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アルスラーン戦記 第20章「騎士の素顔」

  • 2015/08/24(月) 01:28:52

【感想概略】
今回は、アルスラーンとエトワールが偶然再会し、この再会によってアルスラーンはパルスをよりよい国とするためにはヒルメスを退けることも辞さぬ覚悟を固め、エトワールはパルス人に対し、「邪悪な異教徒」とは決めつけられない複雑な思いを抱くというお話であり、おもしろかった。
また、エトワールが従軍して軍功を挙げようとする事情が明かされ、大所帯となり古参と新参者の対立が発生するアルスラーン陣営をいかに円滑に運営するかというナルサスの智略が描かれ、戦国絵巻のおもしろさも楽しめた。

【ペシャワール城に諸侯集結】
前回、アルスラーンは東方要塞ペシャワールでルシタニア追討令、奴隷解放令を発布し、国内諸侯に打倒ルシタニアのため参集するよう檄を飛ばした。
そして今回、ペシャワール城には、兵を率いた諸侯が続々と集まっていた。

集まった諸侯は、まずオクサス領主の息子ザラーヴァント。
万騎長シャプールの弟・イスファーン。
レイの城主・ルーシャン。
などなど、多士済々のようである。

アルスラーンはペシャワール城の大広間の壇上で、参集した諸侯たちの挨拶を受けていた。
この様子を物陰から眺めるアルフリードはファランギースに、自分たちは歴史の分岐点を目の当たりにしているのかもしれないと興奮気味である。
一方ファランギースは、歴史の分岐点という言葉には同意しつつも、味方が大幅に増えつつあることを単純には喜べないようで、物憂げな表情である。

【ダリューンとナルサス】
アルスラーンの諸侯引見の後、ダリューンはナルサスに、これほど人が集まるとは思わなかったと言い、少し驚いている様子である。
するとナルサスは不敵に笑っていう。
諸侯たちにも思惑がある、早めにアルスラーン陣営に参加して軍功を上げて発言力を強め、奴隷解放を思いとどまるよう、アルスラーンを説得するつもりなのだと。

【ジャスワントVSザラーヴァント】
ペシャワール城のアルスラーン陣営では、ナルサスたち古参に対する新参者の不満が高まりつつあった。

夜、新参の将ザラーヴァントはアルスラーンの部屋を訪れた。
が、部屋の入口をジャスワントが見張っており、ザラーヴァントを頑として部屋に入れようとしない。
ジャスワントとしては、夜にいきなりアルスラーンに会いに来た無礼者を通さないのは、アルスラーンの安全のため当然のことである。

だがザラーヴァントは、ジャスワントの取り付く島もない態度に納得がいかない。
そもそも外国人であるジャスワントが、アルスラーンの忠臣顔をしているのも気に食わない。
ザラーヴァントはジャスワントを罵倒、黒犬と罵った。

ジャスワントは激怒して槍を構え、ザラーヴァントも剣を抜く。
二人が同時に一撃を繰り出した瞬間、何者かが割って入り、二人の槍と剣を受けとめた。
双刀将軍キシュワードの仕業である。

キシュワードにたしなめられ、ジャスワントとザラーヴァントは渋々剣を収めた。

【ナルサスの策】
ナルサスとダリューンを、血相を変えたアルスラーンが訪ねた。
ジャスワントとザラーヴァントが斬り結んだと聞いたからである。

ナルサスは言う。
新参の将たちの不満が高まりつつある、彼らはアルスラーンが側近ばかりを重用しているように思っていると。

アルスラーンとしては、自分は皆を平等に扱っているつもりなのに、なぜ分かってくれないのかと少し悔しそうな表情を見せる。
が、アルスラーンはすぐに表情をあらため、どうすれば良いかナルサスに意見を求めた。

するとナルサスは言う。
自分は宰相に等しいサトライプという地位についているが、今後はルーシャンをサトライプとすれば良い。

それで良いのかとナルサスは問われると、自分は軍権を握ってさえいれば良いと笑う。

間もなくこの人事は実行された。
アルスラーンは新参の将であっても重く用いることを示すことになり、新参の将たちはひとまず納得したようである。

【ルーシャン、アルスラーン支持を表明】
アルスラーン陣営の内部対立は一段落した。
だがアルスラーンには王位をめぐり、ヒルメスという競争者が存在する。
そしてアルスラーンは自分が王となってよいものか思い悩んでおり、ヒルメスに深く同情している。

ナルサスは、アルスラーン陣営の首脳陣とルーシャンを集めて会議を開いた。
そしてルーシャンにヒルメスが存命であり、ルシタニアの客将となっていることを明かした。

ルーシャンはヒルメス存命に複雑な様子である。
が、自分が王となるためにパルスを焼土とし、パルスの民を苦しめたヒルメスの行動は肯定できるものではなく、あくまでアルスラーンを支持することを宣言する。

だがアルスラーン自身は、パルスの民を救うためルシタニアを追い出すことに迷いはないが、ヒルメスを退けてでも王となることは、決意できない。

その頃、ザーブル城のボダン一味と戦っていたヒルメスは、ついに城に攻め込み、立ち塞がる聖騎士団を次々と討ち取り、ついに城を奪った。
だがボダンには逃げられてしまう。

【エトワール、一人で偵察に出発】
ペシャワール城の近くの森で、ルシタニアの小隊が野宿し、焚き火を囲んでいた。
かつてエクバターナでアルスラーンと出会ったエトワールが率いる部隊である。

だが兵たちはこの任務に不満そうである。
兵の一人は「エトワールさまは功を焦っておいでなのさ」と言い、隊長の陰口を言う。

その時、袋を肩にかついだエトワールが背後に現れた。
陰口を聞かれた兵は焦りまくるが、エトワールは咎めず、お前たちの気持ちも分かると言い、偵察には自分ひとりで行くという。

エトワールはひとり夜の森を歩きながら、「焦っている」という兵のことばに神妙な表情である。
そしてこの任務に志願した時のことを思い出していた。

エトワールは、聖マヌエル城の城主バルカシオンに、ペシャワール城の偵察を志願した。
バルカシオンは人の良さそうな老騎士であり、血気盛んなエトワールに、危険なことは思いとどまるよう諭す。
だがエトワールは引き下がらず、ついにバルカシオンを押し切ってしまったのである。

エトワールは川岸に着くと兜を脱ぎ、頭巾状の鎖帷子を脱ぐ。
すると、豊かな金色の長髪が現れた。

水面に映るエトワールは金髪の美少女だが、その表情は険しい。
エトワールは心中で「私は立派な騎士にならないといけない。故郷の領民のためにも」とつぶやき、水面に拳を叩きつけた。

【エトワールの変装】
ペシャワール城外には、多数の馬車が止まり、大勢の人々が立ち働いていた。
ここで商人の一人に話を聞く若い女性がいた。
変装したエトワールである。

エトワールは白いブラウスに紺色のロングスカート、そして薄紫色のヴェールを纏い、なかなかの美少女ぶりである。

そしてエトワールは商人から、ペシャワール城にはパルス中から大勢の兵士が集まっていることを聞き出した。

【エトワール、ペシャワール城の宴会に潜入】
ペシャワール城では宴会が行われていた。
おそらく、新参の古参の将兵たちの親睦のためだろう。

エトワールは下働きとして城内に潜入、パルス将兵たちに酌をして回りながら、聞き耳を立てていた。
ザラーヴァントは酔いが回り、上機嫌で打倒ルシタニアの挙兵は五月十日だなどと大声で話している。
エトワールは、馴れ馴れしく肩に手をかける兵を思わず怒鳴りつけてしまうが、その一方で兵たちがアルスラーンの掲げる奴隷解放について話していることが気になる様子である。

【エトワールとアルフリード】
宴会場から少し離れた城の中庭で、エトワールは憤っていた。
「何なんだ、パルスの兵士どもは!勝った後ならともかく!」

するとエトワールに一人の少女が声をかけた。
アルフリードである。

アルフリードは、エトワールが下働きとして頑張っていると思って励ました。
そして笑顔で自らを「ナルサスの情婦」と名乗り、走り去るのだった。

これにエトワールは怒りを覚えた。
「地位にものを言わせて、若い女を妾にしてるのか。
やはりパルスは乱れている」

エトワールとしては、乱れたパルス人どもは、イアルダボード教によって正しい生き方に導かねばならないと再認識したというところだろうか。

そこに酔った兵が現れ、エトワールの肩に馴れ馴れしく腕を回した。
そして自らを騎士と名乗り、「俺と仲良くしておいて損はないぜ」とエトワールに迫る。

この騎士の名を汚す振る舞いにエトワールは激怒。
酔った兵の腕を掴んで一本背負いを浴びせ、石畳に叩きつけた。
兵は一撃で意識を失った。

気絶した兵を前にエトワールは我に返り、またやってしまった、どうしよう?!いっそこの兵を殺すか?!と頭を抱える。

そんなエトワールに何者かが声をかけた。
アルスラーンである。

【エトワール、アルスラーンと再会】
エトワールは、アルスラーンに気付いた。
(前に会ったパルスの坊っちゃんじゃないか。アホ面のくせに、悪運は強い)

一方アルスラーンは、変装したエトワールが誰なのか気づかない。
だがアルスラーンは、エトワールが困っていることに気付くと、気絶した兵を木の根元に寝かせ、エトワールの手をとって駈け出した。
見張りの目を盗んで城外まで案内するつもりである。

【エトワールとアルスラーン】
アルスラーンはエトワールを連れ、物陰に隠れながら城壁の上に辿り着いた。
走り続けてひと休みするアルスラーンが戦いにいくつもりだと知ると、エトワールは言う。
「あなたは、あまり強いように見えませんが。なぜあなたは戦場に赴くのですか?」

エトワールの率直な物言いに少し傷つきながらもアルスラーンは言う。
「昔、奴隷として連れて来られた、ルシタニアの少年と会ったのだ。」

エトワールは自分のことだとギクリとするが、アルスラーンは全く気付かずに話を続ける。
「その少年から初めて、パルス以外の国の話を聞いた。
自分が生きてきた環境や制度だけが全てでないと。
パルスという国の、良いところも悪いところも見えてきた。
だから、この戦いをきっかけに、パルスを少しでも良くしたいと。」

するとエトワールは好ましい笑みを浮かべて言う。
「国をどうこうするなど、お主ではなく、王の仕事であろう。
だが、国と民のためを考えての行動に出自など関係ない。
それはとても尊いことだ」

エトワールの言葉に、アルスラーンは何か気付いたような表情を浮かべる。
そしてすっきりした笑顔でエトワールに言う。
「お主と話していると、気付かされることがあるな。
あの時のルシタニアの少年のことを思い出した」

エトワールはギクリとするが「おほほほっ」と笑ってごまかすのだった。

【エトワール、ペシャワール城を脱出】
アルスラーンはエトワールを連れて、ペシャワール城の裏口に辿り着いた。
ここには見張りはおらず、裏口を出ると商人たちの馬車が多数止まっている。

アルスラーンはエトワールに、馬車の荷台に隠れていれば、他の商人や女性たちが帰る時、一緒に帰れるという。

エトワールはアルスラーンに礼を言い、「戦で命を落とさないよう気をつけて」と声をかけ、二人は別れた。

馬車に隠れながらエトワールは笑みを浮かべる。
「ただの甘ったれたお坊ちゃんだと思っていたが、パルスにも少しはまともな奴がいる。
戦場で会わないよう祈っておくか。」

そしてエトワールは、そういえばアルスラーンの名前を聞いていないことに気付くのだった。

【アルスラーン、四将に協力を求める】
翌朝。
アルスラーンは城内の会議室に、ナルサス、ダリューン、キシュワード、ルーシャンを集めた。
そして4人に言う。
「我々はエクバターナを、パルスを、ルシタニアから取り戻す。
そして国を取り戻したら、従兄弟殿に王位を譲るつもりはない。
私の夢に、力を借してくれるか?」

アルスラーンは、自らの手で王として奴隷解放を実現することを、そのためにはヒルメスを退けることを辞さないことを決意したのである。

すると4人の将は片膝をついて礼を執り、アルスラーンの理想に力を尽くすことを誓う。
そしてダリューンは精悍な笑みを浮かべて言うのである。
「無論でございます。
このダリューンが、否、ペシャワール城の全ての者が、殿下の目標のための力となりましょう」


【予告】
次回「別れの詩」

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