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戦国名刀伝(東郷隆/文春文庫)

  • 2007/06/08(金) 21:41:34

本書「戦国名刀伝」は、戦国時代、名刀を巡る戦国人の生き様を描いた伝奇物あり正統派時代物ありの短編集である。

【感想】
古来、日本では刀剣は単なる武器ではなく、一級の美術品であり、霊力を秘めた神具であった。
例えば、「草薙の剣」や「髯きりの太刀」は、権力者の武威を象徴する存在でもあった。この他にも、刀剣の霊威を伝える伝承は数多い。

本書「戦国名刀伝」では、日本刀を霊力を秘め魔を払う神秘的存在であり、権力関係の変化によって形状すら変化する時代を象徴する武器でもあり、持ち主の過去や心の闇を背負う単なる武具以上の存在として描いている。

そして本書では、日本刀から見た戦国時代と戦国人の生き様が描かれている。
これは、「兵法と剣豪」という視点から戦国・江戸初期・江戸中期を描く戸部新十郎の剣豪物に似ているようだが、実は全く異なった視点で描かれており、おもしろく、読み応えがあった。

本書「戦国名刀伝」の掲載作品は、以下の通りである。

【本書掲載作品】
◆にっかり
秀吉の時代。
百姓の少年が神社から盗み出した御神刀の伝奇物語。

◆すえひろがり
戦国時代初期の1483年。
刀剣の産地・備前を舞台に、無銘の備前長船の刀を手にした少年と、刀のたどる運命の物語。

◆竹俣
越後の豪族・揚北衆に伝わる名刀の伝奇物語。
私自身は新潟出身なので、越後を舞台にした伝奇物語という点でも、とても興味深かった。

◆かたくり
上杉家の名刀の贋作がたどる数奇な物語

◆このてがしわ
細川幽斎の半生と、乱世の実戦刀として長さを縮められた細川家に伝わる名刀のたどる物語

◆伊達はばき
弟殺しなど伊達家の暗部に立ち会ってきた刀と、小田原参陣前後から朝鮮出兵までの伊達政宗の物語

◆石州大太刀
山中鹿之助の人生と、尼子氏隆盛に尽力した漂白の民に由来する彼の刀の物語

◆まつがおか
加藤嘉明の家臣・加藤孫六と、彼の刀の物語

【余談】
本書「戦国名刀伝」を読んでいると、戦国人は日本刀を重視し、特別な目で見ていたような気分になるが、史実は少し違うのかもしれない。

戦国の天下人は、名刀を数多く収集したが、これは量に上限のある土地に変わる家臣への恩賞としてである。

実際の日本刀は、戦場では攻撃武器ではなく、首狩りに用いられたという。
戦場において日本刀で斬り結ぶことなどめったになかったようである。

日本刀は戦場の主役ではなかったかもしれないが、日常携帯する武器の主役ではあった。
槍は大き過ぎて日常の携帯が困難だった。日本刀は日常携帯できる上限であり、最も高威力の携帯武器であった。

日本刀で槍の穂先を斬り飛ばしたとか、数打ちの太刀を名刀で叩き斬ったなどということは、実際に可能だったのかとも思うのだが、本書「戦国名刀伝」のおもしろさに変わりはない。

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