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彩雲国物語 2巻 黄金の約束(雪乃紗衣/角川ビーンズ文庫)

  • 2007/07/13(金) 23:34:31

本書は、中華風異世界「彩雲国」を舞台としたファンタジー小説の続編である。
紅秀麗、静蘭といったお馴染みの登場人物たち、そして燕青や黄奇人などなどの新キャラクターの活躍が楽しめ、おもしろかった。

【感想概略】
主人公・紅秀麗は、彩雲国でも屈指の名家の息女である。
とはいっても秀麗の父・邵可は実家を出奔してしまっており、秀麗一家の収入は朝廷の府庫に勤める父・邵可の僅かな俸禄、軍に勤める家人・茈静蘭のささやかな俸禄、そして秀麗が様々な賃仕事で稼ぐ給金などであった。
秀麗は、家格が高くても生活感覚は庶民そのもののであり、そして社会の混乱や因習がいかに人びとを苦しめるかを身を持って知っているのである。

この彩雲国は、理想の国からは程遠い社会である。
国内には、男尊女卑や富の偏在といった理不尽が依然としてはびこり、様々な社会悪や因習に人びとの心は縛られ、苦しむ庶民も数多い。
秀麗自身も男尊女卑の因習や社会の混乱に苦しみ、そして苦しむ人びとの姿に心を痛めている。

同時に彩雲国の朝廷や王宮も、理想の小世界などではない。
彩雲国の権力中枢は、しらがみと利権と因習が複雑にからみあう世界であり、この権力中枢そのものを動かすことは容易ではなく、少数の権力者が改心したくらいでは世の中が良くなるものではないものとして描かれている。
この硬派な世界観も好きである。

さて前巻で、家計のやりくりに苦しむ秀麗は、破格の報酬に惹かれて無気力国王・紫劉輝の教育係を引き受けた。そこで秀麗は、朝廷の中枢で活躍する能吏や武人たちと出会い一目置かれるようになり、そして国王から思いを寄せられるようになった。

だが秀麗は、思いがけず王宮で築いた「華麗な人脈」を利用して話の分かる権力者に働きかけ、国内を慈悲深く支配してもらうおうとは思わない。
秀麗は、あくまで自分自身の力で生き、そして問題に対しては自分の出来ることからアプローチをかけていくのである。
今の秀麗は、社会の中では小さな存在であり、彩雲国社会の様々な弊害が、秀麗の前に立ち塞がるのである。だが秀麗は悪戦苦闘しながらも一歩一歩前進していく。
この秀麗の生き様が好きである。

そして秀麗の奮闘をきっかけに、僅かに兆した時代の変化は潰えることなく芽吹きはじめ、水面下に潜んでいた人々の思いは徐々に表面化して社会を動かす力となっていく。秀麗を取り巻く状況は僅かずつだが確実に変化し、さらに彩雲国社会そのものも少しずつ変わっていくのである。
この社会派的な視点を持つ硬派な展開も、「彩雲国物語」の魅力である。

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