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海東青 摂政王ドルゴン(井上祐美子/中公文庫)

  • 2007/07/24(火) 23:38:31

17世紀前半、中国最後の王朝・清帝国の初代皇帝ヌルハチの第9王子ドルゴンの生涯を描いた小説。

【感想】
本作の主人公ドルゴンは、父帝ヌルハチの死後、帝位継承権を持つが故に一歩間違えれば粛清されかねない立場だったが、兄帝ホンタイジの片腕として政戦両面で非凡さを発揮、創業間もない清帝国の基礎固めに活躍した。

そして兄帝ホンタイジ亡き後は、幼帝の摂政として実質的な最高権力者となり、遂には中国全土を征服し、清を中華の主とした。

つまりドルゴンは、清帝国の大功労者なのだが、その知名度はあまり高くない。
また、ドルゴンの活躍した明末清初を舞台とした小説は数が少なく、ドルゴンを主人公とする作品はなおさらである。
だから、このなじみの薄い時代・人物をどのように描くのか楽しみながら読んだ。

まず、本作を読んで明末清初へのイメージが、多少変わった。

明末の明帝国は内部腐敗し、明軍は一部の例外を除きどうしようもなく弱く、一方の清軍は滅茶苦茶強く、内部対立も大してないようなイメージがあった。
強者が勝つのは当然であり、清の中国征服にはあまり面白みがかんじられないような気がしていた。

しかし作中では、明や周辺諸国に対し決して絶対的優位ではない、清の内情の苦しさが描かれていた。

清は少数民族・女真族の国であり、兵は精強だがその兵数は多くはなく、軍事的に絶対優位とは言えなかった。

そして清内部にも、様々な対立があった。
それは帝位を巡る女真皇族どうしの対立であり、草原の略奪者的な気分の抜けない武人貴族と、安定した国を築こうとし無益な殺生を戒めるドルゴンを中心とする勢力との対立である。

明もまた、腐敗したりといえども気骨ある士はまだまだ居り、容易に倒れぬ底力があり、易々と戦を進められる敵手ではなかった。

決して一枚岩ではない清内部の人間模様、清を率いる兄帝ホンタイジと皇弟ドルゴンがこの苦しい国内事情と対外関係をやりくりしながら勢力圏を広げ、同時に国内を整備していくようすはおもしろかった。

そして単純な武人タイプの多い女真人の中で、ドルゴンは珍しく内省的なタイプであり、家奴・曹振彦や兄帝ホンタイジとの交流、武断的な女真貴族たちとの対立、ドルゴン自身の自問、などを通しての内面の描写には共感がもてた。



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