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戦国の兵法者 剣豪たちの源流とその系譜(牧秀彦/学研新書)

  • 2007/09/12(水) 23:46:41

兵法者と戦国大名の関わりを、時代小説家である著者が、史実に即して考察した一冊。

本書「戦国の兵法者」では、兵法者を庇護した戦国武将10数人とその庇護を受けた剣豪多数を取り上げ、戦国武将たちがどのように剣豪に接し、兵法をどのように用いたかを紹介している。

【感想概略】
これまであまり指摘されることのなかった戦国時代の一側面について知ることができ、面白かった。
本書「戦国の兵法者」は、戦国時代のイメージを更に豊かにしてくれた。

【本書から分かったこと】
近年の歴史研究によると、戦国時代の合戦で繰り広げられる戦闘の大部分は、弓・鉄砲・礫など遠距離からの攻撃武器を用いての遠戦であり、白兵戦の頻度は低かったそうである。

刀は合戦の場では、敵の首をとるための道具であり、合戦で武器として用いられることはほとんど無かった。
にもかかわらず、戦国大名たちは、兵法者を庇護し、自身も剣術を修行した。

その理由について、本書「戦国の兵法者」は以下のように考察する。

合戦で刀を抜いて戦う場合とは、弓も槍も失った危機的状況に陥った時である。
そのような危機に出くわす確立が例え1%であっても、敵に遅れをとらぬため、戦国武将は兵法を修行したのではないか。

自分自身の戦闘能力を高めるため以外にも、戦国武将が兵法者を庇護した理由は、様々である。

精神修養のため。
大名としての箔をつけるため。
家臣に剣術を奨励し、家臣団全体の戦闘能力を底上げするため。

このようなメリットがあるからこそ、戦国武将は兵法者を庇護し、自身も剣術を修行し、家臣たちに兵法を奨励したのである。

戦国武将に仕える兵法者たちにも、メリットがあった。
一つは、資金援助が得られたことである。
次にあげられるメリットは、自流の伝書を残すことができたことである。

戦国時代の兵法者たちは、読み書きの出来ない無学者が多かったにもかかわらず、少なからぬ伝書を残している。
これは代筆を頼んだ場合もあれば、兵法者自ら学問に励み、自身で伝書を残した場合もあった。
まさに大名の庇護を受けてこそ、可能なことである。

そして戦国乱世が終結しても、大名たちは兵法者を庇護し、家臣たちに剣術を奨励した。
様々な理由を上げることができる。

尚武の気風を育成するためであった。
江戸時代の社会では刀こそが最強の武器であり、藩内の変事にそなえるためであった。
また江戸時代初期の武家社会では、いつ主君から切腹を命じられるか分からず、切腹させられる友人知人から介錯を頼まれることは十分あり得ることであり、介錯できる腕を養うためでもあった。

こうして戦国の剣術諸流派は、江戸時代も日本各地の潘で奨励された。
そして明治維新を迎え、武道として現代も学ばれているのである。

【その他感想】
刀についての最近の学説に対する著者の複雑な思いは、興味深かった。

著者は剣道と居合道を学んでいる方であるが、日本刀が実戦では無用の長物だったという最近の歴史学の解釈は、「正直、慙愧に耐えないが、確たる史料の検証が重ねられた事実とすれば、認めない訳にはいくまい」という。

武道を学ぶ方は、最近の戦国合戦における刀の役割についての学説をどのように思っているのか気になっていたのだが、やはり胸中複雑なのだと思った。

【その他感想その2】
本書を読んでもなお、足軽の技として軽んじられたという剣術が、いつ頃から、なぜ、武将に学ばれるようになったのかについて、納得のいく理由は分からなかった。

本書でも取り上げられているが、室町幕府将軍・足利義輝は、兵法を熱心に学んだ。そして義輝は、謀反人の軍勢と壮絶に斬り結び、散々に斬り伏せた末、討死した。
だが他書によると、義輝は「雑兵足軽の技を学んでいる」と白い眼で見られ、「死に方も足軽のようだ」といわれたという。
このエピソードによると、家来を持つ武士が兵法を学ぶことは、この頃は白眼視されることだったらしい。

兵法はいつ頃から、どのような事情によって、武将が誇らしく学ぶものと見なされるようになったのか。
この疑問については、いずれ何らかの答えが得られることを期待したい。



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