に受けた眉間の傷が消えていないようだが、一生あのままだろうか。

風林火山 第38回「村上討伐」

  • 2007/09/23(日) 23:58:53

武田家嫡男太郎、今川の姫と婚礼!
村上義清、武田軍に敗北、越後へ亡命!
義清、長尾景虎と対面!

【感想概略】
今回は、武田と村上の戦いに、ひとまず決着がつくお話である。
久々に鎧武者や騎馬武者の集団が登場したのだが、まずこれだけで視覚的に楽しめた。

そして、武田の調略による村上方の切り崩し、越後へ亡命した村上への長尾景虎の助力など、合戦よりは政略劇がより多く描かれていたが、知勇兼備の武将たちによる知恵比べのおもしろさがあった。

さらに、遂に村上義清が長尾景虎と対面。
いよいよ強者が集結していくおもしろさがあり、これからはじまる長尾景虎と武田晴信との戦いに期待が高まるというものである。

【晴信、村上討伐を決定】
晴信は評定を開いた。
議題は、村上討伐である。

武田は村上に、使僧を送って書状を渡し、和睦を求めたが、拒絶された。
このため村上を討伐するという晴信だが、和睦の内容は、村上の降伏同然のものだったのかもしれない。

【飯富虎昌、村上討伐の時期を進言】
評定の席で、武田家嫡男・太郎の傅役でもある飯富虎昌は、太郎と今川の姫の婚儀は、村上討伐の後にして欲しいと訴える。

晴信に何故かと問われ、飯富は意を決したように晴信に問う。
北条家とも和睦することを考えているのではないかと。
あっさり肯定する晴信。

飯富は続ける。
もし、北条との和睦に今川が異を唱え、今川との婚儀が破棄となれば、太郎の立場はどうなるのか。
武田が信濃を併合して強国となってから、今川と婚儀を行なうことを進言する飯富。

一方、勘助は、村上討伐は婚礼の後が良いと主張。
今川との政略結婚をしてしまえば、信濃の地侍たちの多くは、今川と同盟する武田を強大と思い、武田になびくだろうというのである。

晴信は勘助の意見を採用するが、太郎を大事に思う飯富をねぎらう。
そして、太郎のことは十分考慮して取り計らうと、安心させるように飯富へ言うのだった。

【馬場信春、タカ派発言】
評定の席で、勘助は調略により村上義清を孤立させる作戦計画を確認する。
家臣たちに、異論はないように思われた。

だがここで、馬場信春が晴信に問うた。
今回も戦いでも、調略のみを用い、義清の首をとらぬおつもりですか、と。
馬場は、村上を力で滅ぼさねば、息の根を止められないと強硬な発言である。

晴信は馬場の問いへの明言を避け、散会とした。

【飯富、勘助に念を押す】
評定の後、飯富は、今川とは戦うことはないこと、太郎が武田家の跡取であることを勘助に念押しする。

ここら辺、後の太郎廃嫡以前から、武田家中は、晴信の派閥と太郎の派閥に分裂しつつあるように描かれ、興味深い。

【タカ派・馬場信春VS老将・諸角虎定】
評定の後、諸角虎定は、無駄な血を流さずに勝てればそれに越したことはなかろうと、馬場をやんわりとたしなめる。
戦場を往来すること60数年の諸角の言葉には、重みがある。

が、馬場信春は諸角虎定を相手に、不満をぶちまける。

村上の降伏を許せばその所領は安堵されることとなり、武田家家臣の知行は一向に増えない。
晴信は、調略で活躍する真田幸隆へは加増するが、譜代の家臣は加増がほとんどない。
これでは、武田家中は、戦わずに生き延びることを良しとするようになり、いざという時、武田家のため、命をかけて戦う者はいなくなる。

さらになだめる諸角虎定を、ただ生き長らえることを忠義と思う武将よばわりし、討死した板垣信方や甘利虎泰が不憫という馬場。

これには諸角も腹が立ったようだが、馬場は無礼なことを言いまくった挙句、御免、と一方的に席を立つのだった。
馬場は諸角に恨みでもあるのか?

しかし、上田原の戦いでは、調略を用いずに村上義清と力攻めで戦い、その結果板垣と甘利が討死し、武田軍は大敗している。
そして板垣は、無駄な血を流すことを極力避けようとしていた。
そのことを、馬場はどう思っているのだろうか。

【武田太郎と綾姫の婚礼】
太郎と今川義元の娘・綾姫との婚礼の晩。
勘助は浮かない顔で、静まりかえった屋敷へ帰宅した。
いずれ太郎を追い落とし、四郎に家督を継がせるつもりなので、心が痛むのであろうか。

物思いにふける勘助は、主人公らしく格好良い。
そこへ、すっかり酔っ払った伝兵衛、太吉、太吉の息子たちが登場。
勘助の苦悩など完全無視して、無理矢理酒を勧めるのであった。

さらにそこへ原虎胤の娘・リツが登場。
勘助不在の時に度々屋敷を訪れ、留守を預かる太吉の女房・おくまとはすっかり顔見知り。
リツを何の疑問も無く歓迎するおくまである。

リツは屋敷にずんずんと上がりこみ、勘助に無理矢理酌をし、太吉たちに、「祝いの酒じゃ、歌でも唄って差し上げよ」と命じ、ほとんど人間音楽プレーヤー扱いである。

ここら辺は、勘助が真面目になればなる程おかしかった。

【関東管領・上杉憲政、長尾景虎と再び対面】
越後に逃れた関東管領・上杉憲政は、長尾景虎から府中に館を与えられた。
が、遊女たちを呼んで遊んでいた。

他人の世話になりながら遊興に耽る、ますます困った殿様の憲政である。
討死した嫡男・竜若丸に申し訳ないとは思わないらしい。

そんな憲政の館を、景虎と直江実綱が訪れる。
景虎が来たと聞くと、ちょっと煙たそうな憲政である。

憲政は、いつ関東へ出兵し、北条氏康を成敗するのか、景虎へ尋ねる。

すると、まずは上洛をするという景虎。
室町幕府から越後国主と認められた礼、そして朝廷から従五位下弾正少弼に叙任された礼を述べるためだと言う。

戦国時代に、幕府や朝廷から位を与えられたからといって、わざわざ都へ礼に行く武将は珍しい。
憲政は、景虎の律儀さを笑う。

関東への出兵は上洛の後という景虎。
「それまでは存分にお遊び、いえ、存分におくつろぎ下さい。」と直江実綱。
くつろいでなど…、と渋い顔の憲政。

が、景虎は朝廷から、秩序の敵を退治する許可を得るという。
これには憲政も驚く。

どの国どの時代であっても、大義名分のない戦争は単なる乱暴狼藉であり、人々の支持を得ることは出来ない。現代では、国連の支持を得られない戦争は、国際的に非難され、国際的に孤立する。

そしてこの戦国時代、朝廷から賊徒征伐の許可を得ての戦いこそが、大義名分のある義の戦いなのである。勅許を得ての戦いならば、家臣領民の支持を得られ、他国も大義名分の所在に異を唱えることは出来ない。

朝廷や幕府といった旧来の権威を尊重しながらも最大限利用する、クールな景虎である。

【武田軍、信濃へ出兵】
翌年、信濃への武田軍出兵の準備に忙しい甲斐府中。

春日虎綱は、勘助を呼び止めた。
そして、村上を逃すことが上策と思うが勘助はどう思うかと問う春日。
村上が生きていれば、越後の長尾景虎はあくまで村上の援軍であり、信濃を領地とすることはない、という理由である。

これは勘助も同意見であった。
同時に、春日の知恵と、晴信の人を見る目に感嘆する勘助である。

そして武田軍は信濃へ出兵。
まずは真田幸隆と相木市兵衛の調略により、村上方の武将の多くが武田方につき、村上義清は孤立した。

軍議の後、勘助は晴信と二人きりで密談、村上を見逃す方針を確認し、その手筈を相談する。
ここら辺は、勘助が策を献ずるまさに軍師に見えた。

【村上方、越後脱出作戦を決定】
一方、追い詰められた村上義清は、軍議を開いていた。
軍議の席には、平蔵の姿も見えた。
百姓の少年が、出世したものである。

義清は、味方を調略で切り崩され、もはやまともな戦にはならないことを認め、越後へ落ち延びること決定。
そして、自らは敵中突破し、妻女たちは安全なルートを通って越後へ逃れる脱出作戦を命ずる。

なお軍議の前、平蔵はヒサとしばしの別れの言葉を交わしていた。
この時、ヒサは結婚しても平蔵を呼び捨てなのがおもしろい。

【村上義清、越後へ脱出】
村上義清は、脱出作戦を決行する。
義清と嫡男・国清たちは、千曲川の浅瀬を渡河。

この方面を担当する春日虎綱は、これを作戦上見逃した。
激戦を覚悟していた義清たちであったが、あっさりと越後へ落ち延びた。

【村上の妻・玉ノ井、平民に頭を下げる】
一方、義清の妻・玉ノ井は、侍女たちを率い、千曲川の深みを舟で渡ろうとする。
この時、護衛の村上兵たちは、地元の船頭を脅し、無理矢理舟を出させようとする。
恐怖に震え、嫌がる船頭である。

が、玉ノ井は船頭に頭を下げ、せめてもの礼にと笄を渡し、舟を出してくれるよう頼む。
身分制社会であるこの時代、領主の妻が平民に頭を下げるなど、考えられないことである。
領主の奥方に頭を下げられ、恐縮する船頭であった。

たとえ相手が下位身分であっても、人にものを頼む以上は礼儀を尽くす、玉ノ井は立派に思えた。

【玉ノ井、自害】
ところが、馬場信春が手勢を率い、村上義清が脱出をはかるなら逃亡ルートはここだろうと、待ち伏せしていた。
義清を討ち取る気全開の馬場である。

馬場は、まずは弓を射掛けさせて村上兵を討ち取り、続いて突撃を命じた。
殺到する馬場の軍兵を見て、玉ノ井は自害した。

続いて侍女たちも自害、ヒサも自害しようとするが、寸前で馬場に止められた。
馬場はかつて諏訪頼重との戦いの際、ヒサの父・矢崎十吾郎の元へ潜入したことがあり、ヒサとは顔見知りであった。

ヒサを見逃す馬場だが、ヒサの目から終始敵意が消えることはなく、馬場の顔に唾を吐きかけ、去った。
最近はタカ派発言の多かった馬場だが、今回の出来事は馬場の心に何を残したのだろうか。

【村上義清、長尾景虎と対面】
越後へ逃れた村上義清は、長尾景虎と対面する。
武田の勢力圏は、越後春日山城の間近に迫っていた。
宇佐美定満も、危機感を示す。

義清は、兵をお貸しくだされと景虎へ頭を下げる。

義のために戦う景虎だが、義を実現する勝算が立ってこそ兵を動かす冷静さを決して失わない。
だから、関東管領の関東出兵要請には、なかなか首を縦に振らないのである。
が、戦機と見れば、景虎の決断は早い。

景虎は、義清の援軍要請を即決で了承。そして武闘派・柿崎と大熊に、信濃への出陣を命じた。

ここら辺、景虎の決断の早さは格好良かった。

【ヒサ、越後で平蔵と再開】
ヒサも越後へたどり着き、平蔵と再開した。

戦乱に翻弄され、故郷を追われ、遂に遠く越後まで流れ着いたヒサと平蔵。
平蔵は、すっかり武田への怨みに凝り固まっているが、ヒサはどう思っているのだろう。

武田家の勢力拡大は多くの敗者の所領と命を奪ってのものであり、ヒサと平蔵は、乱世の犠牲者の象徴の一つと言える。
「風林火山」は、戦国時代を武田家の単なる高度成長物語とは描いておらず、これが魅力の一つである。

【長尾景虎、武田晴信との直接対決を決意】
景虎の援軍を得た村上義清は、信濃へ攻め込み、たちまち旧領を奪い返す。
が、武田の反撃により、わずか3ヶ月で撤退に追い込まれてしまう。

ついに景虎は、晴信との直接対決を決意する。

【予告】
次回はいよいよ、景虎と晴信の直接対決の幕開けである。
これが「風林火山」最大の楽しみだったのである。

川中島の戦いは、1553~64年に渡り、計5回に及ぶという。
次回は、第一次合戦である。

実は未だ軍陣も合戦も描かれたことの無い武闘派揃いの長尾家臣団の活躍に、そして合戦描写に期待したい。

風林火山 第37回「母の遺言」

  • 2007/09/16(日) 23:59:02

大井夫人、勘助と対面し、晴信の行く末を託す!
関東管領・上杉憲政、北条氏康の軍勢に敗北、越後へ逃亡!
長尾景虎、上杉憲政と対面!
勘助、今川家と武田家の政略結婚を北条家に通知、同時に北条との和睦を打診!
太郎の傅役・飯富虎昌、武田と今川が対立した場合の太郎の立場を案ずる!
大井夫人、死去!

【感想概略】
前回は戦国女性たちのお話であったが、今回は武将たちの生き様のお話であった。
武将たちそれぞれの格好良い瞬間が描かれ、見せ場が多く、おもしろかった。

そして大井夫人のお話でもあり、現代とは異なる乱世を生きた人間が最期に至る境地の一つが描かれ、興味深かった。

【勘助、初めて大井夫人と対面】
冒頭、大井夫人は、勘助と初めて対面した。
そして大井夫人は、由布姫は、諏訪にいてこそ武田家との縁を大切に思ってくれる、四郎も同じといい、晴信の行く末を勘助に託した。
これは、四郎に家督を継がせるために武田家中に乱を起こさぬように、勘助に釘を刺していたのだろうか。

【大井夫人、三条夫人に遺言】
ある日、大井夫人は、三条夫人と談笑していた。
大井夫人は、太郎と今川家の姫の婚礼が決まったことを祝福する。
そして「これで武田家と今川家が永劫安泰であればよいのう。そなたの苦労も報われるというもの」と三条夫人をいたわった。

「お北様の苦労に比べれば」という三条夫人に、大井夫人はいう。

「私は、苦労などしておらぬ。
苦労など、忘れた。
私には、栄誉も苦難も、この世への執着も、時の移ろいさえもない。
何も無くなって、ようやく心の平安を得たのです。
いずれそなたにも、左様な時が来よう」

そして「それまで、苦労など、修行と思えばよい」といたずらっぽく三条夫人にささやき、「これがそなたに残せる、唯一の言葉です。どうか心を強くもって、晴信と生きてくだされ」という。

涙する三条夫人に、大井夫人は「泣けるだけ、そなたは若い」と微笑んだ。

【関東管領・上杉憲政、北条家に追われ越後へ逃れる】
上州では、関東管領・上杉憲政の勢力と北条氏康の軍勢が争っていた。
だが関東管領は劣勢となり、もはや敗北を覆すのは不可能であった。

関東管領の重臣・長野業政は、憲政に進言する。
もはや負けは必至であり、越後へ落ち延び再起を期するべきであると。
そして業政は上州の自領に残り、北条への抵抗を続ける覚悟だと。

上杉憲政は、業政のこの進言を受け入れた。
そして、「これまで苦労をかけた」と業政に礼を言うのだった。

これまで困った殿様だった憲政だが、この瞬間は格好良かった。
長野業政はいつもながら知友兼備の武将で格好良く、美しい主従の絆であった。

間もなく、上杉憲政は越後へ落ち延びた。
一方、憲政の嫡男・竜若丸は、家臣の進言により、上州へとどまるのである。

【真田幸隆たち、長野業政を案ずる】
甲斐の真田幸隆の屋敷に、幸隆と妻・忍芽、嫡男・信綱、そして同輩・相木市兵衛が集まった。
そこで真田家に仕える忍・葉月は、幸隆たちに、上州の情勢について、関東管領が越後に逃れた後も、長野業政が上州に留まっていることを報告する。

幸隆たちは、この長野業政のことを心配していた。
かつて幸隆親子は、武田家に敗れ流浪していた頃、長野業政の世話になった。
そして最近も、海野家再興の際に、業政の力を借りている。
つまり業政は、真田家にとって大恩人なのである。

だが、武田は北条と和睦しようとしており、長野に味方して北条と敵対する訳にはいかない。
なかなか妙案の浮かばない幸隆たちである。

【勘助、三国同盟を打診】
勘助は、小田原城の北条氏康を訪れた。
氏康は小山田信有の死について触れ、「気の毒なことであったのう」とねぎらう。
他家の陪臣の死であっても、気配りを忘れない氏康である。

勘助は、今川家と武田家の政略結婚を通知した。
同時に、武田と北条の和睦を打診する。

笑う北条家重臣・清水吉政だが、勘助は越後の長尾景虎を新たな脅威と説き、景虎に備えるための同盟の必要を訴えた。

景虎の名を聞き、思案の氏康である。

【長尾景虎、関東管領・上杉憲政と対面】
越後に逃れた上杉憲政は、長尾景虎と対面した。

義を重んずる景虎は、春日山城に上杉憲政を呼びつけるのではなく、府中の屋敷に滞在する憲政の元を自ら訪れた。
そして景虎主従は下座につき、上座の上杉憲政に対し礼をとるのである。

上杉憲政は、関東管領に対する敬意のかんじられる景虎主従の態度に、満足そうである。
そして憲政、北条氏康を討つため、嫡男・竜若丸を救うため、すぐにでも出陣することを景虎に求めた。

このとき直江実綱と柿崎景家が、景虎の後ろから心配そうに見つめているのがおもしろい。
多分、すぐ出兵します、などと景虎が言い出すことを心配していたのだろう。

そもそも、直江にとっても、柿崎にとっても、関東管領などというものは、あくまで越後での勢力拡大に利用すべき権威なのである。
上州での戦いなどという、長尾家臣団にとって何の得にもならない出兵など、問題外なのだろう。
直江と柿崎は、会話に割って入り、「すぐの出陣はお控えくだされ」と訴えた。

だが景虎には、直ちに上州へ出陣する気はなさそうである。
まずは景虎、なぜ憲政が上州に残らなかったのか、なぜ竜若丸を落ち延びさせなかったかについてを、やんわりと批判した。
すると憲政、景虎の指摘に怒り出し、「嫡子を助けるのか!助けんのか!」と怒鳴り散らした。

だが景虎は動じない。
景虎は義を重んじ、旧来の権威を尊重するが、無批判に権威に従う訳ではない。
だからこそ、たとえ相手が関東管領という権威の高い者であっても堂々と思うところを述べ、無批判に憲政の命令に従わないのである。

ここで宇佐美定満は、竜若丸は既にこの世にいないと憲政に告げ、密偵が調査した竜若丸最後の様子を伝えた。

竜若丸最期の詳しい様子を聞き、憲政は激しく悲しむ。
困った殿様の憲政であるが、子への情は本物である。

そして景虎は、「北条氏康は、この景虎が、いずれ成敗つかまつる」と宣言した。

「いずれ」という言葉はただの社交辞令である場合が多い。
だが景虎の場合は、本気全開であることがビシバシ伝わるのである。

景虎は、義のためなら猪突猛進ではなく、自軍と敵軍の勢力バランスを踏まえた上で冷静に対応する知恵ある者と描かれおり、格好良かった。

【氏康、竜若丸と一騎打ち】
上州にとどまった竜若丸だが、家臣に裏切られ、北条氏の捕虜となってしまった。
家臣たちは北条氏康へ、竜若丸の身柄と引き換えに、自分たちを北条家家臣に加えてほしいと訴えた。

氏康は、竜若丸の顔を見た。
竜若丸は、未だ闘志を失わず、氏康を睨みつけている。

氏康は竜若丸の縄を斬り、太刀を与えると、自らも太刀をとった。
そして言った。
「さあ来い、竜若丸!」

竜若丸は、何度も氏康に斬撃を打ち込み、弾き返される。
が、ついに氏康の眉間に一太刀浴びせた。

再び斬りかかる竜若丸は、氏康の一撃を受け、討死した。

氏康は、討死した竜若丸を讃えた。

「見事な最期じゃ。
これぞ、まことのもののふぞ。
この氏康、生涯忘れはせぬ!」

そして氏康は、竜若丸を差し出した裏切り者たちを斬り捨てさせるのだった。

【武田家嫡男・太郎、今川家との婚礼が決定】
今川義元の姫と、武田家嫡男・太郎の婚礼が、正式に決定した。

これを喜ぶ三条夫人だが、太郎の傅役・飯富虎昌は嬉しそうでない。
飯富は、武田と今川が対立した場合の太郎の立場を案じているのである。

【勘助、晴信に北条との政略結婚を進言】
甲斐に帰還した勘助は、晴信に北条との政略結婚を進言する。
娘を政略の道具として、他国へ人質に差し出すことに苦渋の表情の晴信である。

晴信は勘助に、母・大井夫人へ北条との盟約のことは伏せておくように言う。
今川家との婚儀が近い今、余計な心配をかけさせたくないという。

晴信は言う。母はもう長くはない。
母は自分が家督を継いでから、いやそれ以前から、ひと時も、心安らかであったことが、ない。せめて最期だけは、心安らかに、御仏の元へ行かせてやりたい、と。

【久々登場、信虎さま】
大井夫人は夢を見た。
夢の中で、太郎は今川との戦に反対し、晴信は「戦をするのは、この世の常じゃ!」と太郎を怒鳴りつけた。
太郎と晴信に、かつて父・信虎を批判した晴信と、信虎が重なる。
そして太郎は、太刀を抜いて晴信に斬りかかった。

これらは、後の武田軍の今川領侵攻をめぐる晴信と飯富の対立、太郎の廃嫡の伏線のようである。

そして、久々に信虎さまを見たが、なつかしく、自然体に暴君な人柄が凄すぎて笑ってしまった。
あの存在感には、抜きん出たものをかんじる。
年末に放映されるであろう総集編の第一部は是非、大河ドラマ「武田信虎」にしてほしいものである。

【大井夫人、死去】
死期の迫った大井夫人は、持仏堂で不動明王に語り始めた。

わたくしは、あらゆる人の争いを、見て参りました。
あらゆる人の欲を、憎しみを、見て参りました。
あらゆる、見たく無いものを、見て参りました。
故に、もはや人の心を恐れることは、なくなりました。
されど、あなた様の御心だけは、見えませぬ。

大井夫人は倒れ、死去した。

乱世に翻弄され、敵将の妻となり、夫は多くの妾を囲い、夫と息子が争い、息子は側室の娘婿と争い、その娘は心労で死んだ。
大井夫人の心中は、測りようがない。

【予告】
次回は、信濃の独立領主としての村上義清の最終決戦のようである。
合戦描写に期待したい。


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