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オイレンシュピーゲル 参(冲方丁/角川スニーカー文庫)

  • 2007/11/14(水) 23:45:01

同名小説の第3巻。

西暦2016年、国際都市ミリオポリス。
極端な少子化高齢化を背景に、国家は身体に障害のある子供のサイボーグ化及び11歳以上の児童の労働を認めた時代。
「特甲児童」と呼ばれる三人の戦闘サイボーグ少女・涼月、陽炎、夕霧は、警察組織MPBの遊撃部隊・ケルベロス小隊として都市の治安を守り、凶悪犯罪及びテロと戦う。
組織化凶悪化するテロリスト、社会問題に翻弄される力無き人々、そして特甲児童そのものの謎は深まるばかりである。

【感想概略】
前巻である二巻は、核爆弾を2500万都市で炸裂させようとする前代未聞の大規模テロとの戦いを、全編を通して描くバトルアクション全開の巻であったが、今巻は、涼月・陽炎・夕霧をそれぞれ主役とした短編集であった。

今巻であるが、まず戦闘描写に力が入っているのは健在であり楽しめた。
もっとも、最初から最後まで大ピンチの連続であった前巻と比べると、今巻の三話の短編は核爆弾テロよりは都市に与える脅威は控えめであり(それでも死にそうな目にあったり、危機的状況に追い込まれることに変わりはない)、三人の日常を描くことが中心のお話であった。
それぞれのお話では、一人一人の内面がよりじっくりと描写されていて、おもしろかった。

なお、今巻は短編集なのだが、時間は全て繋がっていて事実上の長編でもあった。
この参巻では、特甲児童に施された人格改変プログラムの謎や、特甲児童同士が一箇所に集まると精神に異常が生じて殺し合いをはじめてしまうのではないかという疑惑、警察組織の特甲児童を遥かに上回る武装を標準装備とする特甲猟兵の出現、特甲児童の武装等を転送する転送施設のテロリストによる保有、などなど、特甲児童そのものにまつわる謎が浮上、そして新たな強敵が出現。物語は更なる盛り上がりをみせ、この点でもおもしろかった。

おまけ掌編も、バカバカしくておもしろかった。いっそのこと、全巻この調子の外伝を出してほしい気がする。

【各話について】
第壱話は、涼月と吹雪の物語である。
本作のテーマの一つは、吹雪や「スプライトシュピーゲル」の冬真のような、可愛い男の子を登場させることなのであろうか。

第弐話は、陽炎の孤独な戦いとミハエル中隊長の物語である。
これまでは涼月に最も共感を抱いたのだが、参巻では陽炎に共感をかんじ、またクールな容姿の一方で実は子供っぽいところのある内面が可愛らしかった。
また、児童虐待や少女に対する売春の強要、被害者少女と陽炎の交流や少女の内面が描かれていたが、現実の社会にも依然として存在する、弱い立場の者が犠牲にされている問題についてちょっと考えさせられた。

第参話は、夕霧の過去と謎のバイオリン引きの少年の物語である。
夕霧を主役とするこの第参話では、当然のことながら夕霧の内面が多く描かれたのだが、その心の闇の深さは依然として底知れなかった。
また、涼月と陽炎にとって、夕霧が大きな存在であることは以前に描かれていたが、夕霧はこの二人をどう思っているかは、未だに深くは描かれいない気がする。ここら辺がいずれ描かれることを期待したい。

【マリア先生、喧嘩上等】
今巻で最も心惹かれた人物は、MPB専属医マリア・鬼濡・ローゼンバーグである。
喫煙する涼月を指導する際に見せた、自らの舌にタバコを押し当てて火を消すその気合の入りまくった姿は、いつまでも心に残り離れなかった。
マリア先生の更なる活躍に期待したい。

【スプライトシュピーゲルとの連動】
前巻同様、今巻も「スプライトシュピーゲル」Ⅲと連動したお話でもあった。
今巻は同時並行で巨大な敵と戦いまくるというお話ではなかったが、それでも敵のかなり巨大な戦力をMPB及びケルベロス小隊が引き受けており、戦況に与えた影響はかなり大きかったのではないかと想像される。このような推測できる余地があるところもまた、本シリーズのおもしろさの一つである。


今巻で浮上した新たな謎と、新たに出現した強敵との戦いの行方はどうなるのであろうか。
気になるところであり、次巻が楽しみである。

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