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アルスラーン戦記 第21章「別れの詩」

  • 2015/08/30(日) 23:59:40

【感想概略】
今回は、アルスラーン陣営の内部対立を和らげるため、ギーヴが憎まれ役となって出奔し、ザラーヴァント、イスファーン、トゥースの三人がアルスラーンの人間性に触れて心酔、アルスラーンに改めて忠誠を誓うお話であり、面白かった。

ギーヴは、もともとはファランギース目当てでアルスラーンたちと行動を共にするようになった男である。
だが、アルスラーンの人間性を知るにつれ、アルスラーンに情がうつり、今ではアルスラーンのために憎まれ役となり、そしてファランギースと離れてアルスラーンのために一人旅をすることに何の疑問も持っていない。
このギーヴの姿が今回の大きな見どころだったと思う。

また、ギーヴが追放される時、なんとか思いとどまらせようとするキシュワードは何ていい人なんだろうと思った。

【アルスラーン陣営の内部対立】
前回、アルスラーンは新参の将ルーシャンをサトライプに任命、これによりアルスラーンは側近ばかりを重用する訳ではないことを示し、新参の将たちの不満はある程度は和らいだ。
またルーシャンは実務家として有能かつ勤勉であったようで、出陣の準備は順調に進んでおり、これにはナルサスも笑顔である。

だが、新参の将たちの不満はなかなかに根深い。
新参の将たちにしてみれば、アルスラーンの側近のほとんどは、身分や家柄、宮廷内の地位を重んずる従来のパルス貴人の価値観からすると、見劣りのする人々ばかりである。

まずダリューンは、アトロパネテ会戦直前に万騎長の地位をアンドラゴラス三世から剥奪されている。
軍師ナルサスは智略で三ヶ国連合軍を撃退したものの、アンドラゴラス三世の不興を買い宮廷から追放されている。
ファランギースはただの神官。
エラムは解放奴隷の子。
アルフリードは山賊を働くゾット族。
ジャスワントは外国人。
そしてギーヴは楽士などという得体のしれない人物である。

これにギーヴは一計を案じ、ナルサス、ダリューンと相談した。

【ギーヴ追放】
そして出陣前夜。
イスファーンがギーヴに激怒した。

イスファーンの兄・シャプールはアトロパネテ会戦でルシタニアの捕虜となり、エクバターナの城外でボダン大司祭から拷問を受け、せめてパルスの矢で死ぬことを望んだ。ギーヴはこれに応えて塔の上からシャプールの眉間を射抜き、拷問の辱めと苦痛から解放した。
だがイスファーンは、理屈では分かってはいてもギーヴに対して複雑な思いを抱いており、それがギーヴのからかうような態度に怒りが爆発したのである。

激怒するイスファーンに、ギーヴは薄笑いを浮かべ、シャプールを苦しみから救ったことに恨まれる筋合いはない、むしろ礼を言われても良いくらいだと言う。
これにイスファーンは抜刀、ギーヴも剣を抜き、激しく打ち合う。
見かねたファランギースは二人の間に短刀を投げ、ケンカを中断させた。

そしてダリューンを伴ったアルスラーンが姿を見せた。
ダリューンはギーヴを殴り、イスファーンを挑発したことを叱責した。
「以前よりお前の勝手な行動は目に余っていた。
殿下のお優しさに甘えるのもいい加減にしてもらおう」

だがギーヴは、ダリューンが相手でも全く怯まない。
「口を開けば『殿下、殿下』。
あんたこそ、ちょっと過保護すぎやしないか?」

そしてアルスラーンはギーヴに追放を言い渡した。

すると殴られて頬を腫らしたギーヴは薄く笑って言う。
「良い機会だ…。
殿下には世話になったが、もともと俺は宮仕えなど性に合わなくてな…。
お達者で、殿下。ご武運を祈ってますよ。」

双刀将軍キシュワードは、何とか取りなそうとするが、ギーヴは出て行ってしまった。

【アルスラーン軍、出陣】
ペシャワール城の一室で、アルスラーンは「あれでよかったのだな」とナルサスに言う。
先ほどのギーヴ追放は、実は全て芝居であった。

ナルサスは、アルスラーンに心情的に辛いことをさせたことを詫びるが、「彼が憎まれ役を引き受けてくれたことで、ひとまず諸侯たちの不満を抑えることが出来たでしょう」と言う。

アルスラーンは傷ついた表情を見せながらも納得した。
そして翌日、アルスラーンは軍勢を率い、ペシャワール城を出陣した。

一方、エクバターナのルシタニア本陣もペシャワール城のアルスラーン陣営の動きは察知していた。
宰相兼国軍最高司令官の王弟ギスカールは部下から、パルス全土に散っていたルシタニア部隊はエクバターナに再集結しつつあるとの報告を受けるが、銀仮面の部隊は、未だ姿を見せないという。

するとギスカールは不敵な笑みを浮かべて言う。
「よい。放っておいても奴は必ずここへ来るだろう。
アルスラーンの首を掻き切るためにな。
利用できるうちは、利用してやるまでだ。
最後に笑うのは誰か、楽しみにしているがよい」

【アルスラーン軍の軍議】
アルスラーンは諸将を集め、ナルサスを進行役として軍議を開いていた。
軍師ナルサスは、エクバターナ攻略のため、まずは聖マヌエル城を攻略することを進言する。
さらにナルサスは、この聖マヌエル城の城守バルカシオンは、ルシタニア本国では王立図書館長を務めた人物であり、もともと武人ではなく、これが攻略の鍵となるという。

諸将に異論はなく、アルスラーンは聖マヌエル城の奪還を全軍に命じた。

だがここで、ザラーヴァント、イスファーン、トゥースの三人が、アルスラーン軍の進軍路の近くに位置するチャスーム城塞の攻略を願い出た。この三人、一刻も早く何らかの戦功を挙げたいようである。

が、ナルサスは「頼もしい申し出ですが、その必要はありません。戦略上、このチャスームを攻める必要はないということです」と言い、三将の顔を立てながらも、攻略提案をやんわりと退ける。

そしてアルスラーンは「戦わずにすむ戦で、大事な将兵を失いたくはない。ここは退いてくれぬか?」と三将を説得する。王太子が部下を説得しようとすることに、三将は少し驚いた表情を見せながらも、この場はアルスラーンの言葉を受け入れた。

【チャスーム城塞の攻略】
アルスラーン軍の先鋒は、ザラーヴァント、イスファーン、トゥースがそれぞれ率いる部隊である。
だがザラーヴァント、イスファーンはどんどん行軍速度を上げ、本隊を大きく引き離して走り始めた。これにトゥースは内心で舌打ちしながらも騎兵500を率い、ザラーヴァント隊、イスファーン隊の後をおう。

まもなく、ザラーヴァント、イスファーン、トゥースはチャスーム城塞に突撃、城塞の側面に回りこむ。
が、背後に岩山から丸太や岩が次々と落下。
道を塞がれ、アルスラーン本隊から分断されてしまう。
これぞ、地形を最大限に活かし、トラップで敵兵を分断し、各個撃破するチャスーム城塞の戦法である。

【アルスラーン、三将の救出を指示】
夕方、アルスラーン軍はザラーヴァント、イスファーン、トゥースの部隊が敵軍の罠にはまったことを知るが、アルスラーンには、味方を捨て駒にするという選択はない。

アルスラーンは、進軍停止と救出部隊の準備を命じた。
これにナルサスとダリューンは好ましい笑みを浮かべる。

そしてナルサスはアルスラーンの指示を承諾。
さらにエラムとアルフリードを既に偵察に出したことを報告するのである。

間もなく日が沈み、エラムとアルフリードが帰還するが、さすがの二人も闇の中を行動する部隊は発見できなかった。
このままでは、ザラーヴァント、イスファーン、トゥースの部隊は闇の中でルシタニアに壊滅させられてしまう。

その時、アルスラーンは闇の中で何か音を聞いた。
それは琵琶を爪弾く音色である。

これにファランギースは「どうやら物好きな精霊が、彼らの居場所を教えてくれているようですな」と笑う。

【三将、友軍に合流】
ザラーヴァント、イスファーン、トゥースの部隊は敵地で孤立。
敵の大軍に囲まれていた。

三人は死を覚悟した。
そして自分たちが捨て駒となることで、アルスラーンの本隊は無傷で進軍できる、そう考えれば決して無駄死ではないと笑う。

その時、敵の背後に騎兵部隊が突撃、ルシタニア部隊を撃破しはじめた。
ダリューンの率いる部隊である。

ザラーヴァント、イスファーン、トゥースの三人はこの機を逃さず友軍と合流、壊滅の危機を脱した。

【三将、アルスラーンに忠誠を誓う】
アルスラーンの前で、ザラーヴァント、イスファーン、トゥースの三人は膝をつき、頭を下げていた
ザラーヴァントは言う。
「なぜ戻って来られたのですか?我々を捨て駒にして、そのまま先に進んでしまえばよかったものを…」

するとアルスラーンは言う。
「国を取り戻すためのこれからの戦い、多くの犠牲が必要だろう。
だがそれでも私は、少しでも多くの者に生きてほしい。
どうかお主たちの力を、生きるために借してくれまいか?」

ザラーヴァント、イスファーン、トゥースはようやく理解した。
アルスラーンにとって部下とは、それぞれ尊厳を持つ人間なのであり、決して戦争ゲームの駒なのではないのだと。

ザラーヴァント、イスファーン、トゥースは主君への礼をとり、改めてアルスラーンに忠誠を誓うのであった。

【ギーヴ、アルスラーンのために旅立つ】
一方、崖の上から一件落着を見届けたギーヴは、一人旅立とうとしていた。
そこにファランギースが現れ、「何も言わずに行くつもりか?」と尋ねる。
これにギーヴは、「宮仕えが性に合わんってのは本当だからな。しばらく戻るつもりはない」と答える。

ファランギースはこれ以上は止めず、アルスラーンの伝言を伝えた。
するとギーヴは「生きることは旅立つこと、死もまた同じ」と四行詩を詠じ、軽そうな笑みを残して去った。


【予告】
次回「出撃前夜」

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