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柳絮(井上祐美子)

  • 2007/09/18(火) 23:56:59

中国の南北朝時代、4世紀中頃~5世紀初の東晋後期の激動の時代を生きた名門貴族の女性・謝道ウンの婚礼の日から晩年に至るまでの年月を描いた物語。

【感想概略】
中国史を題材とした小説に、東晋時代を描いた作品はあまりなく、それだけでも貴重な作品である。
本作は、このあまりなじみのない時代をしっかりとした時代考証に基づき、魅力的な人々を取り上げて活き活きと描いており、おもしろかった。

【貴族の才女】
物語の面白さの大きな要素は、登場人物の魅力である。
歴史を題材とした作品では、人物描写が無味乾燥になる恐れがあるが、本作の主人公・謝道ウンは、少女の頃から晩年まで、活力を失わない魅力的な人物に描かれている。
物語は晩年を迎えた主人公の一人称で語られるのだが、利発で勝気な少女が人生を重ねる間に、人間として深みを増していくようすには好感がもてた。
この作者の作品では、女性の方が活き活きとしている気がする。

主人公以外の登場人物たちも魅力的に描かれている。
小説に登場することの少なかった桓温・謝安・劉裕といった東晋時代の人物たちが、体温をもった生身の人間として、活き活きと描かれているのである。

【激動の東晋時代】
歴史小説の面白さの一つは、その時代独自の雰囲気がかんじられること、あたかも時代の只中にいるような追体験が出来ることである。

本作の主人公・謝道ウンの生きた時代は、激動の時代である。
東晋王朝の統治のもと、一見社会は安定しているが、有力貴族同士の対立、社会不安の増大、対外的には五胡十六国の諸王国の脅威、などなど、国内国外情勢は常に緊迫しており、当事者にとっては大変だが、読者にとっては波乱に飛んで面白い時代であった。

本作では、朝廷の実力者・桓温の簒奪未遂、ヒ水の戦い、桓玄の簒奪、孫恩の乱、劉裕の登場、などなど東晋時代の数々の事件を、貴族の一女性である主人公の目を通し、自らの人生の行方と直結した緊迫感をもつ事態として描かれており、主人公の視点から東晋時代の激動を追体験でき、この時代独特の社会の雰囲気がかんじられた。

また陶淵明など、日本でも有名な東晋時代の有名人がちらりと出てくると、思わずうれしくなった



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