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機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 第25話「鉄華団」

  • 2016/03/28(月) 04:33:25

【感想概略】
今回は、鉄華団及びクーデリアの戦いに一つの決着がつくお話である。見応えがあり、面白かった。
モビルスーツ戦では、バルバトスとグレイズアインが激戦を繰り広げ、戦闘の駆け引き、そして阿頼耶識ならでは凄みと危険さに迫力があり、まさに阿頼耶識搭載機どうしの頂上決戦を堪能させてもらった。
また前回大打撃を受けていたライド・マッス、シノ、そしてラフタとアジーが無事だったことにはほっとした。
その一方で、ガエリオがマクギリス本人の口から裏切りを明かされ、マクギリスの手で退場したことはショックだった。
そしてアインが、クランクを奪ったものへの復讐心と憎悪が暴走したまま引導を渡されたのは、もはや止むを得ないとは思うが、気の毒に思った。
三日月は、バルバトスとのフィードバックを高めたことで右目と右腕に後遺症が残ったが、表面的にはあまり気にしたそぶりをみせないのだが、これほどメンタルの強い主人公は珍しい気がする。この不屈ぶりには「青の騎士ベルゼルガ物語」のケイン・マクドガルを思い出した。

物語は一区切りであるが、300年間停滞していた世界は今回の鉄華団の初仕事とクーデリアの行動によって大きく動き出しつつあり、世界は変革はまさにこれからである。
クーデリアの革命の行方、マクギリスの野望の行方、マクマード・バリストンとノブリス・ゴルドンそれぞれの野望の行方、そして三日月とオルガ、鉄華団はどこにたどり着くのか、秋からの第二期が楽しみである。

【オルガたち、議事堂へ向かう】
前回、鉄華団は蒔苗をアーブラウ最高議会に送り届けるため、部隊の大半が囮となってギャラルホルン部隊を猛攻、敵部隊を引きつけ、この隙にオルガの指揮する少数の選抜隊が蒔苗とクーデリアを守ってエドモントン市内に突入した。

だがアインの駆るグレイズアインが市内に突入し、クーデリアたちの前に立ち塞がる。
グレイズアインの身長は通常のモビルスーツの1.5倍はあり、巨体に似合わぬ俊敏さでモビルワーカーの不意打ちをあっさり見破って返り討ちにした。
アインは、クランクを失った原因はクーデリアと決めつけ、クーデリアにグレイズアインで斧を振り下ろす。その時、三日月がバルバトスで駆けつけ、レンチメイスでグレイズアインの巨大な斧を受け止め、クーデリアたちを守った。

そして今回。
三日月のバルバトスはグレイズアインの斧を受け止め、クーデリアたちを守っているが、グレイズアインの強さは圧倒的であり、バルバトスに勝ち目があるか全く分からない。

が、オルガは三日月に後を任せ、モビルワーカーに蒔苗とクーデリア、アトラ、蒔苗の秘書を乗せ、タカキの操縦で議事堂へ向けて再び走り始めた。

【マクギリス、ガエリオに陰謀を明かす】
エドモントン郊外の荒野では、ガエリオの駆るキマリストルーパーが、前回乱入してきたグリムゲルデと睨み合っていた。

ガエリオは謎の敵に剣を向けて「貴様、何者だ!?」と誰何し、ギャラルホルンの前に立ち塞がる目的を問う。
するとグリムゲルデを駆るマクギリスは、「簡単なことだよ、ガエリオ」と言い、鉄華団には自分たちの理想を実現する手助けをしてもらっているからだと答えた。

ガエリオは、グリムゲルデを駆るのがマクギリスと知って困惑。
キマリストルーパーの剣をさげ、「理想?お前は何を…?」と問う。

するとマクギリスは、ギャラルホルンの権威を失墜させるための陰謀の数々を明かす。
ギャラルホルンは人体改造は悪という思想を広げながら、アインを改造してグレイズアインに組み込んだ。これは組織の混乱を示す生きた証拠である。
そして正気を失って戦うグレイズアインの姿は、多くの人々に恐怖と映るだろう。
その忌むべき機体と戦うのは、革命の乙女を守る英雄である鉄華団であり、乗り込むのは伝説のガンダムフレームである。
同時に、アーブラウの代表戦で蒔苗が再選されれば、政敵アンリ・フリュウとイズナリオの癒着が暴露される。そうなれば、世界を外側から監視するというギャラルホルンの建前も崩れ去り、ギャラルホルンの歪みは白日の下に晒されるだろう。

ガエリオは、マクギリスがギャラルホルンの権威を失墜させるためにアインを利用したことを知って激怒。
キマリストルーパーで剣を向け、グリムゲルデに突撃、次々と斬撃を繰り出す。

だがマクギリスはグリムゲルデでキマリストルーパーの攻撃を全てかわし、距離をとるとさらに非道の計画を明かす。
ボードウィン家はガエリオを失えば、娘婿であるマクギリスが継ぐことになる。またセブンスターズのイシュー家は一人娘カルタの死により弱体化している。ギャラルホルンの支配階層の勢力均衡は乱れ、そこからがマクギリスの出番だと。

ガエリオは、カルタの死すらマクギリスの謀略であったことに衝撃を受けた。
そして「嘘だ~!!」と叫ぶとキマリストルーパーで跳躍、上空からグリムゲルデに剣を振り下ろす。

【蒔苗たち、議事堂に到着】
アーブラウ最高議会では、蒔苗派の議員ラスカー・アレジが市内が騒然としていることを理由に、議会を延期することを訴えていた。
が、アンリ・フリュウ派の議員たちはアレジ議員を罵倒し、議会開催を主張。
もはやアレジ議員もこれ以上の時間稼ぎは困難である。

その時、議場に蒔苗が姿を見せ、騒然とする議員たちをたしなめた。
その後ろには真っ赤なドレスのクーデリア、蒔苗の秘書、そしてアトラがいる。

蒔苗の出現にアンリ・フリュウは動揺する。
議事堂の周囲はギャラルホルン部隊が警備しているのに、一体どうやって蒔苗はここに現れたのか。
実は議事堂には、市内の臨時代表公邸から繋がる秘密の抜け道があり、元代表の蒔苗はこれを利用したのである。

一方、議事堂の一室でイズナリオは蒔苗の出現に激怒。
そしてこの陰謀の背後にいるのはマクギリスであることに思い至った。
イズナリオとしてはマクギリスを信頼しており、よもやマクギリスが自分を裏切るとは今の今まで思わなかったようである。

【オルガ、三日月の元へ向かう】
臨時代表公邸のオルガとタカキに、蒔苗とクーデリアが議会に間に合ったとの連絡がアトラから入った。
タカキは安堵し、「これで仕事は終わりなんですよね?」とオルガに言う。
オルガは「ああ、終わる。終わらせる」と答えると、タカキに一仕事頼み、三日月がバルバトスで戦う戦場に向かった。

【ガエリオVSマクギリス】
ガエリオはキマリストルーパーで剣を振るい、マクギリスのグリムゲルデに次々と斬撃を繰り出す。
だがガエリオの心にあるのは、怒りより、むしろ悲しみのようである。
ガエリオはマクギリスに向かって叫ぶ。
「カルタはお前に恋い焦がれていたんだぞ!
いまわの際もお前の名前を呼んで、お前を想って死んでいった!
妹だって、お前にならば信頼して任せられると!」

ガエリオはキマリストルーパーで剣を振るいながら、カルタをおもい、妹アルミリアをおもい、ついにこらえきれずに涙を流す。

だがマクギリスは薄く笑みを浮かべて言う。
「アルミリアについては安心するといい。彼女の幸せは保証しよう。」

マクギリスはグリムゲルデで、ガエリオの駆るキマリストルーパーの剣をかわしながら言う。
「友情、愛情、信頼。
そんな生温い感情は、私には残念ながら届かない。
怒りの中で生きてきた私には。」

そしてグリムゲルデは剣をキマリストルーパーのコックピットに突き刺した。
キマリストルーパーは血しぶきのようにオイルを吹き上げると動作を停止、そのまま横倒しに倒れた。

もはや微動だにしないキマリストルーパーに視線を向け、マクギリスはつぶやく。
「お前は私の生涯ただ一人の、友人だったよ」

【バルバトスVSグレイズアイン】
エドモントン市内では、バルバトスとグレイズアインの死闘が続いていた。
グレイズアインは装甲防御は強靭であり、攻撃力は圧倒的であり、そして巨体でありながら反応速度は恐ろしく速い。
バルバトスの攻撃は効かず、それどころかグレイズアインの攻撃をかわすだけで手一杯である。
規格外の敵を相手にバルバトスの消耗は激しく、スラスターの燃料は残り僅か、ガトリング砲の残弾もわずかとなってきた。

そして三日月はバルバトスで、レンチメイスをグレイズアインに投げた。
グレイズアインは片手で渾身の一撃を受け止める。
が、これはフェイントであり、バルバトスは瞬時にグレイズアインの間合いに踏み込み、ゼロ距離で腕部ガトリング砲をグレイズアインに突き付ける。

だが発射する前に、グレイズアインは突き付けられたバルバトスの腕を掴んで攻撃を封じ、突き飛ばすと足裏からドリルを繰り出してバルバトスの胸に強烈な蹴りを浴びせる。これは前回、ラフタの駆るロウエイを撃破した技だが、バルバトスは胸部追加装甲に守られ、致命傷は逃れた。

とはいえ、三日月のバルバトスが、グレイズアインを撃破する決め手に欠けるという現状に変わりはない。それどころかバルバトスに残された武器は、もはや太刀一振りのみである。

グレイズアインは両手に斧を握るとバルバトスに振り下ろす。
バルバトスは太刀で敵機の斧を受け止めて押し合うが、グレイズアインの巨体怪力にじりじりと押されていく。

【バルバトス、反撃開始】
アインはグレイズアインで二刀の斧に力を込めながら結論する。
「もう貴様は救えない。あの女も、お前の仲間も決して!貴様の、貴様らの死をもって罪を祓う!」

この言葉に三日月は激怒。
「罪?救う?それを決めるのはお前じゃないんだよ」

そして三日月はバルバトスに呼びかける。
「おい、バルバトス。いいからよこせ、お前の全部」

次の瞬間、バルバトスの太刀が一閃、グレイズアインが右手に握る斧を弾き飛ばす。
バルバトスの電光石火の剣にアインは動揺。

そしてバルバトスのコックピットでは、三日月は右目と鼻から出血しながらバルバトスに呼びかける。
「もっと…もっと…もっとよこせ、バルバトス」

三日月は、バルバトスから阿頼耶識でフィードバックされる情報のリミッターを解除し、機体とのシンクロを高めたが、その負荷に肉体が耐えられないということのようである。
そしてバルバトスが三日月の要求に応じたのは、バルバトスには機体を制御する人工知能が搭載されており、バルバトスには意志があるということかもしれない。

【クーデリアの演説】
アーブラウ議会では、蒔苗は自分の所信表明の時間を、クーデリアに与えたいという。
思わぬことに驚くクーデリアだが、「クーデリアさんなら出来るよ、きっと」というアトラの言葉に決意し、壇上に登った。

クーデリアは名乗り、蒔苗と交渉のため来たと言い、語り始める。
火星と地球の歪んだ関係を少しでも正そうと始めたこの旅で、世界中に広がるより大きな歪みを知った。そしてこの地もその歪みに飲まれようとしている。
だがここにいる議員たちは、その歪みを正す力を持っているはず。
そしてクーデリアは議員たちに呼びかける。
「選んでください、誇れる選択を。希望となる未来を!」

【オルガ、鉄華団に命令】
オルガはモビルワーカーで三日月の元に急行しながら、通信で鉄華団に呼びかける。
エドモントンの空には、タカキが飛ばした通信用ドローンが多数飛んでおり、オルガの声は団員たちによく聞こえた。

オルガは、蒔苗とクーデリアは議事堂に送り届けた、仕事は成功したと告げ、そして団員たちに呼びかける。
「だから…こっから先は死ぬな!
こっから先に死んだ奴らは、団長命令違反で俺がもう一遍殺す!
這ってでも、それこそ死んでも生きやがれ!

オルガの言葉に団員たちはニヤリと笑う。
救助されたラフタとアジーもオルガの言葉に耳を傾ける。

そしてトレーラーで移動するメリビットは複雑な表情だが、隣でハンドルを握る雪之丞は言う。
「あいつは指揮官として、この命令を出したかったんだ。ず~っとな。
『死ぬな生きろ』なんて、言葉にしちまえばあっさりしたもんだ。
けどよ、あいつにゃ言えなかった」

メリビットは無言だが、オルガの本心を知り、何かが心に届いているようである。

【バルバトス、敵機を撃破】
三日月はバルバトスで太刀を握り、グレイズアインに次々と鋭い斬撃を繰り出す。
アインはグレイズアインでどうにかかわすと、右足でドリルキックをバルバトスの左頬に浴びせる。

グレイズアインの猛攻に、三日月はまるで自分の顔面に打撃を受けたようにのけぞるが、これは阿頼耶識でバルバトスとのフィードバックを高めたため、バルバトスの受けたダメージを三日月が自身の痛みとして感じているということだろうか。

そしてグレイズアインは斧を振り上げ、「ネズミの悪あがきもこれで終わりだ~!」と叫んで振り下ろす。
その時、オルガが三日月に叫んだ。
「何やってんだミカ~!!」

オルガの声に、三日月は目を見開き、バルバトスの装甲をパージ。
身を軽くするとグレイズアインの攻撃をかわして跳躍。
瞬時に敵機の間合いに踏み込み、敵機の左腕をフレームごと斬り飛ばす。

これにアインは「モビルスーツの装甲をフレームごと!?」と驚愕。
そして三日月は「こいつの使い方…やっと分かった」とつぶやく。

アインはグレイズアインで「この…化け物がぁ~!」と叫びながら渾身の右ストレートを繰り出す。
が、三日月はバルバトスの太刀で敵機の右腕も斬り飛ばし、「お前にだけは言われたくないよ」とつぶやく。

そしてクランクとガエリオに呼びかけるグレイズアインのコックピットに、三日月はバルバトスの太刀を突き刺した。
グレイズアインは動作を停止、そして三日月はつぶやく。
「うるさいな。オルガの声が聞こえないだろ。」

【戦闘終結】
間もなく、エドモントン郊外のギャラルホルン部隊は鉄華団と停戦、戦闘は終結した。
そしてアーブラウ議会では蒔苗が新代表に再選された。

クーデリアは廊下で、自分とフミタンのネックレスを手のひらに乗せ、「これで終わったのでしょうか」とつぶやく。
アトラはクーデリアの手を握ると「うん。きっと」と答え、「クーデリアさん、格好良かったよ」と言うと微笑んだ。

一方、バルバトスとグレイズアインが死闘を繰り広げ、廃墟と化した区画。
三日月はオルガに尋ねる。
「ねえオルガ。ここがそうなの?俺達の本当の居場所」

するとオルガは「ああ。ここもその一つだ」と笑う。
三日月は沈んでいく夕日を眺めながら言う。
「そっか。綺麗だね」

【四日後】
それから四日後。
クーデリアと蒔苗の交渉は順調に進み、彼女の理想は具体的な第一歩を踏み出そうとしていた。

一方、ギャラルホルンではイズナリオが、マクギリスに亡命を勧められていた。
イズナリオはマクギリスに怒りの目を向ける。
が、マクギリスはイズナリオが身を引かなければ監査局は黙っておらず、実刑だけでなくファリド家断絶もあり得ると丁寧な口調で脅す。
イズナリオは「絶望から救い上げてやった恩義を忘れ、お前の先にもまた絶望しか待っていないぞ」と言い残して去った。
これにマクギリスは冷笑を浮かべる。マクギリスとしては、恩義を受けたつもりなどない、むしろイズナリオには怒りしか無いというところだろうか。

圏外圏では、テイワズ代表のマクマード・バリストンの屋敷を、火星の大富豪ノブリス・ゴルドンが訪れていた。
マクマードは、アーブラウ政府から鉄華団を軍事顧問として雇いたいとの打診が来たことを明かす。
するとノブリスは、ギャラルホルンに対する不信感はアーブラウ以外の経済圏にも広がっており、これから各経済圏はギャラルホルンに頼らない独自の軍備拡張を進めるだろうという。
これにマクマードは、「あんたも商売のやりがいがあるだろう」と凄みのある笑みを浮かべると、ノブリスは「鉄華団を手元に置いたあんたほどじゃないさ」と悪人面で笑う。
この二人、今後の軍需景気とハーフメタル自由化でさらに新しい儲けを期待しているようだが、この二人も今後いつまで無事でいられるだろうか。

ボードウィン家の屋敷では、アルミリアは兄ガエリオの死を悲しみ、ガエリオのために涙を流す。
これまでアルミリアはガエリオに手厳しかったが、あれは兄に甘えていたのであり、ガエリオもまたアルミリアを子供扱いしてからかっていたが、あれはガエリオなりに妹を可愛がっていたのだろう。
そんなアルミリアをマクギリスは抱きしめ、「君の涙をガエリオは望んではいないはずだ」と慰める。
現在マクギリスはアルミリアからの信頼絶大だが、そうそう上手くいくだろうか。

【メリビットと雪之丞】
エドモントン郊外の廃駅では、鉄華団は火星に帰る準備に追われていた。
少年兵たちのいつもと変わらぬ姿に、メリビットは雪之丞に言う。
「あの子達、もう戻れないんじゃないかって思ってました」

「何にだ?」という雪之丞に、メリビットは「子供に…」とこたえる。
すると雪之丞は「あいつらは、まだまだガキんちょさ」と笑う。

そして名瀬とアミダ・アルカも廃駅を訪れ、ラフタたちと再会。
名瀬は抱きつくラフタとエーコを労い、それを眺めるアジーをアルカは「かわいいねぇ、あんたは」と言い頭を撫でた。

【オルガと名瀬】
オルガは廃駅の隅で名瀬に頭を下げ、「いろいろ迷惑をおかけしました」と詫びた。
名瀬は「お前らはきっちり仕事をしたんだ。胸を張れよ」と言い、オルガが謝る必要などないという。

だがオルガは、家族をたくさん亡くしてしまったと言い、頭を上げようとしない。
これに名瀬は言う。
「お前いつか、俺に言った言葉は嘘だったのか?
『訳の分からねぇ命令で、仲間が無駄死にさせられんのは御免だ。
あいつらの死に場所は鉄華団の団長として』」

「俺が…作る…」

名瀬は拳をオルガの胸に当てていう。
「あいつらは、お前の作った場所で散っていった。
張れよ、胸を。今、生きてる奴のために。
死んじまった奴らのためにも。
てめぇが口にしたことは、てめぇが信じ抜かなきゃならねぇ。
それが指揮官としての…団長としての覚悟ってもんだろ」

オルガは頭を上げ、涙をにじませた。

【三日月とアトラ、クーデリア】
廃駅でアトラは三日月に気付き、戦闘での負傷はもう大丈夫なのか尋ねた。
すると三日月は淡々と答える。
右目がよく見えず、右腕がうまく動かない「だけ」であり、バルバトスに阿頼耶識で繋がっている時は動くので、まだ働けると。

アトラは「そっか…」と言い、三日月の壮絶な現状を受け入れた。

少し離れた場所では、年少組の少年兵たちがクーデリアを見つけ、「あっクーデリア先生!」と駆け寄り、何かを渡されて喜ぶ。
そしてクーデリアは三日月にもタブレット端末を渡し、「宿題です。帰りの船で勉強できるように」と笑う。

だがクーデリアは三日月の右腕に気付いて尋ねると、三日月は「ちょっと動かなくなった」とあっさりと答える。
言葉を失うクーデリアに、三日月は「泣くなよ。この手じゃもう慰めたりできないから」と言うが、アトラは「もう~違うでしょ!」というと、クーデリアと一緒に三日月の頭を撫で始めた。

困惑する三日月に、アトラは「三日月が大変なときは、私たちが慰めてあげるんだからね」という。
これにクーデリアも同意し、「そうですね。私達は家族なのですから」と笑う。

【三日月とオルガ】
夕方、廃駅の広場で、オルガは少年兵たちに初仕事の完遂を労い、鉄華団はもっと大きくなると今後の抱負を語り、「成功祝のボーナスは期待しとけよ!」と笑って演説を締めくくった。

そして、バルバトスの足元でオルガは三日月に尋ねる。
「なあミカ。次は何をすればいい?」

すると三日月は「そんなの決まってるでしょ」と小さく笑う。
オルガは「ああ。そうだな」と笑い、右手を上げる。
三日月も左手を上げて拳をつくり、オルガの右拳と軽くたたきあった。


おわり

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機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 第24話「未来の報酬」

  • 2016/03/21(月) 05:09:26

【感想概略】
今回は、鉄華団は蒔苗をアーブラウ議会に送り届けようとモビルワーカー部隊で市内への突入を図るが、行く手を阻むギャラルホルンは大部隊であり、その守りは固く、3日戦い続けても市内に突入できない。会議開始まで残された時間は僅かであり、オルガはこの場の鉄華団全員の命を賭けて最後の奇策に打って出る。だがガエリオのキマリストルーパー、そしてアインが阿頼耶識で駆るグレイズアインが参戦。グレイズアインは鉄華団側のモビルスーツに甚大な被害を与え、市内へのモビルスーツ持込禁止というルールを無視して市内に突入、クーデリアに刃を向けるが…というお話である。

兵の命より作戦完遂を優先せざるを得ない軍事組織の非情さ、生きるためには命と金を引き換えにするより他に選択肢がなく、それでもオルガに賭けることを自らの意思で選び絶望的な戦いに身を投ずる少年兵たちの運命の苛酷さ、理想のため自分の戦いをたたかうクーデリア、キマリストルーパー及び規格外の強さを発揮するグレイズアインと鉄華団側モビルスーツとの激闘が描かれ、見応えがあり、面白かった。
またアーブラウ政界では、ラスカー・アレジ議員は蒔苗再選のため厳しい状況であっても決して動ぜず、粘り強く自分の戦いを続ける姿が地味に格好良かった。

【鉄華団、エドモントンへの突入を図る】
前回、鉄華団の特別列車はアーブラウ議会の開催地エドモントンの近郊に到着した。
カルタ・イシューのモビルスーツ部隊が行く手に立ち塞がることはあったが、鉄華団にさしたる損耗はなく、移動手段に鉄道を利用するクーデリアの作戦はここまでは成功といえるだろう。
あとは蒔苗をアーブラウ議会に送り届けることが出来れば、鉄華団の作戦は成功であり、ここから先は蒔苗の戦いとなる。

そして今回、鉄華団はエドモントン郊外の廃駅を拠点とし、モビルワーカー部隊でエドモントン市内への突入を図ってギャラルホルンのモビルワーカー部隊と交戦。街と郊外を隔てる川にかかる橋を巡って激戦を繰り広げ、既に三日戦い続けていた。
だが鉄華団は人数もモビルワーカーの性能も劣っており、激しく攻め続けるもののギャラルホルン部隊を突破出来ない。

そして激戦により死傷者が続出。
廃駅には血まみれの負傷者が次々と運び込まれ、メリビットは負傷者たちの治療に追われていたが、その姿は薄汚れており、この三日間ろくに休んでいないようである。
それは負傷者を介抱するアトラも同様であり、メリビットはアトラに少し休むよう声をかけるが、「私、徹夜得意なんです」と笑ってみせる気丈なアトラである。

【クーデリアと蒔苗】
アーブラウ議会の開催まであと6時間である。
蒔苗は「まだ突破できんのか?」と洩らすが、クーデリアは「彼らを疑うような言葉を、ここでは口にしないで下さい。彼らは私達のために、ギリギリのところで戦っているのです」と言い、鉄華団の名誉を傷つけ、士気を下げるような発言は慎むよう抗議する。
これに蒔苗は、自分は無論鉄華団を疑ってなどいない、ただそれまで流される血の量を心配していると言い、クーデリアの抗議は誤解によるものという態度をとる。批判を強引に言いくるめる蒔苗だが、このくらい図太くないとアーブラウ代表は務まらないというところだろうか。

【三日月たち、敵モビルスーツ部隊を迎撃】
廃駅から少し離れた荒地では、三日月のバルバトス、昭弘のグシオン・リベイク、シノの流星後、そしてラフタとアジーのロウエイが廃駅を守り、ギャラルホルンのモビルスーツ部隊を迎え撃っていた。
三日月たちは圧倒的多数の敵モビルスーツを相手に善戦、敵を乱戦に引きずり込み、敵機を確実に討ち取っていく。

だがギャラルホルン部隊の隊長コーリス・ステンジャも乱戦に持ち込まれたら不利ということを学習、陣形を崩されると部下たちに退却を命じ、敵部隊は一時撤退した。

ラフタは敵が逃げたことを悔しがり、アジーは敵が戦いの中で学習していることを評価する。
これにラフタは「敵をほめんな!」とふくれるが、アジーは「私達もよくやってるよ。もう3日もここで耐えてるんだ」と言い、ラフタと自分たちの力戦奮闘を称える。

敵部隊の退却により、三日月たちも整備と弾薬の補給のため、廃駅に移動した。

【鉄華団のモビルワーカー隊、苦戦】
オルガの指揮する鉄華団のモビルワーカー部隊は、橋を挟んだ対岸に陣取る敵モビルワーカー部隊と激しく撃ちあうが、未だ戦況は膠着したままである。
その時、タカキがオルガに部隊の弾薬が残り少ないことを報告してきた。
オルガは歯ぎしりするが、補給のため廃駅に一時撤退した。

一方、別の橋を守るギャラルホルン部隊からは、友軍が鉄華団の猛攻を受けている様子がよく見えていた。
部隊の副官は部隊長に、自分たちは援護しなくてよいのだろうかと質問した。
すると部隊長は言う。
この戦いは元々はアーブラウの政治問題であり、ギャラルホルンが内政干渉するなど本来あってはならないのだと。

おそらくギャラルホルンの各モビルワーカー部隊が受けた命令は、持ち場を守って不審者を通さないという警護任務であり、鉄華団の殲滅という軍事作戦は命じられていないのだろう。

ギャラルホルンの部隊長としては、ギャラルホルンの役割はあくまで地球圏の防衛であり、各経済圏の政府にギャラルホルンが指図するなど許されないことである。そして蒔苗の議会出席の可否は、アーブラウ政府が法に基づいて判断すべきことであり、本来であればギャラルホルンが武力で阻止するようなことではない。
部隊長は今回の任務に納得しておらず、橋を守るという命令以上のことをするつもりはないというところだろうか。

【ライド・マッスの報告】
廃駅に戻ったオルガは部隊の現状を確認するが、元々多くはなかった戦闘員は死傷により更に減少、弾薬は残り少なく、議会開催まであまり時間がない。
また都市への突入にモビルスーツは使用できない。
もしモビルスーツの突入を強行すればその動力であるエイハブ・リアクターの影響で都市機能は麻痺して大混乱となり、蒔苗は世論を敵に回し、議会での支持も得られなくなってしまう。

その時ライド・マッスが偵察から戻り、都市と郊外を隔てる川の水量は大分減っており、モビルワーカーでも渡ることが可能とオルガに報告した。
そしてライドは「俺も一緒に行かせてください」と言い、モビルワーカーで戦うことをオルガに申し出た。
オルガはライドに念を押すが、ライドの決意は変わらない。オルガはライドの作戦参加を認めた。

【オルガと三日月】
ライドの報告を受け、オルガの作戦は決まった。
囮部隊が敵を引きつけ、その隙に選抜隊が蒔苗を守って渡河して都市に突入、蒔苗を議事堂に送り届ける陽動作戦である。

オルガは廃駅でバルバトスの整備と補給を受ける三日月に通信し、今から最後の攻撃を開始することを伝えた。
そしてオルガは三日月にしか言えない本音を洩らす。
「かなり危険な賭けになる。どうしたって、それなりの被害は避けられねぇ。あいつらに、そいつを押しつけなきゃならねぇんだ…」

オルガとしては、仲間に生還率の極端に低い任務を与えることを、作戦のためには仕方のないこととはどうしても割り切れない。
オルガは意識していないだろうが、三日月に聞いてもらわなければ、仲間を死地に送ることにとても耐えられないのだろう。

すると三日月は言う。
「俺はもうオルガに賭けてるよ。最初のあの日から。
俺だけじゃないよ。みんなだってそうだ。みんなオルガに賭けてる。
だからオルガも賭けてみなよ、俺達に。
鉄華団のみんなに。」

三日月も、鉄華団の仲間たちも、自分の意思でオルガを信じ、オルガに賭け、自分の全力を尽くそうとしている。
決して一方的に命令されている訳ではない。
だからオルガも鉄華団の仲間たちを信じ、彼らの力を頼ってみればよい、というところだろうか。

オルガは、三日月の言葉に力を与えられ、決意の笑みを浮かべてつぶやく。
「鉄華団のみんなに…か」

【オルガの演説】
廃駅の広場にオルガは鉄華団の仲間たちを集め、次が最後の作戦と伝えた。
続いてメリビットに、負傷者を連れて離脱するよう依頼した。
そして仲間たちに、囮としてギャラルホルン部隊を引き付けてもらうこと、作戦に乗れないなら退いてもらって構わないと言い、「けど乗ってくれるなら…お前らの命って名前のチップをこの作戦に賭けてくれ!」と訴えた。

これにメリビットは激怒。
少年兵たちを背に庇い、「ふざけないで!囮になる?命を賭ける?この子達を死なせたいの!?」と叫び、真っ向からオルガに反論する。

するとオルガは少年兵たちに語りかける。
「俺達一人一人の命は、自分が死んじまった時点で終わる消耗品じゃねぇんだ!鉄華団がある限りな。
ここまでの道で死んでった奴らがいる。
あいつらの命は、無駄になんてなってねぇ。
あいつらの命もチップとして、この戦いに賭ける。
いくつもの命を賭けるごとに、俺達が手に入れられる報酬…未来がでかくなってく。
俺ら一人一人の命が、残った他の奴らの未来のために使われるんだ!」

オルガの主張は、一般市民の感性を持つメリビットには到底受け入れられるものではない。
だが少年兵たちは、自分たちの誰かが死んでも残った者が笑えれば、それは意味のあることなのだとオルガの言葉に納得する。

少年兵たちの言葉を受けて、オルガは言う。
「そうだ。誰が死んで誰が生き残るかは関係ねぇ。
俺達は一つだ。俺達は家族なんだ。
鉄華団の未来のために、お前らの命を賭けてくれ!」

オルガと少年兵たちの心は今や一つである。
だがメリビットに納得できるものではなく、鉄華団のためなら死を受け入れる少年兵たちのために涙を流してつぶやく。
「違う…そうじゃない。家族っていうのは…
こんなの間違ってる!
ビスケット君だって、フミタンさんだって、こんなの望んでない。絶対に間違ってる!」

雪之丞は、両手で顔を覆って泣くメリビットの頭をなでて言う。
「ああ。間違ってるさ」

一方クーデリアはもはや覚悟が決まっているのか、決然とした表情を崩さない。

【クーデリアたち、乗車】
間もなくクーデリアと蒔苗は装甲車に乗り込んだ。
そして運転手は何とアトラである。

驚くクーデリアに、アトラは戦闘員の人手が足りないので自分が運転すると言う。
そして「三日月の代わりに、私がクーデリアさんを守ります。それが私の革命なんです。」と笑う。

クーデリアはアトラの意思と覚悟を知り、アトラに命を委ねた。

【バルバトスVSキマリストルーパー】
鉄華団は最後の攻撃を開始。
三日月たちはモビルスーツを駆り、敵モビルスーツ部隊の駐屯地を奇襲、駐機中のモビルスーツを撃破していく。
ギャラルホルン側は、鉄華団から攻撃してくることは想定しておらず、敵部隊は大混乱である。

その時、何者かが三日月のバルバトスに機銃掃射を浴びせた。
ガエリオの駆るキマリストルーパーの攻撃である。

キマリストルーパーは高速でバルバトスに接近、長槍を繰り出す。
バルバトスはレンチでキマリストルーパーの槍を受け止めるが、衝撃に弾き飛ばされ、膝をついてしまう。
ガエリオはキマリストルーパーでバルバトスに銃撃を浴びせながらカルタに誓う。
「カルタ、任せてくれ。お前の無念は、俺が晴らしてみせる。
そしてギャラルホルンの未来を俺達の手に!」

【ユージンたちの参戦】
街にかかる橋を守るギャラルホルンのモビルワーカー部隊は、鉄華団の猛攻を受けていた。
鉄華団のモビルワーカーは守りを捨てて突撃、次々と撃破されるが、その戦意は全く衰えない。
その死を恐れぬ戦いぶりにギャラルホルン部隊は動揺、押され気味である。

これを見た、別の橋を守るギャラルホルン部隊の部隊長は「さすがに味方を見殺しにはできん」と言うと、鉄華団と戦う部隊の援護に向かう。

オルガの作戦どおり、敵部隊は橋に集中してきた。
だがタカキは「火力が違い過ぎて、川を渡るまでみんなが保ちませんよ!」と叫ぶ。
オルガは「あいつらの賭けた命…無駄にするわけにはいかねぇんだ!」と言い、敵陣突破の覚悟を決める。
その時、橋のギャラルホルン部隊に次々とミサイルが命中、爆発四散した。

ユージンがモビルワーカーで参戦である。
チャド、ダンテ、そしてかつてブルワーズにいた少年兵たちも一緒である。
敵部隊を撹乱しながらユージンは「敵はこっちで引き受ける。行けよオルガ!」と叫ぶ。

オルガはこの機を逃さず、クーデリアと蒔苗の乗る装甲車を守って川を渡り、市内に突入した。

【グレイズアイン参戦】
キマリストルーパーのガエリオは、モビルスーツ部隊を率いるコーリス・ステンジャに、モビルワーカー部隊の援護に向かうよう命じた。
コーリスは、5対1ではキマリストルーパーに圧倒的不利であることを案じて躊躇するが、ガエリオに強く命じられ、配下を率いて転進、モビルワーカー部隊の救援に向かう。

すると昭弘はグシオン・リベイクでコーリス隊を追撃。
ラフタは昭弘一人では無謀と制止するが、その時、空から巨大なモビルスーツが出現、地響きを立てて着地した。

この機体こそ、アインが阿頼耶識システムで駆るグレイズアインであり、右手に巨大な斧を握った。
ラフタとアジーは、データに無い機体を警戒しながら攻撃を敢行。
バズーカ砲でロケット弾を発射してグレイズアインを牽制し、この隙にブースターを吹かして高速で接近する。

グレイズアインはロケット弾を平然と撃墜するが、ラフタ機はこの隙に敵機の背後から斬撃を振り下ろす。
が、グレイズアインは巨体に似合わぬ素早さでラフタ機の攻撃をかわし、斧の柄で殴り、蹴りを入れる。
アジーは敵機が阿頼耶識システムで操作されていることに気づくが、敵機は瞬時にアジー機の背後に回り、巨大な斧を振り下ろし、頭部を叩き潰す。
衝撃はコックピットに達し、アジーは血まみれになり、ぴくりとも動かない。

【グレイズアインVSラフタ機】
ラフタはロウエイを駆り、アジーに呼びかけながらグレイズアインを牽制射撃するが、アジーから反応は無い。
そしてグレイズアインはブースターを吹かして地上を不規則な動きで高速移動し、ラフタ機の砲撃をことごとくかわす。
グレイズアインの機械らしくない生物的な俊敏さに、ラフタは「動きが読めない。気持ち悪い。これ…三日月以上」とつぶやく。

その時、空から撃破されたギャラルホルン機が降ってきた。
グレイズアインが投げたもののようである。

一瞬ラフタの注意が降ってきた機体に向いた隙に、グレイズアインがラフタ機に急接近し、左足の裏から高速回転するドリルを繰り出し、ラフタ機の胸に蹴りを入れた。
ラフタ機は胸部装甲をドリルキックに破壊され、コックピットに血しぶきが舞い、ラフタ機から通信が途絶えた。

バルバトスの三日月は、これには動揺。
ラフタを助けに向かおうとするが、ガエリオがキマリストルーパーで高速突撃して槍の一撃を浴びせ、バルバトスのレンチを弾き飛ばす。

バルバトスはキマリストルーパーの繰り出す槍を両手で受け止めるが、これではバルバトスに反撃の術が無い。
ガエリオは槍をボディに固定して両手が使えるようにすると、剣を抜いて構えて叫ぶ。
「お前達はここで終わりだ!
あれこそが阿頼耶識の本来の姿!
モビルスーツとの一体化を果たしたアインの覚悟は、まがい物のお前達を凌駕する!」

が、三日月はバルバトスでキマリストルーパーの槍から手を離し、そのまま急接近し、敵機の頭部を拳で殴った。

【グレイズアインVS流星号】
グレイズアインは、シノの流星号を次の獲物と定めて襲いかかり、斧を振り下ろして右肩に斬撃を浴びせた。
続けてグレイズアインは右腕を流星号に繰り出し、前腕に装着されている巨大な杭を射出、流星号の頭部を串刺しにした。
衝撃で流星号の右腕が千切れ飛び、コックピットは大破、シノは血まみれで目を閉じて動かない。

グレイズアインは、動かなくなった流星号の頭部を片腕で掴み、宙吊りにして叫ぶ。
「クランク二尉やりましたよ!あなたの機体を取り戻しました!」

さらにグレイズアインは空を見上げて語りかける。
「きっと見ていてくれますね、クランク二尉。俺はあなたの遺志を継ぐ」

その時、流星号に雪之丞から通信が入り、オルガとクーデリアが市街地に入ったことを伝えた。
これをグレイズアインは接触通信で聞くのだが、クーデリアの名に激しく反応する。

【グレイズアイン、エドモントン市内に突入】
オルガとタカキの駆るモビルワーカー、護衛のモビルワーカー、そしてクーデリアと蒔苗の乗る装甲車はひと気の無い道路を走り、ギャラルホルンの検問を砲撃で突破し、議事堂に確実に近づいていた。
が、突然信号が消え、タカキは「LCSを除く全ての通信が切断、レーダーも消えました」と現状を報告する。

そして、空から巨大なモビルスーツが出現、降下してくる。
グレイズアインである。
これにオルガは「正気か?奴らこんな街中に…モビルスーツだと!?」と驚愕するが、アインは正気では無さそうである。

次の瞬間、グレイズアインは轟音を響かせて着地。
土煙がもうもうと立ち昇り、道路はすり鉢状に陥没、ビルは傾き、アトラの運転する装甲車は衝撃でひっくり返った。自動車が頑丈なことと、シートベルトを着用していたおかげで、アトラたちに怪我のないことが不幸中の幸いである。

グレイズアインはつぶやく。
「そうだ…思い出しました。俺はあなたの命令に従い、クーデリア・藍那・バーンスタインを捕獲しなければならなかった!」

するとクーデリアはグレイズアインの前に姿を見せて名乗り、「私に御用がおありですか!」と問う。

護衛のモビルワーカーはクーデリアの逃げる隙を作ろうとグレイズアインに砲口を向ける。
が、グレイズアインはこれを察知して砲撃、モビルワーカーを撃破した。

【グレイズアインVSバルバトス】
アインの発言は支離滅裂であり、まるで言葉遣いだけは礼儀正しい酔っぱらいである。
これは、阿頼耶識システムでグレイズアインの巨体を動かし、人体に本来は存在しない固定武装を縦横無尽に操作するには脳にかかる負荷が尋常ではないためアインは正気を保てず、もはやアインの心には彼がもっと強く抱く想いが残るのみとなっているということだろうか。

そしてアインは、クーデリア捕獲任務が原因でクランク二尉が命を落としたことを思い出し、「あなたのせいでクランク二尉は…」と言い、クランクの死は、ギャラルホルンに投降しなかったクーデリアの責任という結論に達した。

クーデリアはアインの言葉を真正面から受け止めて言う。
「私の行動のせいで、多くの犠牲が生まれました!しかし、だからこそ、私はもう立ち止まれない!」

これにアインは激怒。
「その思い上がり…この私が正す」と言うとグレイズアインで斧を振り下ろす。

その瞬間、アトラが飛び出してクーデリアを抱きしめて庇い、オルガがクーデリアに駆け寄る。
その時、バルバトスがレンチで巨大な斧を受け止め、クーデリア、アトラ、オルガを救う。

絶対絶命の危機に現れた三日月のバルバトスにオルガは笑っていう。
「そうだよな。お前が俺達をこんな所で終わらせてくれるはずがねぇ。なあ?ミカ」

一方、キマリストルーパーの前には、仮面の男モンタークの駆るグリムゲルデが立ちふさがっていた。
どうやらグリムゲルデがキマリストルーパーに一撃を与え、その隙にバルバトスが離脱、グレイズアインを追ったということのようである。

キマリストルーパーを駆るガエリオは、グリムゲルデの姿に「貴様か…俺の邪魔をしたのは!」とつぶやき、新たな敵の出現に闘志を燃やす。
一方、グリムゲルデを駆る仮面の男は、「君の相手は…私がしよう」と言うとかつらと仮面をとり、正体であるマクギリスの素顔を晒した。

そして、三日月はバルバトスのレンチで、グレイズアインの斧と押し合いながら、愛機に呼びかけた。
「行くぞ。バルバトス」

【予告】
次回「鉄華団」

三日月のバルバトスとグレイズアインとの戦いの行方、ガエリオのキマリストルーパーとマクギリスのグリムゲルデとの戦いの行方、アーブラウ議会での蒔苗とアンリ・フリュウとの政略闘争の行方がまずは気がかりであり注目したい。
そして、ラフタ、アジー、シノの生存を願いたい。

機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 第23話「最後の嘘」

  • 2016/03/14(月) 01:44:58

【感想概略】
今回は、鉄華団はクーデリアと蒔苗を守り鉄道で密かにエドモントンへ向かうが、その前にカルタ・イシューが出現して決闘を申し込む、だが三日月は…というお話である。
カルタの騎士道と三日月の血も涙も無い合理主義のぶつかり合いと戦いの非情さ、自ら戦いを選ぶ少年兵たちと、少年兵たちを案じ何とか子供たちが戦いに身を投じることを思いとどまらせようとするメリビットの苦悩、実はビスケットの死を乗り越えてなどいないがそれでも前に進むしかないオルガの苦悩が描かれ、見応えがあり、面白かった。

マクギリスは、ガエリオ、カルタとの友情を犠牲にしてでも目的を実現したいということのようである。
ギャラルホルン社会で出自を理由に差別されていたマクギリスを、ガエリオとカルタは友として受け入れたが、そんな二人を切り捨ててでも優先したいこととは何か。マクギリスの育ての親、実の母の名誉のためだろうか。引き続き注目したい。

【カルタ、イズナリオに復命】
前々回、カルタ・イシューは配下を率いて鉄華団に戦いを挑むが敗退、多くの兵を失い、僅かに生き残った部下たちに救われて生き延びた。
そして今回、カルタはギャラルホルン地球本部で長官イズナリオに敗戦を詫び、鉄華団との再戦を願い出た。
イズナリオはカルタの行動はイシュー家の家名に泥を塗ったと叱責する。
だがイズナリオは、本来なら敗戦したばかりのカルタには荷が重いと思うが、マクギリスの強い要望により、カルタに名誉挽回の機会を与え、鉄華団との再戦を許可するという。

【カルタとマクギリス】
イズナリオの執務室を退出したカルタは、廊下でマクギリスと出くわした。
カルタはマクギリスに「惨めな私に手を差し伸べてくれるなんてね。感謝するわ、マクギリス」と礼を言うが、自分はマクギリスに情けをかけられたのだと思い、ありがたく思うと同時に屈辱を強く感じているようである。

だがマクギリスは「惨めだなどと…」と上から目線で情けをかけたのではないと言い、そしてマクギリスにとってカルタは、出会った時から手の届かない憧れのような存在だったという。
これにカルタは頬を赤らめる。

二人は子供の頃のことを思い出す。
当時、マクギリスはファリド家の養子に迎えられたが、妾腹の子ということで蔑視されていた。
だがカルタとガエリオはマクギリスを好ましく思い、他人の目など気にせずマクギリスと接し、一緒にいようとする。
マクギリスは二人に心を開かず、「僕と一緒にいない方がいいですよ」と言い残して立ち去ろうとする。
が、カルタは走ってマクギリスを追い抜くと腰に手を当てて立ち塞がり、マクギリスの優れたところを次々と指摘し、優れているのに卑下される方が屈辱であり、堂々とするように言う。
少なくともこの頃は、マクギリスはカルタとガエリオの裏表のなさに心を動かされていたと思う。

【メリビットとオルガ】
鉄華団はクーデリアと蒔苗を護衛し、特別列車で北米の雪原をエドモントンに向かっていた。
車内のテレビには、政界では蒔苗の再出馬の噂が飛び交っていると報ずるニュース番組が映り、蒔苗派の有力議員ラスカー・アレジのロビー活動は順調なようである。

前回のオルガの「弔い合戦」演説により、鉄華団の少年兵たちの士気は高い。
が、メリビットは少年兵たちが戦いに身を投じ、命を失いかねないことに納得できない。

メリビットはオルガに声をかけ、「鉄華団はみんないい子たちだわ。なのに…このままじゃ戻れなくなる」と言い、せめて年少組の少年兵たちはオルガの戦いに巻き込まないよう訴える。
だがオルガは、「戻る?どこに?」と開き直ったような笑みを浮かべて逆に聞き返す。

そこにライドとタカキが現れ、「余計なこと言うなよ」「俺たち別に巻き込まれているわけじゃないです」と言い、メリビットの訴えに反論する。

メリビットは二人の意思を尊重しながらも、「分かるわ。でも…でもね…あなた達には、本当はもっと多くの選択肢があるはずなの」と言い、命を落としかねない道に進むことを思いとどまらせようとする。

が、ライドは「やり返せずに生きてたら、ずっと苦しいまんまじゃん」と言い、メリビットの言葉を受け入れない。
ライド、タカキとしては、メリビットが自分たちを大事に思ってくれることはありがたく思うが、ビスケットの死に何もしないことは泣き寝入りするように思え、例え命の危険があってもそちらの方が耐え難いというところだろうか。

【アインとガエリオ】
ギャラルホルン本部の奥深く、巨大な研究施設をガエリオが訪れた。
すると何者かが拡声器でガエリオに呼びかけた。
ガエリオは声の主がアインと気付き、「良かった、本当に」とアインが回復したと喜ぶ。
アインもまた明るい声で「これでクランク二尉の無念を晴らすこともできる!本当にありがとうございます。」とガエリオに感謝する。

だがガエリオは、技師から見せられたアインの現状に口を絶句する。
アインは腰から下を失って上半身のみとなっており、背中、首、胸、腰でモビルスーツと接続されているのである。

【ガエリオとマクギリス】
ガエリオは別室で、アインを助けるためとはいえ、あんな姿にしてしまったことに苦悩していた。
するとマクギリスはガエリオに語りかける。
堕落したギャラルホルンに変革をもたらすのはガエリオやカルタの良心だろう。そして、例えどのような姿になっても、この戦いによってアインは英雄となれると。
マクギリスの言葉に、ガエリオは無理やり自分を納得させようとしているようである。

だがマクギリスは一人になると心中でつぶやく。
「ガエリオ、カルタ…。君たちは良き友だった。その言葉に嘘はない。君たちこそが、ギャラルホルンを変える。」

マクギリスはガエリオ、カルタに友情を抱いているが、それでもこの二人を犠牲にして自分の目的を実現しようとしているようである。マクギリスはギャラルホルンを滅ぼすこと、その中枢であるセブンスターズの壊滅を考えており、そのためにカルタをはじめとするセブンスターズの人間を抹殺しようとしているのだろうか。引き続きマクギリスの動向に注目したい。

【オルガと三日月】
吹雪の中を走る列車で、オルガは三日月にぽつりぽつりと話す。
弔い合戦などと言ってしまったが、ビスケットはこういうのが嫌で鉄華団を降りるとまで言っていたのにと。
実はオルガはビスケットの死を乗り越えてなどおらず、ビスケットの死に責任を感じ、ビスケットが反対していた戦う路線を推し進めていることに苦悩しているようである。

すると三日月は「あの日、ビスケットが言ってたよ」といい、ビスケットから聞いた言葉をオルガに伝える。
「三日月、俺は降りないよ。
僕は怖くなったんだ。
オルガの強い力に引っ張られて、こんな所まで来て。
でもそれは、僕が、みんなが望んだことだ。
だから僕は降りないよ。降りるときは…帰るときは、みんなで一緒に帰るんだ」

三日月が見張りのために立ち去ると、オルガはビスケットに語りかける。
「みんなで一緒に帰る…か。それだったらもう、どうやったって帰れねぇじゃねぇか…ビスケット」

【カルタ、決闘を申し込む】
鉄華団の列車は、前方にエイハブ・リアクターの反応を検知した。
カルタの搭乗するグレイズリッター指揮官機、そして二機のグレイズリッターである。

オルガは、モンターク商会が裏切った可能性を考えるが、まずは列車を停車させた。
一方、カルタは機体の外に姿を晒すと名乗り、モビルスーツ三機同士による決闘を申し込んだ。

これにシノは「面白ぇ!やってやろうじゃねぇか。なあ昭弘!」と言い、昭弘も決闘に闘志を燃やす。
するとアジーは「決闘なんて無駄だ」とシノと昭弘を制止し、ラフタは「数はこっちが上なんだしさ、みんなでボコ殴りにしちゃえばいいだけじゃん」と明るい声で言う。
ここらへん、合理主義に徹しきれず、売られたケンカは正々堂々と買おうとするシノと昭弘が好きである。

その間もカルタは口上を述べ、「セッティングにかかる時間を考慮し、我々は30分待とう」という。
その時、バルバトスがレンチを手に突撃。
一瞬で敵機の間合いに踏み込み、まずカルタ機の左側にいた一機をレンチで殴って撃破。
続いてカルタ機の右側の一機にレンチを繰り出して撃破、コックピットを踏み潰して止めを刺した。

三日月の容赦のない戦いぶりは正に悪鬼羅刹。
これには昭弘、シノも顔を引きつらせ、ラフタも「うわっ…グ口っ」と思わずつぶやく。

【カルタVS三日月】
カルタは「なんと…なんと卑劣な!誇り高き私の親衛隊を!」と怒り、グレイズリッター指揮官機で剣を構え、果敢にバルバトスに挑む。

だが阿頼耶識とバルバトスの機能を使いこなす三日月はカルタを圧倒。
カルタ機の斬撃をかわし、レンチを地面に突き立て、これを支柱にポールダンスのように身体を回転させて強烈な蹴りを入れる。
そしてバルバトスはレンチでカルタ機の左肩を掴むとチェーンソーを駆動、カルタ機の左腕を斬り落とす。

メリビットは少年兵たちが車外に出てバルバトスとカルタ機の戦いに見入っていることに気づいた。メリビットにしてみれば、三日月の残虐ファイトはどう考えても子供の教育に良くない。
メリビットは少年兵たちに、危ないから車内に戻るよう呼びかける。

が、少年兵たちはメリビットの言葉を拒絶し、三日月の戦いから目をそらさない。
「俺達は見なくちゃいけないんだ」
「俺達の敵を」
「三日月さんの戦いを」
「ビスケットさんの…みんなの敵討ちなんだから」

【ガエリオ、カルタを救出】
グレイズリッター指揮官機はコックピットを損傷。
カルタは負傷しながらも剣を繰り出すが、バルバトスはことごとくかわし、ついにレンチで強烈な一撃を浴びせた。
カルタ機は凍結した湖に倒れた。
氷が割れ、カルタ機の破損したコックピットはたちまち浸水し、瀕死のカルタは首まで冷水につかってしまう。

カルタはもはや戦うことなど出来ない状態だが、マクギリスの憧れた自分であり続けようとし、死を目前にしても毅然とし続けようとする。
だが、止めを刺そうと三日月がバルバトスで刃を向けた時、カルタは思わずつぶやく。
「助…けて…マクギリス…」

その時ラフタは、急接近するエイハブ・ウェーブに気付いた。
ガエリオの駆るキマリストルーパーである。

キマリストルーパーはスラスターを吹かして地上を高速で移動、瞬時にカルタ機を回収し、高速で離脱していく。
三日月は追撃しようとするが、オルガは三日月を制止していう。
「わざわざ深追いする必要はねぇ。
今のうちにとっとと進むぞ。
俺達にはもう戻る場所はねぇ。
けどな、たどりつく場所ならある。
たどりつくぞ、俺達みんなで」

【ガエリオとカルタ】
キマリストルーパーはカルタ機を連れて戦場を離脱できたが、カルタは重傷である。
ガエリオは通信機で呼びかけるが、カルタにはもはやガエリオの声と分からない。
カルタは、マクギリスが助けに来てくれたと思い、「マクギリス…助けに来て…くれた…のね…」と礼を言う。

ガエリオはマクギリスのふりをして「ああ。そうだ」と答えた。
カルタは「私は…不様だった…わね…」とマクギリスの期待に応えられなかった自分を自嘲する。

だがガエリオは言う。
「そんなことはない。お前は立派に戦ったよ、カルタ」

するとカルタは、マクギリスが認めてくれたことに礼を言う。
そしてカルタは何も言わなくなった。

【エドモントンへ】
翌朝。
鉄華団の列車でクーデリアは、針葉樹林の彼方に霞むビル群に気付いた。
そしてオルガは三日月と、ビル群に視線を送りながらつぶやく。
「とうとう来たぜ。いよいよ敵陣だ」

【予告】
次回「未来の報酬」

次回から決戦と思われる。
クーデリアの理想の行方、そして戦いに身を投ずる少年兵たちの安否、ラフタとアジーの安否が気になる。次回も注目したい。

機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 第22話「まだ還れない」

  • 2016/03/07(月) 03:33:45

【感想概略】
今回は、ビスケットを失ったオルガは茫然自失、鉄華団を率いることなど出来なくなってしまう。誰もオルガを立ち直らせることは出来ないが、三日月はオルガの部屋を訪れ…。一方、クーデリア、イズナリオ、そしてマクギリスは知略を巡らし、それぞれの目的を実現するための布陣を着々と進めていく、というお話であり、見応えがあり、面白かった。

三日月とオルガの関係は、男の友情にしてもかなり特殊である。
二人の過去に何があったのか、引き続き注目したい。

【鉄華団、船に乗る】
前回、南洋の孤島で、鉄華団はカルタ・イシュー率いるギャラルホルン部隊を迎撃して壊滅させ、蒔苗とクーデリアを守り切った。だがこの戦いでビスケットがオルガを守って重傷を負い、そのまま命を失ってしまった。

そして今回、カルタ・イシューは生き残った二機のモビルスーツに助けられ、島を離脱した。
多くの部下を失い、茫然自失のカルタである。
だが部下たちは、カルタを回収出来ただけでも僥倖、カルタさえいればいくらでも再起出来ると言い、望みを失わない。

一方、鉄華団は戦闘に勝利し、クーデリアと蒔苗を連れて無事モンターク商会の貨物船に乗船、ひとまず危機を乗り切ることが出来た。。
だがメンバーたちに勝利の喜びなどなく、みなビスケットの死に大きな衝撃を受けていた。
普段は生意気なライドも涙を抑えられず、小さな妹を学校へ通わせたいとビスケットと語り合ったタカキは泣き崩れ、アトラはビスケットのために泣いた。
シノはビスケットの亡骸に「一緒に帰ろうな、火星へよ」と語りかけるが、三日月は「まだ帰れない。仕事が終わるまでは還れないよ」と言う。この辺りが三日月のこだわるところであり、例えビスケットを失っても、例えシノは仕事を放棄して帰ろうと言っているつもりなどなくとも、訂正せずにはいられないようである。
そしてオルガは茫然自失となり、船室から一歩も出てこない。

【アンリ・フリュウとイズナリオの密談】
アーブラウ議員のアンリ・フリュウは、ギャラルホルン地球本部司令官イズナリオ・ファリドに抗議していた。蒔苗は島から一歩も出ることなく選挙は終わるはずだったの話が違うと。

これにイズナリオは動じず、まずカルタ・イシューの不手際を批判する。
これまでセブンスターズ内でのイシュー家の地位を守るため、カルタの後見人となって引き立ててやったというのに、余計な真似をしてくれたと。
そして、蒔苗の行き先は選挙の行われるエドモントンと分かっているのであり、網さえ張っていれば討ち洩らす心配は無いと断言し、あくまで強気である。

だがイズナリオは一人になると内心でつぶやく。
これまでマクギリスとボードウィン家を縁組させ、イシュー家の後見人となってセブンスターズ内での地位を固めてきた。そしてアンリ・フリュウを通じてアーブラウの実権さえ握れば自分の立場は盤石になる。ここでつまづいてなるものかと。

イズナリオはギャラルホルンの名門貴族の枠を超える権力を握ろうと画策しているのだが、彼は権力を得て何をするつもりなのだろうか。

【カルタ、艦隊と合流】
カルタは、コーリス・ステンジャ艦長率いる水上艦隊と合流、危機を脱した。
だが多くの部下を失ったカルタの怒りは収まらず、コーリス艦長に鉄華団の追撃を命じ、統制局からの即時帰還命令を無視しろと言う。

困ったコーリス艦長は、帰還命令はイズナリオ直々のものと訴えた。
さすがのカルタも、後見人であるイズナリオの意向はないがしろに出来ず、断腸の思いで鉄華団追撃を断念した。
が、「ドブネズミども…次は必ず引き裂いてやるわ!」と拳を握って再戦を誓うカルタである。

一方、ギャラルホルン本部でマクギリスはモンターク商会に通信し、鉄華団が無事船に乗ったとの連絡を受け、彼らの要望には出来る限り応えるよう指示を出した。
通信後、マクギリスは鉄華団の手並みに感嘆する。
その一方、カルタが生き残ったことを「ここらで死んでいれば、これ以上生き恥をさらさずに済んだものを」と嘲笑、カルタの生死など何とも思っていないようである。

そして「義父上の苦りきった顔が目に浮かぶようだ」と悪そうな笑みを浮かべるのだが、マクギリスのイズナリオへの憎悪の深さを伺わせる。

【マクギリスとガエリオ】
ギャラルホルンの基地の医療区画では、ガエリオを庇って瀕死の重傷を負ったアインが、生命維持装置に接続され、昏睡状態で辛うじて生きていた。だがこのままではアインに回復の見込みはない。

アインを見舞うガエリオの元をマクギリスが訪れると、ガエリオは言う。
このままではアインを救えないことは分かっている、アインの悲願である上官の仇も討たせてやりたい、だがそのために身体を機械化し、人間を捨てることをアインに求めることは、どうしても踏み切れないと。

この時代の地球では、身体に機械を埋め込むことは倫理に反することである。
ガエリオは、この倫理がギャラルホルンの支配のために意図的に広められたことを知ってはいる。
だがそれでもガエリオは、長年正しいと信じてきた倫理に反することをアインに行なうことにはどうしても強い抵抗を感じずにはいられない。

するとマクギリスは言う。
「人間であることを捨てる…か。今の世は、まさにその選択の上に築かれたと言ってもいいだろうな」

そしてマクギリスはアインに説き始める。
阿頼耶識システムとは、元々は厄祭戦により滅亡に瀕した人類を救うため、戦争を武力で終わらせるために志を同じくする人々が国や経済圏を超えて編成した組織で開発されたものであり、その組織が後にギャラルホルンになったのだと。

マクギリスは言外に、阿頼耶識も、人体に機械を埋め込むことも、元々は否定的なものではなかったと説く。
これにガエリオは、阿頼耶識への抵抗が若干少なくなった様子である。

続けてマクギリスは、かつて人類を救ったギャラルホルンも、300年の間に腐敗、弱体化し、権力闘争の温床と成り果てたと批判。
さらにカルタ・イシューが鉄華団の追撃に失敗し、鉄華団は太平洋上で消息を絶ったことを明かす。
衛星監視網で補足できないのはギャラルホルン内部に情報提供者がいるのだろうと言い、「腐敗ここに極まれりさ」としれっと言う。
これにガエリオは、まさか目の前にその情報提供者がいるとは思わず「下劣な!アインの忠誠心を少しは見習うがいい」とアインと組織のために憤るのである。

マクギリスはガエリオを連れて基地の奥深くに進んでいく。
そこは、近年まで阿頼耶識の研究が行われていた巨大な研究施設であり、無人のモビルスーツが立ち並んでいる。

そしてマクギリスはガエリオに畳み掛ける。
「示すんだ。身を捨てて地球を守ったギャラルホルンの原点を。
お前と阿頼耶識を纏ったアインとで、あの宇宙ネズミどもを駆逐し、我々こそが組織を正しく導けるのだと分からせてやれ。」

ガエリオはマクギリスの言葉に、かなり心を動かされているようである。
一方マクギリスはガエリオを煽って何を企んでいるのだろうか。

【鉄華団、立ち直れず】
鉄華団とクーデリア、そして蒔苗を乗せた貨物船は夜の太平洋を航行する。
が、少年兵たちは誰もビスケットの死を受け止めきれず、船内は依然として悲痛な空気に包まれている。

船内の食堂では、タカキは目の前でビスケットを失ったオルガの苦しみを思い、ライドはギャラルホルンを恨まなければ耐えられず、二人は些細なことからケンカになりかける。

そんな二人を、雪之丞は「もめ事ならよそでやんな。飯に埃が掛かっからよ」とやんわりと止め、落ち着かせた。
そして打ちひしがれたアトラに、「こいつはイケるなぁ」とスープの味を褒め、気を紛らわせる。
これに「よかった。へへっ」と空元気を出すアトラもいい子だと思う。

メリビットはオルガを案じ、食事をオルガの部屋に運ぶが、オルガの返事は無く、虚しく食堂に戻ってきた。
メリビットは雪之丞に「こういう時、どうしてあげたらいいんでしょう…」と相談する。

すると雪之丞はいう。
「ほっとくしかねぇさ。
何を言ったところで慰めにもならねぇ。
まあ今回は、だいぶ思い詰めちまってるみてぇだがな。
こんな時こそ、オルガがビシッと引き締めてやるのが一番なんだがよ」

【クーデリアと蒔苗】
船内の蒔苗の部屋をクーデリアが訪れた。
蒔苗は「年端もいかぬ子供には、仲間の死はさぞかし辛かろう」と同情し、「鉄華団はこのまま、すっかり戦意を喪失してしまうやもしれんのう」と言う。そうなったら蒔苗も困ると思うのだが、なぜか蒔苗は余裕である。

するとクーデリアは、仮に鉄華団が今回の仕事を降りるとしても自分に止めることは出来ない、そうなっても自分一人で蒔苗をアーブラウの会議場のあるエドモントンに送り届けると言う。
そして具体的な作戦を提案しはじめた。

そもそもギャラルホルンは蒔苗の行き先がエドモントンと分かっており、そこまでに二重三重の罠を張っていると考えられる。
そこで、まず船の行き先をアラスカのアンカレッジに変更する。
そしてアンカレッジの港で下船し、テイワズの現地法人の持つ鉄道に乗り換える。
この鉄道は、週に一度の定期貨物便であり、定期便なのでギャラルホルンに怪しまれる可能性は低い。
また都市部を外れた路線なので、エイハブ・リアクターによる電波障害を引き起こす心配もなく、堂々とモビルスーツを運搬できる。
この件、すでにテイワズ、モンターク商会と話しはついていると微笑むクーデリアである。

蒔苗はクーデリアの作戦に感嘆、了承した。
クーデリアは礼を言うと、「つきましては蒔苗さんにも、いくつかお願いしたいことがあります」と言い、二点要望した。

まずアンカレッジにいる、蒔苗派の有力議員ラスカー・アレジの力を借り、鉄道への乗り換えが目立たず速やかに行われるよう手配すること。
そして、代表選挙で蒔苗が再選されるよう、議会でのロビー活動を行なうこと。

蒔苗はこちらについても快諾した。

すっかりたくましくなったクーデリアであり、仮に鉄華団が降りたとしても、別の民間軍事会社を雇うなどして目的実現に最善を尽くすのだろう。

蒔苗は愉快そうにクーデリアを評する。
「火星の独立をうたい民衆の心を動かすロマンチストの面を持ちながら、ハーフメタルの自由化という具体的な成果を手にしようとするリアリストでもある。お前さんは、良いリーダーになるだろうなあ」

これにクーデリアは言う。
「いいえ。私はリーダーになど…
私がなりたいのは…希望。
たとえこの手を血に染めても、そこにたった一つ人々の希望が残れば…」

【メリビットとラフタ、アジー】
メリビットは、ラフタとアジーに、少年兵たちに何か出来ないかと相談する。
だがラフタは「どうしようもないんじゃない」と冷静である。

これにメリビットは「冷たいんですね。あの子たち、ああ見えてもまだ子供なんですよ」と言い、すっかり少年兵たちに肩入れして腹を立てる。

するとラフタは自分たちも少年兵たちと同じなのだと言い、タービンズについて明かす。
「タービンズって他に行き場所がない女たちの避難場所だったりするんだよね。
うちに拾ってもらえなかったらどうなってたか分かんない子いっぱいいる。
ダーリンは「全員俺の女だ~」とか言っちゃってるけどね。」

そしてアジーは言うのである。
「あの子たちなら、きっと自分たちで結論を出すよ。
私たちは名瀬の代わりに、それを全力でフォローするだけ」

【三日月とオルガ】
三日月はオルガの部屋に行く途中、メリビットと出くわした。
「今はなるべく、そっとしておいてあげて」というメリビットに、三日月は苛立ったような目を向ける。

一方オルガは、ビスケットとの日々を思い出し、ビスケットの最後の言葉を思い出し、苦痛と後悔と自責の念に苛まれていた。
その時、三日月がオルガの部屋のドアを開けた。

オルガは三日月を見ると、ぽつりぽつりと話しだす
「ビスケットがよ、言ったんだ。鉄華団を降りるって。
俺は自分から危険な道ばかり進もうとするんだってよ。
だとしたらあいつは、俺に殺されたってことだよな」

オルガは意識していないだろうが、これは三日月以外の誰にも言えない言葉だろう。
そしてオルガとしては、心の底では、三日月に慰めて欲しい、優しい言葉をかけてほしいという気持ちがあったのではないか。

また三日月は、仲間に対しての心配りは細やかであり、優しい言葉の一つも言えない訳ではないだろう。
だが三日月は、オルガの言葉に答えずに問う。
「オルガ。次は俺、どうすればいい?」

さすがのオルガも「勘弁してくれよミカ。俺は…」と少し苛立ったように言う。
が、三日月は「ダメだよオルガ。俺はまだ止まれない」と全く容赦しない。

「待ってろよ」というオルガの胸ぐらを掴み、オルガの目を真っ直ぐ見て言う。
「教えてくれオルガ。
ここが俺たちの場所なの?
そこに着くまで俺は止まらない。止まれない。
決めたんだ。あの日に決まったんだ。
ねえ、何人殺せばいい?あと何人殺せばそこへ着ける?
教えてくれオルガ。オルガ・イツカ。
連れていってくれるんだろ?
俺は次、どうすればいいんだ?」

オルガも三日月も、三日月が初めて人を殺した日のこと、オルガが三日月に約束した日のことを思い出す。
そしてオルガは、胸ぐらを掴む三日月と突き飛ばし、立ち上がって叫ぶ。
「ああ分かったよ!連れてってやるよ!
どうせ後戻りはできねぇんだ。
連れてきゃいいんだろ!
途中にどんな地獄が待っていようとお前を…お前らを俺が連れてってやるよ!」

これに三日月は満足したのか、薄く笑って言う。
「ああそうだよ。連れてってくれ。
次は誰を殺せばいい?何を壊せばいい?
オルガが目指す場所へ行けるんだったら、なんだってやってやるよ」

オルガは三日月の目を見て、狂気じみた笑みを浮かべる。
その心中にあるのは、ビスケットの死を狂気で乗り越える力を与えてくれたことへの喜びか、彼の内心は測りようがない。

【オルガの演説】
翌日。
オルガは甲板で仲間たちを前に演説する。
まずビスケットの死を悼み、そして彼は誰よりも責任感が強かった、だから彼が安心できるようこの仕事は最後まできっちり終わらせると言い、仕事継続の士気を高めた。
続けて、地球には鉄華団を潰したがっている奴らがいる、ビスケットもその犠牲になったと言い、ギャラルホルンへの敵意を高めた。

そしてオルガは言うのである。
「けど奴らは分かってねぇ。
鉄華団はただのガキの集まりじゃねぇってことをな。
今までは攻撃を受ける度、降りかかる火の粉だと思って払ってきた。
こっから先はそうじゃねぇ!
今から俺たちの前に立ち塞がる奴は、誰であろうとぶっ潰す。
そうだろ?ミカ」

三日月が「ああ。邪魔する奴は全部敵だ」と敵への殺気を放ちながら答えると、オルガは「こいつはビスケットの…いやビスケットだけじゃねぇ。今まで死んでいった仲間たち全員の弔い合戦だ」と叫び、演説を締めくくった。

このオルガの言葉にメリビットは驚き、「待って!目的は蒔苗さんを送り届けることで、仇討ちではないでしょう?!」というが、三日月は「同じだよ。ギャラルホルンを潰さなきゃ俺たちが潰される。」という。

メリビットは弔い合戦という路線を何とか思いとどまらせようとするが、雪之丞はそれを止めて「あんたの言ってることは正しいが、今こいつらの耳には入りゃしねぇよ」という。
雪之丞としては、少年兵たちがビスケットの死を受け止めるには、仇を討つとでも思うしかないのであり、自分はせめて機体の整備で少年兵たちを支えるしかないというところだろうか。

ラフタ、アジー、エーコは少し悲しそうな笑みを浮かべ、少年兵たちの弔い合戦を受け入れた。
そしてアジーは言う。
「この子たちが死なないように、できるだけ手伝うしかないね」

間もなく、船はアーブラウ領アンカレッジに到着。
クーデリアと蒔苗、そして鉄華団は無事列車に乗り込み、エドモントンに向けて出発した。


【予告】
次回「最後の嘘」

次回は、ファリド家の養子となった頃のマクギリス、カルタの過去がまず描かれるようである。なぜマクギリスがカルタにあれほど冷たいのか、その理由の一端が描かれるだろうか。
そしてモビルスーツ戦にも期待したい。


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