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アルスラーン戦記 第22章「出撃前夜」

  • 2015/09/06(日) 23:11:42

【感想概略】
今回は、決戦を前にしたアルスラーン陣営、そしてナルサスの策を見破るギスカールの智略と内部対立を抱えたルシタニアの内情が描かれ、解放された奴隷が自分の人生を自分の意志で生きるきっかけをアルスラーンによって得る姿が描かれ、イアルダボート教だけが正しいと教わってきたのに異教徒の力を借りることを命じられて苦悩するエトワールの姿が描かれ、面白かった。

【アルスラーン軍の進軍】
パルス暦321年5月。
アルスラーンはルシタニア追討のた、兵6万を率いてペシャワール城を出陣、大陸公路を王都エクバターナに向けて進軍していた。

その先鋒一万を率いるのは、若き三将、オクサス領主の息子ザラーヴァント、万騎長シャプールの弟・イスファーン、そしてザラの守備隊長トゥースである。

【ギスカール、アルスラーン軍の迎撃を命令】
一方、王都エクバターナでは、宰相兼国軍最高司令官のギスカールが諸将を集め、アルスラーン軍接近について会議を開いていた。

ルシタニア側は、アルスラーン陣営が兵6万と発表していることを掴んでいた。
だがどこの国でも、発表される兵数は、実数より多いものである。
これは自軍に対しては景気付けのため、敵に対しては萎縮効果を狙ってのものである。

ルシタニア諸将は、この常識からアルスラーン軍の実数は3~4万と推測、現状の兵力で十分対処可能と考えた。
が、ギスカールはそうは思わず、これもまたアルスラーン陣営の策である可能性を指摘、エクバターナの兵10万を集めて迎え撃つよう指示した。

ルシタニア諸将は、ギスカールの指示に難色を示す。
これは、アルスラーン軍がやはり3~4万だった場合は過剰な出費になってしまうことを考えてのことだろう。

その時、会議の場に、ザーブル城攻略から帰還した銀仮面が現れ、ギスカールの作戦を支持し、兵7万を貸してほしいと申し出た。
自分の率いるパルス兵3万と加えれば兵10万となり、これでアルスラーン軍を討つというのである。

諸将は銀仮面に反発するがギスカールは銀仮面の申し出を承諾した。
だがギスカールは銀仮面に全く気を許しておらず、兵7万を与えた訳ではなく、あくまで貸したのだと念を押すのである。

【エラムとアルフリード、王都に潜入】
王都エクバターナには、エラムとアルフリードが潜入、兵達のよく集る酒場に潜り込んでいた。

酒場では、ヒルメス配下の兵が上機嫌で酒をおごっていた。どうやらザーブル城攻略により、かなり褒美をもらったようであり、パルス兵たちは皆笑顔である。

だが、酒場のルシタニア兵たちは敗戦国のパルス兵が大きな顔をしていることが不愉快そうである。そしてアルスラーン討伐の指揮をとるのが外国人である銀仮面であることも、納得しがたい様子である。

【ヒルメスとアンドラゴラス三世】
パルス王宮の地下牢を銀仮面ことヒルメスが訪れた。
ここには、アトロパネテ会戦に敗北して捕らえられたパルス国王アンドラゴラス三世が捕らえられているのである。

獄中のアンドラゴラス三世は両腕を拘束されて肘も肩も曲げることが出来ず、全身に拷問の跡があり、痛ましい姿である。
が、アンドラゴラス三世の眼光は鋭く、虜囚の身であっても全く臆するところがない。

ヒルメスは、アンドラゴラス三世に明日出陣することを告げる。
だがアンドラゴラス三世は、外国の手先となって自分を国王の座から引きずり下ろし、それでパルスの王になれると思っているのかと言う。

不愉快そうなヒルメスに、アンドラゴラス三世は謎めいたことを言い出す。
「お主は何一つ分かっておらぬ。
全ては予言通り。
運命の歯車は回っているにすぎん。
お主が知らぬだけのこと。
このわしに勝ったと思うなよ、小僧」

ヒルメスは、今度来る時はアルスラーンの首を土産に持ってくると言い捨てて地下牢を去るが、アンドラゴラス三世の言葉と態度が気になる様子である。

翌日。
ヒルメスは、サームとザンデを将軍として、10万の兵を率いて出陣した。
サームは、この戦いが終わったら、ルシタニアを追い出してパルス国王に即位するようヒルメスに訴える。
ヒルメスは、当然のことと答えるが、凶悪な表情である。

【エラムとアルフリード、本陣に帰還】
アルスラーン陣営にエラムとアルフリードが帰還し、アルスラーン、ナルサス、ダリューンの首脳陣に偵察の結果を報告していた。

ナルサスは、敵軍が10万と知り、敵将ギスカールもなかなかやると唸るが、とっておきの策を練ると不敵な笑みを浮かべる。

【兵たちの稽古】
翌日。
陣中でアルスラーンは、ダリューンと剣の稽古に励んでいた。
が、アルスラーンはダリューンに剣を絡め取られ、弾き飛ばされてしまう。

アルスラーンは息を切らせながら、「やはり、まだまだだな」という。
するとダリューンは言うのである。
「そんなことはございません。たくましくなられております。それに君主が目指すべきは武勲ばかりではございません」

その時アルスラーンは、兵たちが自分たちの稽古をじっと見ていることに気付いた。
そしてアルスラーンは、あることに思い至り、ダリューンに何事かを頼んだ。
間もなく、陣営のあちこちでは、兵たちが指導を受けながら武芸の稽古に励んでいた。これはアルスラーン発案による、希望制の武芸の稽古なのだが、大勢の兵が参加しているようである。

【アルスラーンとナルサス】
夜、アルスラーンはナルサスの天幕を訪れた。
アルスラーンは、昼間の新兵たちの稽古から何か感ずるものがあり、その疑問についてナルサスの意見を聞きたくてやってきたのである。

アルスラーンは言う。
これからの戦いは厳しいものであり、犠牲はつきものだが、それでも生きてほしいから、兵たちに稽古への参加を呼びかけた。
すると歩兵たちは、最初は戸惑っていたが、やがて意気揚々と稽古に打ち込んでいた。
稽古など嫌がって参加してくれないかもしれないと思っていたのだが、兵たちの目は活き活きとしていた。
アルスラーンとしては、あの稽古は兵たちの心の何かを動かしたようなのだが、それは何なのかが気になるのである。

するとナルサスは、歩兵たちは解放された奴隷であり、これまで武芸の稽古などしたことのなかったであろうことを指摘して言う。
「人は皆、己が何者であるのか、どこへ進むのか、その答えを求めて生きていくものだと私は思います。
ですが、与えられたことをするしかない奴隷たちは、その気持ちさえなくしている。

今日、稽古に参加した彼らにとって武芸を習うことは、己のために己の意思で決めたこと。
ただ何も考えず従属しているだけの生き方ではなく、一人の人間として生きることを実感できた瞬間だったはずです。
彼らが何者であるか、そしてどう進むかを殿下がお示しになったといっていいでしょう」

アルスラーンは少し考えこむが、この件で不安を抱えている訳ではない。
お主とダリューンには助けられてばかりだというアルスラーンに、ナルサスは「殿下には玉座について頂きませんと、私の夢も叶いませぬ故。よもや、お忘れになってはおられないですよねえ」と笑うのであった。

【エトワール、バルカシオン伯爵にくってかかる】
夜。
大陸公路の聖マヌエル城には、銀仮面の率いる部隊が入城しつつあった。

これを見た隊長エトワールは、城主バルカシオン伯爵にくってかかっていた。
なぜパルス兵の入城を許可するのかと。

バルカシオン伯爵は穏やかな口調で言う。
国王イノケンティス七世の勅命により、パルス・ルシタニア連合軍10万で、アルスラーン軍を聖マヌエル城で迎え撃つ。その指揮は銀仮面卿がとることになった、一歩も敵軍を通してはならぬとの王のお言葉だと。

だがエトワールは納得できず、バルカシオン伯爵に訴える。
なぜ異教徒の力を借りなければならないのかと。

これにバルカシオン伯爵は「これも、イアルダボート神の試練と受け止めることは出来ぬのか?」と諭す。

エトワールは必ずしも納得できないのだが、「試練」という言葉に引き下がった。

一方バルカシオン伯爵は、心労を感じている様子である。
バルカシオン伯爵としては、異教徒の力を借りるやり方には納得していないが、中央の命令には従わない訳にはいかず、あえて少しずるい言い方でエトワールを言いくるめたが、心苦しさを感じているというところだろうか。

【アルスラーン軍、敵地に進出】
朝、アルスラーンは鎧兜に身を包み、諸将と軍勢を率い、丘の上から眼下に広がる荒野を見下ろしていた。
その視線の先に聖マヌエル城があるのだろう。

そしてアルスラーンは決意を口にした。
「必ず、パルス王国、王都エクバターナをこの手で奪還する」

【予告】
次回「聖マヌエル城の攻防」

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